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第三章 第六節 ミリオンマーダラー
第771話 アイの回想 亜獣襲来2
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「本部ぅぅぅ! 水がはいってきてる!!」
あたしは悲鳴の代わりに、本部にむかってどなりつけることを選んだ。
「アイ、大丈夫だったのね」
「リンっっ! 大丈夫じゃないから言ってる。水がはいってきてるの!!」
「水が? アル! コックピットのシールド、どうなってるの?」
「すまねぇが、こっちに診断AIのデータが入ってこねぇンだ。くわしくはわからねぇ。だがどっかで破損したのかもしれねぇ」
「なんで、そうなンのよぉ。移行領域ベールで完全に保護されてンじゃないの!!」
「ふつうならな! だが噴石は読めねぇんだよ」
「どうすりゃいいの。このままだと……」
「セラ・ヴィーナスの操作系統がだめになるわよ」
「それだけじゃないわ。あたし、コックピットんなかで、溺れちゃうのよ」
床を濡らしていた水が、あっという間に自分の足元まで迫っていた。パイロット・シートが床から30センチほど上に浮いているのを考えると、想像以上のはやさで浸水しているのがわかる。
「足元まで来たわ」
「まずいわね。タケルくん、そちらでなんとかできない?」
「リンさん。こちらもまだ波の勢いに飲まれたままですからね。でもなんとかしてみます」
「タケル。なんとかって?」
「アイ、なんとかは、なんとかさ」
「は、はやくしてよ。あんま時間がないかもしンないかもしれないから……」
あたしはタケルに無用なプレッシャーをかけたくなかった。でもそうは言っていられないほど、浸水スピードには猶予がなかった。
足先に水が到達して、くるぶしが海水につかってきた。
あたしはぶるっと震えた。
マジで溺れる——?
そのとき、ぐいっとセラ・ヴィーナスの手がひかれるのがわかった。
マンゲツだった——
タケルがあたしを探しだしてくれた。
「タケル、やっぱり来てくれたのね!」
「アイ、まずい。引き潮だ! そなえてくれ」
「ど、どうそなえるの?」
「移行領域のベールを、コックピットに集中して展開してくれ」
「でも、そんなことしたら、本体のほうの防御が……」
「きみが溺れてしまったら、本体もなにもないっ!」
モニタのむこうのタケルの表情は真剣そのものだった。
「わ、わかったわ」
「急いで!、引き潮……」
とんでもない力で、うしろにひっぱられた——
波のちからで押されるのとは比較にならないほど、なにひとつ思い通りにならない理不尽な力。
まるで横向きに、落下しているような感覚におちいる。
まわりに浮遊する死体やゴミが、セラ・ヴィーナスのからだにぶつかってくる。
今、コックピット以外は完全に無防備な状態だ——
あたしは悲鳴の代わりに、本部にむかってどなりつけることを選んだ。
「アイ、大丈夫だったのね」
「リンっっ! 大丈夫じゃないから言ってる。水がはいってきてるの!!」
「水が? アル! コックピットのシールド、どうなってるの?」
「すまねぇが、こっちに診断AIのデータが入ってこねぇンだ。くわしくはわからねぇ。だがどっかで破損したのかもしれねぇ」
「なんで、そうなンのよぉ。移行領域ベールで完全に保護されてンじゃないの!!」
「ふつうならな! だが噴石は読めねぇんだよ」
「どうすりゃいいの。このままだと……」
「セラ・ヴィーナスの操作系統がだめになるわよ」
「それだけじゃないわ。あたし、コックピットんなかで、溺れちゃうのよ」
床を濡らしていた水が、あっという間に自分の足元まで迫っていた。パイロット・シートが床から30センチほど上に浮いているのを考えると、想像以上のはやさで浸水しているのがわかる。
「足元まで来たわ」
「まずいわね。タケルくん、そちらでなんとかできない?」
「リンさん。こちらもまだ波の勢いに飲まれたままですからね。でもなんとかしてみます」
「タケル。なんとかって?」
「アイ、なんとかは、なんとかさ」
「は、はやくしてよ。あんま時間がないかもしンないかもしれないから……」
あたしはタケルに無用なプレッシャーをかけたくなかった。でもそうは言っていられないほど、浸水スピードには猶予がなかった。
足先に水が到達して、くるぶしが海水につかってきた。
あたしはぶるっと震えた。
マジで溺れる——?
そのとき、ぐいっとセラ・ヴィーナスの手がひかれるのがわかった。
マンゲツだった——
タケルがあたしを探しだしてくれた。
「タケル、やっぱり来てくれたのね!」
「アイ、まずい。引き潮だ! そなえてくれ」
「ど、どうそなえるの?」
「移行領域のベールを、コックピットに集中して展開してくれ」
「でも、そんなことしたら、本体のほうの防御が……」
「きみが溺れてしまったら、本体もなにもないっ!」
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「わ、わかったわ」
「急いで!、引き潮……」
とんでもない力で、うしろにひっぱられた——
波のちからで押されるのとは比較にならないほど、なにひとつ思い通りにならない理不尽な力。
まるで横向きに、落下しているような感覚におちいる。
まわりに浮遊する死体やゴミが、セラ・ヴィーナスのからだにぶつかってくる。
今、コックピット以外は完全に無防備な状態だ——
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