720 / 1,035
第三章 第六節 ミリオンマーダラー
第719話 タケルくん、それに耐えきれる?
しおりを挟む
「リンさん」
ヤマトは春日リンに声をかけた。
「アイはぼくにどんなサプライズをしかけてくるつもりでしょうか?」
「すくなくともあの等身大のエンマ・アイはあらわれるでしょうね。そしてタケルくん、あなたに直接話しかけてくる」
「でしょうね。それはまちがいない」
「そしてアイの声と笑顔であなたを翻弄する。もしかしたら泣き顔かもしれないし、すこしすねたような表情をみせるかもしれない。思春期の時のアイは、ずいぶんめまぐるしく感情がゆれて、いろんな顔をみせたものね」
「ええ」
ヤマトは苦笑気味に答えた。
「タケルくん、それに耐えきれる?」
リンの問いかけにタケルはハッとした。
もちろんその反応は顔にはあらわさなかったし、ヴァイタル・データの波形もほぼ乱れることはなかった。虚をつかれたように疑われるのがいやで、ヤマトはすぐに反論しようとした。
だが、かえって動揺をさとられそうな気がして、すぐさま草薙が映っているモニタのほうに話をふってごまかした。
「草薙大佐、大佐はどう思います?」
画面のむこうの草薙はエア・バイクにまたがったままで、まだあの格納庫にいた。魔法少女との戦いの後始末でもしているかと思ったが、すでに次のミッションにとりかかっているらしく、空中に呼びだした画面をみながら、サイトーたちに指示を与えているところだった。ちょうどサイトーが発言していたらしい。草薙はサイトーをてのひらで制止すると、ヤマトのほうへ顔をむけた。
「なに?、タケルくん」
「あ、いえ、お取り込み中なら……」
「かまわない。いつだってわたしの最優先事項はあなただから……」
「エンアイムの件です」
ヤマトは遠慮なく尋ねた。
「エンアイム、つまりエンマ・アイはぼくのこころを揺さぶる作戦を準備をしている、という見解はまちがいないと思うのですけど……」
「まぁ、いままでの経緯をみれば、うたがう余地はないわね」
「ぼくは、その作戦に耐えきれると、草薙さんは思いますか?」
「耐えきれるにきまってるでしょう」
草薙からいつものように、すこし皮肉まじりのシビアな答えが返ってくると思っていたが、思いもかけないストレートな返事に驚いた。それはいっさいの疑義を受けつけないほどの、確信に満ちていたので、ヤマトは反射的に問いを重ねていた。
「なぜ言い切れるんです?」
「それが、ヤマトタケルだからよ」
なんの邪心も疑いもなくそう言い切られて、ヤマトは次のことばがでてこなかった。
だが、それが嘘いつわりのない、草薙の本心だと感じ取れた——。
ヤマトは春日リンに声をかけた。
「アイはぼくにどんなサプライズをしかけてくるつもりでしょうか?」
「すくなくともあの等身大のエンマ・アイはあらわれるでしょうね。そしてタケルくん、あなたに直接話しかけてくる」
「でしょうね。それはまちがいない」
「そしてアイの声と笑顔であなたを翻弄する。もしかしたら泣き顔かもしれないし、すこしすねたような表情をみせるかもしれない。思春期の時のアイは、ずいぶんめまぐるしく感情がゆれて、いろんな顔をみせたものね」
「ええ」
ヤマトは苦笑気味に答えた。
「タケルくん、それに耐えきれる?」
リンの問いかけにタケルはハッとした。
もちろんその反応は顔にはあらわさなかったし、ヴァイタル・データの波形もほぼ乱れることはなかった。虚をつかれたように疑われるのがいやで、ヤマトはすぐに反論しようとした。
だが、かえって動揺をさとられそうな気がして、すぐさま草薙が映っているモニタのほうに話をふってごまかした。
「草薙大佐、大佐はどう思います?」
画面のむこうの草薙はエア・バイクにまたがったままで、まだあの格納庫にいた。魔法少女との戦いの後始末でもしているかと思ったが、すでに次のミッションにとりかかっているらしく、空中に呼びだした画面をみながら、サイトーたちに指示を与えているところだった。ちょうどサイトーが発言していたらしい。草薙はサイトーをてのひらで制止すると、ヤマトのほうへ顔をむけた。
「なに?、タケルくん」
「あ、いえ、お取り込み中なら……」
「かまわない。いつだってわたしの最優先事項はあなただから……」
「エンアイムの件です」
ヤマトは遠慮なく尋ねた。
「エンアイム、つまりエンマ・アイはぼくのこころを揺さぶる作戦を準備をしている、という見解はまちがいないと思うのですけど……」
「まぁ、いままでの経緯をみれば、うたがう余地はないわね」
「ぼくは、その作戦に耐えきれると、草薙さんは思いますか?」
「耐えきれるにきまってるでしょう」
草薙からいつものように、すこし皮肉まじりのシビアな答えが返ってくると思っていたが、思いもかけないストレートな返事に驚いた。それはいっさいの疑義を受けつけないほどの、確信に満ちていたので、ヤマトは反射的に問いを重ねていた。
「なぜ言い切れるんです?」
「それが、ヤマトタケルだからよ」
なんの邪心も疑いもなくそう言い切られて、ヤマトは次のことばがでてこなかった。
だが、それが嘘いつわりのない、草薙の本心だと感じ取れた——。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
26
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる