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第三章 第六節 ミリオンマーダラー
第705話 ヤシナミライはその光景を見ながら怖気だった
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八冉未来はその光景を見ながら怖気だった。
自分がなにに恐怖しているのかがわからない。
ただ生理的に受けつけない得体の知れないものに、心の襞をまさぐられているような、胸くそわるくなる感覚だけがあった。
それは渋谷上空に姿を現わしたエンアイムの映像——。
映像はどれもエンアイムの全体像をさまざまな角度からうつしていた。
見るものを威圧する巨大な姿に、ミライは最初、自分の目にとまったものがなにか気づかなかった。巨体のまわりに塵のようなものが、ただ大量に舞っているという印象だった。
あれだけの巨体が動くのだから、上昇気流のようなものが発生してもおかしくない。
運わるく固定されていない置物や車、人が、それに巻きあげられたのだと思った。
亜獣という災害に見舞われているのだ。あるていどの被害は不可避だ。
そう割り切って映像を見ていた。
が、そうではないことに、はたと気づいた。
エンアイムの逆だちしたフレアスカート姿似のフォルムの一番上、かさがおおきく広がった部分にまで塵が舞いあがっているのだ。
そんな上まで——?。
この亜獣の体長は200メートルもあり、しかも現在地上から200メートル上空に浮いている。
400メートルも上空にまで地表の物体をまきあげているのは、あの動きやスピードを考えると、おかしな話だ。
ミライはあわてて正面の大型モニタの映像をクローズアップした。エンアイムの一番上、スカートでいえば『裾』のふち部分が大写しになる。
スカートの裾部分にまきあがっていたのは人間だった。
髭面の男性が裾のふち部分にぶつかって、そのままスカートの襞を滑るように落ちていくのが見えた。すこし離れた場所では隆とした身体の女性が、そのスカートのなかの襞に叩きつけられ、力なく転がり落ちていっている。
「ひとが巻きあげられているわ!」
ミサトが大声で叫んだ。思念でもおなじことを叫んでいたせいで、その叫びはミライの頭のなかでハウリングのように共鳴した。
「ちがいます!。ひとが吸いあげられているんです」
ミライは頭の痛みを我慢して、みんなに聞こえるように大声で指摘した。
「どういうこと?」
「わかりません。ですが、よく見てください」
ミライはすぐさまスカートの内部から、外側にカメラを切り替えた。
スカートの裾のふち付近の映像——。
はっきり見えなかったが、奥のほうはまるで星雲のようだった。真っ暗な空間にガスかなにかが渦巻き状にうずまいて、ときおりそこから放電のような光がまたたいている。
自分がなにに恐怖しているのかがわからない。
ただ生理的に受けつけない得体の知れないものに、心の襞をまさぐられているような、胸くそわるくなる感覚だけがあった。
それは渋谷上空に姿を現わしたエンアイムの映像——。
映像はどれもエンアイムの全体像をさまざまな角度からうつしていた。
見るものを威圧する巨大な姿に、ミライは最初、自分の目にとまったものがなにか気づかなかった。巨体のまわりに塵のようなものが、ただ大量に舞っているという印象だった。
あれだけの巨体が動くのだから、上昇気流のようなものが発生してもおかしくない。
運わるく固定されていない置物や車、人が、それに巻きあげられたのだと思った。
亜獣という災害に見舞われているのだ。あるていどの被害は不可避だ。
そう割り切って映像を見ていた。
が、そうではないことに、はたと気づいた。
エンアイムの逆だちしたフレアスカート姿似のフォルムの一番上、かさがおおきく広がった部分にまで塵が舞いあがっているのだ。
そんな上まで——?。
この亜獣の体長は200メートルもあり、しかも現在地上から200メートル上空に浮いている。
400メートルも上空にまで地表の物体をまきあげているのは、あの動きやスピードを考えると、おかしな話だ。
ミライはあわてて正面の大型モニタの映像をクローズアップした。エンアイムの一番上、スカートでいえば『裾』のふち部分が大写しになる。
スカートの裾部分にまきあがっていたのは人間だった。
髭面の男性が裾のふち部分にぶつかって、そのままスカートの襞を滑るように落ちていくのが見えた。すこし離れた場所では隆とした身体の女性が、そのスカートのなかの襞に叩きつけられ、力なく転がり落ちていっている。
「ひとが巻きあげられているわ!」
ミサトが大声で叫んだ。思念でもおなじことを叫んでいたせいで、その叫びはミライの頭のなかでハウリングのように共鳴した。
「ちがいます!。ひとが吸いあげられているんです」
ミライは頭の痛みを我慢して、みんなに聞こえるように大声で指摘した。
「どういうこと?」
「わかりません。ですが、よく見てください」
ミライはすぐさまスカートの内部から、外側にカメラを切り替えた。
スカートの裾のふち付近の映像——。
はっきり見えなかったが、奥のほうはまるで星雲のようだった。真っ暗な空間にガスかなにかが渦巻き状にうずまいて、ときおりそこから放電のような光がまたたいている。
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