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第三章 第五節 エンマアイの記憶

第685話 アルに会わなければならない

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 すぐ脇でショートが倒れるのを目の当たりにした時、エドが一番最初に思ったのは、これに便上して、司令室を出ていけるかもしれないという計画だった。

 自分にはいますぐにここを離れて、やらなければならないという気持ちに駆られていた。

 そう魔法少女を……、ひとを魔法少女に変える力を持つ、異能の個体を探さねばならないのだ。あの映像でみたとおり、何者かが『契約』によって、その力を手にしているのは間違いない。そうでなければ、亜獣を寄せつけないはずのこの基地に、魔法少女が発生するはずなのどないのだ。
 
 アルに会わなければならない。

 そしてアルに尋ねなければならない。
 おそらく自分が『セイント』の力を借りて観たもの以外に、なにか重要なことを知っているかもしれない。
 これほど需要なことは脳内通信などで聞きだすことは難しいだろう。だからこそ直接あって聞きださねばならないのだ。
 それもできるだけはやく。
 そうしなければ、おそらくまた別の魔法少女が基地内で生みだされるかもしれない。

 エドの脳裏にもしかしたら、すでに別の個体が用意されているかもしれない、という恐ろしい考えが浮かんだが、それより先に行動していた。
 口元をおさえて、いかにも気分がわるそうにして、その場でがくりと膝を折った。そしてそのまま前のめりにからだを傾け、頭を床すれすれまで垂れた。
 気絶した舎利弗小人とどろき・しょうとの元に、あわてて駆けつけていた数人のクルーのうち、ひとりの男性がエドの異変に気づいて足をとめた。

「エド博士、大丈夫ですか?」

 エドはその問いかけには返事をしなかった。
 それほど気分がわるいと思わせたかった。そのクルーは足早に近づいてきて、エドの横に屈みこんでもう一度声をかけてきた。
「エド博士。どうされました?」
 エドは口元に手をやって吐き気を抑えているのを装ったまま、声をわざと潰して「いや、大丈夫だ」と答えた。
 喉から声を絞りだしたように聞こえたはずだった。
「それならいいですが……」
 そのクルーはその返事をまともにとって、立ちあがりかけた。エドはあわてて彼の腕をつかんだ。
「いや……、すまない。気分がわるい。すこし外へ連れ出してもらえないだろうか?」
「でしたら、医療ロボットか診断AIをよこしましょう」
 こちらの意図を容易にくみ取ってもらえないことに、若干いらだったが、エドはそんなことはおくびにもださないようにして、か細い声で言った。

「いや、そこまでではない。外の空気を吸えば、落ち着くと思う」
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