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第三章 第五節 エンマアイの記憶
第679話 神名朱門、最後の戦い1
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「どうして、シモンが出撃しなくちゃいけないの!」
あたしは納得がいかなかった——。
ブライトの出撃命令にも、それを甘んじて受けたアヤトにも。
でもなによりも、こうやってパイロットだけの『秘匿回線』を通じて、にこやかな笑顔を送ってくるアヤトの態度が一番納得がいかなかった。
「アイちゃん、仕方ないさ。ブライトさんが『頼む』って頭をさげるんだからさ」
「シモン、わかってる?。あなたの武器とあの亜獣『ラーゼファン』は、相性が最悪なのよ。あのぬるぬるしたからだの表皮からは……」
「わかってるって。あいつの表皮から分泌されている溶解液のことだろ」
「そうよ!」
あたしは空中をまさぐる仕草をして、目の前に映像を投写させた。すぐに市街地を荒らしまくっている亜獣が映し出された。映像の右隅には「LIVE」の文字、左下に「フィリピン ケソン・シティ」とある。
はじめてみたとき、その亜獣がかつて海にいた『蛸』とよばれる軟体生物に似てると思った。ただその姿で四つ足の脊椎動物のような動きをしている。あたし的には気色悪くて苦手な見た目。
でも問題はそこじゃない。
からだのいろんなところから生えている吸盤のついた触手と、その吸盤から定期的に吹き出されている体液。その体液は強力な溶解液で、すでにおおくの建物や道路、ひとに被害を与えていた。
さらにやっかいなことにちいさいながら背中から羽が生えていて、数百メートルならひとっ飛びする機動性に手を焼かされた。
前回の戦いで、あたしもそのスピードに振り回されて、その溶解液を浴びてしまった。
「シモン、タケルの『サムライ・ソード』やあたしの『槍』なら、なんとかなるの。一気にアイツの皮膚を貫いて、肉体に一撃加えられるからね。でもあなたのドリルや戦棍は……」
「あぁ、そうだね。ドリルは穴を空けている端から溶けちゃうだろうし、戦棍はあのぶよぶよしたからだに跳ね返される。でも武器を取り換えて、そのデミリアンにアジャストさせるには二週間はかかる」
「いますぐに武器を換えるのは無理なんだ」
「だから言ってるの!!。シモン、もし出撃しても、なにもやれやしないわ」
「それでもぼくが『ラーゼファン』を食いとめているあいだに、逃げられるひとはすくなくないだろ。それができるのは今はこのマーズだけだ。それ以外はみんなメンテナンス中だろ。アイちゃんのヴィーナスも含めてね」
そう言ってシモンはいたずらっぽく片目をつぶってみせた。
「わ、わるかったわね……。怪我しちゃって」
あたしはよく見えるように、ギプスで固定された腕を無理やり掲げてみせた。
「でも、あいつあの触手で掴んだまま、溶解液を吸盤から吹き出させたのよ。海の近くで助かったわ。よくあの程度の損傷で済んだものだと思うわ」
あたしは納得がいかなかった——。
ブライトの出撃命令にも、それを甘んじて受けたアヤトにも。
でもなによりも、こうやってパイロットだけの『秘匿回線』を通じて、にこやかな笑顔を送ってくるアヤトの態度が一番納得がいかなかった。
「アイちゃん、仕方ないさ。ブライトさんが『頼む』って頭をさげるんだからさ」
「シモン、わかってる?。あなたの武器とあの亜獣『ラーゼファン』は、相性が最悪なのよ。あのぬるぬるしたからだの表皮からは……」
「わかってるって。あいつの表皮から分泌されている溶解液のことだろ」
「そうよ!」
あたしは空中をまさぐる仕草をして、目の前に映像を投写させた。すぐに市街地を荒らしまくっている亜獣が映し出された。映像の右隅には「LIVE」の文字、左下に「フィリピン ケソン・シティ」とある。
はじめてみたとき、その亜獣がかつて海にいた『蛸』とよばれる軟体生物に似てると思った。ただその姿で四つ足の脊椎動物のような動きをしている。あたし的には気色悪くて苦手な見た目。
でも問題はそこじゃない。
からだのいろんなところから生えている吸盤のついた触手と、その吸盤から定期的に吹き出されている体液。その体液は強力な溶解液で、すでにおおくの建物や道路、ひとに被害を与えていた。
さらにやっかいなことにちいさいながら背中から羽が生えていて、数百メートルならひとっ飛びする機動性に手を焼かされた。
前回の戦いで、あたしもそのスピードに振り回されて、その溶解液を浴びてしまった。
「シモン、タケルの『サムライ・ソード』やあたしの『槍』なら、なんとかなるの。一気にアイツの皮膚を貫いて、肉体に一撃加えられるからね。でもあなたのドリルや戦棍は……」
「あぁ、そうだね。ドリルは穴を空けている端から溶けちゃうだろうし、戦棍はあのぶよぶよしたからだに跳ね返される。でも武器を取り換えて、そのデミリアンにアジャストさせるには二週間はかかる」
「いますぐに武器を換えるのは無理なんだ」
「だから言ってるの!!。シモン、もし出撃しても、なにもやれやしないわ」
「それでもぼくが『ラーゼファン』を食いとめているあいだに、逃げられるひとはすくなくないだろ。それができるのは今はこのマーズだけだ。それ以外はみんなメンテナンス中だろ。アイちゃんのヴィーナスも含めてね」
そう言ってシモンはいたずらっぽく片目をつぶってみせた。
「わ、わるかったわね……。怪我しちゃって」
あたしはよく見えるように、ギプスで固定された腕を無理やり掲げてみせた。
「でも、あいつあの触手で掴んだまま、溶解液を吸盤から吹き出させたのよ。海の近くで助かったわ。よくあの程度の損傷で済んだものだと思うわ」
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