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第三章 第五節 エンマアイの記憶
第678話 クララ、あなた、たぶん正しい
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「クララ、あなた、たぶん正しい」
「正しい……?。ほんとうですか!」
クララは声を弾ませたが、レイは自分の分析を淡々とクララに披瀝した。
「わたしたちがこのエンマ・アイの脳を破壊しようと力を注げば、ひとりであのイオージャと戦うことになって危険。でもこの脳をほったらかしにして、タケルの元に加勢にいけば、精神攻撃を際限なく仕掛けられて、やっぱりタケルは危険になる」
「どちらの選択肢もとれない……。やっぱりそうなるんですね」
「だけど一番危険なのは、精神攻撃でタケルがもし暴走することがあっても、だれもそれをとめることができないってこと。わたしたちは、ヤマト・タケルという切り札をうしなうと同時に、マンゲツという最強の亜獣と戦わなくてはならなくなる」
クララがその結論に息を飲んだのわかった。
レイはクララもおなじ結論を導き出していたはずだと確信していたが、無意識のうちに避けていたのだろう。たちまちうろたえような顔つきに変わる。
「ど、どうすれば……」
レイは自分たちの正面に立ちはだかっている亜獣を見すえた。先ほどから威嚇するようにからだを揺らしているが、襲ってくる様子がない。それどころか、からだをどんどん膨らませて、通路を塞ぎはじめている。かわいげのあるマスコット風の姿が、すでにでっぷりと太った、ふてぶてしい王様然とした姿に変容している。
通せんぼをしようとしている意図がありありとしている。
「クララ、あなたひとりでこいつの相手、できる?」
「ひとりで?」
「えぇ。わたしはここから脱出して、タケルの元へいく」
「なら、わたしもタケルさんのところへ」
「ダメ。どちらにしてもあの脳は破壊しないといけない。あのエンマ・アイの脳が入れ知恵し続けるかぎり、わたしたちの不利は変わらない。それに……」
レイはクララに覚悟を求めるように、しっかと目をあわせて言った。
「このオンナの始末はあなたがつけなきゃ、あなたも後悔する」
クララはその意図をすぐに理解したようだった。
「わかりましたわ。アスカさんだけに手柄をとらせるわけにもいきませんからね」
「でも注意して。エンマ・アイはタケルのたいせつな人である前に、超一流のパイロットだったのだから、簡単には倒されてはくれない」
「そんなのとっくにわかっています。でもわたしも、アスカさんも、それを意地でも越えなくてなり……」
その時だった。
またさっきとおなじような幻影が目の前に広がりはじめた。意識が遠のくような、別の意識に入り込むような不思議な感覚——。
かすかに視界に別の空間がひろがりはじめた。
それはモニタ越しにみるデミリアンのコックピットの映像だった。なかの様子からそれがセラ・マーズのものだとすぐにわかった。
だれかの声が聞こえた。とても切迫した、それでいて怒りに満ちた甲高い声——。
「どうして、シモンが出撃しなくちゃいけないの!」
エンマ・アイの声だった——。
「正しい……?。ほんとうですか!」
クララは声を弾ませたが、レイは自分の分析を淡々とクララに披瀝した。
「わたしたちがこのエンマ・アイの脳を破壊しようと力を注げば、ひとりであのイオージャと戦うことになって危険。でもこの脳をほったらかしにして、タケルの元に加勢にいけば、精神攻撃を際限なく仕掛けられて、やっぱりタケルは危険になる」
「どちらの選択肢もとれない……。やっぱりそうなるんですね」
「だけど一番危険なのは、精神攻撃でタケルがもし暴走することがあっても、だれもそれをとめることができないってこと。わたしたちは、ヤマト・タケルという切り札をうしなうと同時に、マンゲツという最強の亜獣と戦わなくてはならなくなる」
クララがその結論に息を飲んだのわかった。
レイはクララもおなじ結論を導き出していたはずだと確信していたが、無意識のうちに避けていたのだろう。たちまちうろたえような顔つきに変わる。
「ど、どうすれば……」
レイは自分たちの正面に立ちはだかっている亜獣を見すえた。先ほどから威嚇するようにからだを揺らしているが、襲ってくる様子がない。それどころか、からだをどんどん膨らませて、通路を塞ぎはじめている。かわいげのあるマスコット風の姿が、すでにでっぷりと太った、ふてぶてしい王様然とした姿に変容している。
通せんぼをしようとしている意図がありありとしている。
「クララ、あなたひとりでこいつの相手、できる?」
「ひとりで?」
「えぇ。わたしはここから脱出して、タケルの元へいく」
「なら、わたしもタケルさんのところへ」
「ダメ。どちらにしてもあの脳は破壊しないといけない。あのエンマ・アイの脳が入れ知恵し続けるかぎり、わたしたちの不利は変わらない。それに……」
レイはクララに覚悟を求めるように、しっかと目をあわせて言った。
「このオンナの始末はあなたがつけなきゃ、あなたも後悔する」
クララはその意図をすぐに理解したようだった。
「わかりましたわ。アスカさんだけに手柄をとらせるわけにもいきませんからね」
「でも注意して。エンマ・アイはタケルのたいせつな人である前に、超一流のパイロットだったのだから、簡単には倒されてはくれない」
「そんなのとっくにわかっています。でもわたしも、アスカさんも、それを意地でも越えなくてなり……」
その時だった。
またさっきとおなじような幻影が目の前に広がりはじめた。意識が遠のくような、別の意識に入り込むような不思議な感覚——。
かすかに視界に別の空間がひろがりはじめた。
それはモニタ越しにみるデミリアンのコックピットの映像だった。なかの様子からそれがセラ・マーズのものだとすぐにわかった。
だれかの声が聞こえた。とても切迫した、それでいて怒りに満ちた甲高い声——。
「どうして、シモンが出撃しなくちゃいけないの!」
エンマ・アイの声だった——。
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