662 / 1,035
第三章 第五節 エンマアイの記憶
第661話 司令部!。なにか変なものが見える!
しおりを挟む
【だけどあたしは人類を救いたい】
ふいにアスカの頭に声が響いた。
「なに……?」
アスカは最初、疑似脳内通信装置『インフォ・ギア』を通じた脳内の声だと思った。が、すぐにそれがちがうことがわかった。
視界にどこかの部屋らしき光景が、スーッと広がりはじめたからだ。アスカは自分がだれかの心の中に入りこんだと感じた。手のこんだヴァーチャル空間になんの説明もなく投入された感覚。だが没入観はカケラもない。あくまでも傍観者の立場でそれを眺めているという疎外感がおおきい。
まるで自分が幽体にでもなったかのような視点。だが、そこにいるだれかの感情が、耳元で聞いているように伝わってくる。
「司令部!。なにか変なものが見える!」
『アスカ!、こっちもそう。私たちも全員それが見えて……いえ、感じてる』
春日リンがアスカの質問に答えると、ユウキもとまどいを隠せない様子で言った。
「アスカくん、わたしにも見えているのだよ」
「どういうこと。皆で亜獣の術にはまったの?」
「いいや、これからはめられるんだ」
その声はヤマトタケルだった。
ヤマトはマンゲツのコックピットに座って、すでに準備万端に整えた状態だったが、顔に余裕がないように見えた。
「ぼくを狙った、心理攻撃だ」
そう言われたのと同時に、目の前にぼんやりとしたイメージがゆっくりと、しっかり形作られていった。
そこにいたのは、ベッドで上半身を起こした状態のヤマトだった。すこし幼い印象を受けるが、ヤマトに間違いなかった。だがこのヤマトは見るからに痛々しい怪我をしていた。
左の肩口はギプス状のもので固定され、手のひらには包帯が巻かれている。顔や首など見えている部分には、擦り傷や打ち身に伴う皮下出血が見られた。パイロットはDNAに影響するため、近代的処置は施されないので、そのような旧態依然とした処置となっているのだろう。
ベッドの脇からひとりの少女が近づいてくると、着ていた服をさらりと落とすようにして脱いだ。その下にはなにも着ていなかった。彼女は素っ裸のままヤマトに近づくと、覆いかぶさるようにして、ヤマトの顔を覗き込んで言った。
【タケル、今すぐあたしを抱いて——】
【そしてあなたの子種をあたしにちょうだい】
ふいにアスカの頭に声が響いた。
「なに……?」
アスカは最初、疑似脳内通信装置『インフォ・ギア』を通じた脳内の声だと思った。が、すぐにそれがちがうことがわかった。
視界にどこかの部屋らしき光景が、スーッと広がりはじめたからだ。アスカは自分がだれかの心の中に入りこんだと感じた。手のこんだヴァーチャル空間になんの説明もなく投入された感覚。だが没入観はカケラもない。あくまでも傍観者の立場でそれを眺めているという疎外感がおおきい。
まるで自分が幽体にでもなったかのような視点。だが、そこにいるだれかの感情が、耳元で聞いているように伝わってくる。
「司令部!。なにか変なものが見える!」
『アスカ!、こっちもそう。私たちも全員それが見えて……いえ、感じてる』
春日リンがアスカの質問に答えると、ユウキもとまどいを隠せない様子で言った。
「アスカくん、わたしにも見えているのだよ」
「どういうこと。皆で亜獣の術にはまったの?」
「いいや、これからはめられるんだ」
その声はヤマトタケルだった。
ヤマトはマンゲツのコックピットに座って、すでに準備万端に整えた状態だったが、顔に余裕がないように見えた。
「ぼくを狙った、心理攻撃だ」
そう言われたのと同時に、目の前にぼんやりとしたイメージがゆっくりと、しっかり形作られていった。
そこにいたのは、ベッドで上半身を起こした状態のヤマトだった。すこし幼い印象を受けるが、ヤマトに間違いなかった。だがこのヤマトは見るからに痛々しい怪我をしていた。
左の肩口はギプス状のもので固定され、手のひらには包帯が巻かれている。顔や首など見えている部分には、擦り傷や打ち身に伴う皮下出血が見られた。パイロットはDNAに影響するため、近代的処置は施されないので、そのような旧態依然とした処置となっているのだろう。
ベッドの脇からひとりの少女が近づいてくると、着ていた服をさらりと落とすようにして脱いだ。その下にはなにも着ていなかった。彼女は素っ裸のままヤマトに近づくと、覆いかぶさるようにして、ヤマトの顔を覗き込んで言った。
【タケル、今すぐあたしを抱いて——】
【そしてあなたの子種をあたしにちょうだい】
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
NPCが俺の嫁~リアルに連れ帰る為に攻略す~
ゆる弥
SF
親友に誘われたVRMMOゲーム現天獄《げんてんごく》というゲームの中で俺は運命の人を見つける。
それは現地人(NPC)だった。
その子にいい所を見せるべく活躍し、そして最終目標はゲームクリアの報酬による願い事をなんでも一つ叶えてくれるというもの。
「人が作ったVR空間のNPCと結婚なんて出来るわけねーだろ!?」
「誰が不可能だと決めたんだ!? 俺はネムさんと結婚すると決めた!」
こんなヤバいやつの話。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
憲法改正と自殺薬
会川 明
SF
この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とはいっさい関係ありません。
憲法改正後の日本、国家による自殺薬の配布から十数年が経った。
斉藤寛と楠瀬ツキミは幼なじみだ。
二人は仲睦まじく育った。
しかし、二人の終わりは唐突にやって来る。
私たちの試作機は最弱です
ミュート
SF
幼い頃から米軍で人型機動兵器【アーマード・ユニット】のパイロットとして活躍していた
主人公・城坂織姫は、とある作戦の最中にフレンドリーファイアで味方を殺めてしまう。
その恐怖が身を蝕み、引き金を引けなくなってしまった織姫は、
自身の姉・城坂聖奈が理事長を務める日本のAD総合学園へと編入する。
AD総合学園のパイロット科に所属する生徒会長・秋沢楠。
整備士の卵であるパートナー・明宮哨。
学園の治安を守る部隊の隊長を務める神崎紗彩子。
皆との触れ合いで心の傷を癒していた織姫。
後に彼は、これからの【戦争】という物を作り変え、
彼が【幸せに戦う事の出来る兵器】――最弱の試作機と出会う事となる。
※この作品は現在「ノベルアップ+」様、「小説家になろう!」様にも
同様の内容で掲載しており、現在は完結しております。
こちらのアルファポリス様掲載分は、一日五話更新しておりますので
続きが気になる場合はそちらでお読み頂けます。
※感想などももしお時間があれば、よろしくお願いします。
一つ一つ噛み締めて読ませて頂いております。
アルビオン王国宙軍士官物語(クリフエッジシリーズ合本版)
愛山雄町
SF
ハヤカワ文庫さんのSF好きにお勧め!
■■■
人類が宇宙に進出して約五千年後、地球より数千光年離れた銀河系ペルセウス腕を舞台に、後に“クリフエッジ(崖っぷち)”と呼ばれることになるアルビオン王国軍士官クリフォード・カスバート・コリングウッドの物語。
■■■
宇宙暦4500年代、銀河系ペルセウス腕には四つの政治勢力、「アルビオン王国」、「ゾンファ共和国」、「スヴァローグ帝国」、「自由星系国家連合」が割拠していた。
アルビオン王国は領土的野心の強いゾンファ共和国とスヴァローグ帝国と戦い続けている。
4512年、アルビオン王国に一人の英雄が登場した。
その名はクリフォード・カスバート・コリングウッド。
彼は柔軟な思考と確固たる信念の持ち主で、敵国の野望を打ち砕いていく。
■■■
小説家になろうで「クリフエッジシリーズ」として投稿している作品を合本版として、こちらでも投稿することにしました。
■■■
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+でも投稿しております。
簡単な水増しほど簡単にはいかないモノは無い
蓮實長治
SF
地獄への道は、善意や悪意で舗装されているのでは無い。
安易な選択をする事こそが地獄への道に足を踏み入れる事なのだ。
「なろう」「カクヨム」「アルファポリス」「pixiv」「Novel Days」「ノベリズム」「GALLERIA」「ノベルアップ+」に同じモノを投稿しています。
Select Life Online~最後にゲームをはじめた出遅れ組
瑞多美音
SF
福引の景品が発売分最後のパッケージであると運営が認め話題になっているVRMMOゲームをたまたま手に入れた少女は……
「はあ、農業って結構重労働なんだ……筋力が足りないからなかなか進まないよー」※ STRにポイントを振れば解決することを思いつきません、根性で頑張ります。
「なんか、はじまりの街なのに外のモンスター強すぎだよね?めっちゃ、死に戻るんだけど……わたし弱すぎ?」※ここははじまりの街ではありません。
「裁縫かぁ。布……あ、畑で綿を育てて布を作ろう!」※布を売っていることを知りません。布から用意するものと思い込んでいます。
リアルラックが高いのに自分はついてないと思っている高山由莉奈(たかやまゆりな)。ついていないなーと言いつつ、ゲームのことを知らないままのんびり楽しくマイペースに過ごしていきます。
そのうち、STRにポイントを振れば解決することや布のこと、自身がどの街にいるか知り大変驚きますが、それでもマイペースは変わらず……どこかで話題になるかも?しれないそんな少女の物語です。
出遅れ組と言っていますが主人公はまったく気にしていません。
○*○*○*○*○*○*○*○*○*○*○
※VRMMO物ですが、作者はゲーム物執筆初心者です。つたない文章ではありますが広いお心で読んで頂けたら幸いです。
※1話約2000〜3000字程度です。時々長かったり短い話もあるかもしれません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる