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第三章 第五節 エンマアイの記憶

第647話 ヤマト・タケルの命懸けの警護

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 基地の通路内にスタンバイされていたエア・バイクにまたがったまま、サイトーは移送の手順の最終確認をしていた。

 バイクは全部で6台。5台はトランプの『シンク』カードのように真ん中と四方にわかれ、それを最後の1台が先導するフォーメーションになっている。中央のバイクの後部シートにはヤマト・タケル。四方のバイクは運転手とそのうしろの射撃手の二人組で構成されていた。射撃手は銃とマジカル・ソードやスピア等を携えており、ヤマトの前衛は正面を、後衛はシートにうしろむきに座って後方からの襲撃に備えている。
 そしてこの5台のバイクを先導するのは草薙のエア・バイクだった。

「いっさいの躊躇ちゅうちょなしに撃ち殺せ!」
 草薙大佐が射撃手たちにむけて、強い口調で言った。
 サイトーは感情を顔にあらわさないように留意して、確認をした。

「魔法少女じゃなくてもですね」
「ああ、人間だろうと魔法少女だろうと、知っている者だろうと、知らない者だろうと構わない。現在、基地内には我々エア・バイク部隊以外の室外への外出禁止令がでていて、全員に『脳内アラート』で警告されている。これを無視したり、気づかずに基地内をうろついている者がいたら、それは魔法少女だ」
「大佐、ですが魔法少女は一群だと聞いています。銃はまったく役にたたないのでは?」
「ああ、役に立たたん。だが撃つことで、そいつが人間かそうでないかの区別がつく。それだけでいい。もし魔法少女であれば、私がそれを狩る。もしちがったら……」
 草薙はそこでことばを切って、すこし考えこんだ。
「そうだな。もしちがったら、それまでというところだ。そいつの運がなかったっということになる。だが、そいつが魔法少女だったときは、運がなかったのはこちら側っていうことになりかねん」
 それはサイトーたちが期待していた、良心の呵責かしゃくをわずかでも軽減してくれるような、やさしい答えではなかった。
 まあ、こんなものだろうと予想していたので、サイトーは鼓舞するように隊員たちに発破をかけた。
「みんな気をひきしめていくぜ。オレたちの任務はヤマトタケルを守ることだ。ここからたった500メートル先の、デミリアン格納庫までヤマトタケルを無事に届けりゃいい。だがおまえたちの人生で、もっとも長い500メートルだと覚悟しろ」

 超流動斥力波がふきあがり、エア・バイクが浮上しはじめる。草薙がさらに最終確認を重ねてきた。
「デミリアン格納庫までの経路は右折と左折が一回ずつある。格納庫に着くまでの通路も、格納庫内に入ってからも気を抜くな!」
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