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第三章 第五節 エンマアイの記憶
第642話 亜獣がいねぇですがどこいったんですかねぇ?
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「本部、さっきのふざけた顔の亜獣がいねぇですが、どこいったんですかねぇ?」
イシカワが司令部のほうへ難癖をつけるように尋ねてきた。
先ほど喰われそうになって、命からがら逃げ出してきた場所まで、わざわざエア・バイクを飛ばして戻ってきたのに、肝心の亜獣がいないことに、あきらかに不満を隠せない様子だった。
エドは目の前のモニタに次々と表示されていく、亜獣の分析結果を注視していたので、近くの女性クルーに代わりに答えるよう、眼鏡をもちあげる仕草で促した。
『あ、イシカワ少佐……』
その女性クルーは突然指名されて、すこし面喰らいながらもそれに応じた。
『さきほど襲ってきた亜獣は、1キロメートルほど移動してしまいました』
「レイくんたちが待機している、奥のほうかね?」
『はい。その隔壁までは300メートルの地点です』
そう言って彼女はイシカワの網膜に、強制的にそのときのカメラ映像を送りつけた。
ふいに姿を消した亜獣はしばらくして、1キロメートル離れた場所で、さきほど突然出現したときとおなじように、天井をつきやぶって出現していた。破壊されたブロック片が床に落ちて、大仰な音をたてたかと思うと、上からゆっくりとあのふざけた『カートゥン』のような顔をした亜獣が顔を覗かせる。
『どうやら通風口から出てきているとのことです。ですからイシカワ少佐も通風口や非常扉の位置に注意して進んできてください』
そう指摘されて映像をみると、ド派手な音のわりには床に落ちた剥落片は、表層のタイル等がほとんどだった。
「なるほど。わざわざ天井を壊壊して出現しているわけではないようですねぇ。で、この亜獣は今もそこにいるのかな?」
『いえ、一度は穴をあけてでてくるのですが、そのまま亜空間を移動してから次の場所に現れるらしくて、いまはどこにいるか不明です。どうかご注意ください』
「ありがとう。それに従うことにしましょうかね。なにせ、きみの声はあっし好みですからねぇ」
イシカワは女性クルーのことばのままに、慎重にエア・バイクを進めることにした。マップ上で確認できている通気孔や非常口などに細心の注意をはらう。
いくらエア・バイクの操縦に自信があると言っても、ふいをつかれればやられる。先ほど命を落とした兵士とおなじ轍を踏むわけにはいかない。
さきほどまで亜獣がいたといっていた場所に到達した。
天井をみあげる。
おおきく亀裂がはいって天井が、今にも抜け落ちるのでは、と思うほどの損傷を受けているように見える。だが目をこらすと、それが内部の化粧タイルの部分が、派手に損壊しているだけなのが確認できる。
天井をまるまる破壊するほどのパワーはない、とイシカワは判断した。
イシカワが司令部のほうへ難癖をつけるように尋ねてきた。
先ほど喰われそうになって、命からがら逃げ出してきた場所まで、わざわざエア・バイクを飛ばして戻ってきたのに、肝心の亜獣がいないことに、あきらかに不満を隠せない様子だった。
エドは目の前のモニタに次々と表示されていく、亜獣の分析結果を注視していたので、近くの女性クルーに代わりに答えるよう、眼鏡をもちあげる仕草で促した。
『あ、イシカワ少佐……』
その女性クルーは突然指名されて、すこし面喰らいながらもそれに応じた。
『さきほど襲ってきた亜獣は、1キロメートルほど移動してしまいました』
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『はい。その隔壁までは300メートルの地点です』
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『どうやら通風口から出てきているとのことです。ですからイシカワ少佐も通風口や非常扉の位置に注意して進んできてください』
そう指摘されて映像をみると、ド派手な音のわりには床に落ちた剥落片は、表層のタイル等がほとんどだった。
「なるほど。わざわざ天井を壊壊して出現しているわけではないようですねぇ。で、この亜獣は今もそこにいるのかな?」
『いえ、一度は穴をあけてでてくるのですが、そのまま亜空間を移動してから次の場所に現れるらしくて、いまはどこにいるか不明です。どうかご注意ください』
「ありがとう。それに従うことにしましょうかね。なにせ、きみの声はあっし好みですからねぇ」
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おおきく亀裂がはいって天井が、今にも抜け落ちるのでは、と思うほどの損傷を受けているように見える。だが目をこらすと、それが内部の化粧タイルの部分が、派手に損壊しているだけなのが確認できる。
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