いつか日本人(ぼく)が地球を救う

第三章 第四節 エンマ・アイ

第613話 あたしに電撃攻撃でも浴びろっていうの？

　即答を期待したが、リンはそのまま押し黙った。
　おそらく誰かと意見を交換しはじめたのだろう。十秒ほどして「どうにかして、それ証明できる？」と回答とはほど遠い命令を持ちかけてきた。
「ーったくなによ。あたしに電撃攻撃でも浴びろっていうの？。あのからだに蒸着した耐電塗装に、全幅の信頼なんておいてないわよ、あたし」
「アスカ、それはないだろ」
　武器・装備担当の玄羽介くろうけいが異議をとなえてきたが、リンがそこに割り言った。
「電撃攻撃なんてないわよ、アスカ。ここにはイオージャがいないのよ」
「そうか。一群の魔法少女の能力は『電撃』と『分解』だって思いこんでたわ」
「ただなにを仕掛けてくるかわからないから、注意して」　
「なにを注意するのよぉ。セラ・ヴィーナスは『分解光線』は回避できるんだから」
「バカ言わないで。武器を使ったら『移行領域被覆』が１００％でなくなるの、わかってるでしょ。たった数パーセントのわずかなほころびでも、そこを狙われたらおしまいよ。それに相手は魔法少女——。ほかにどんな魔法を隠しているかわからない」
「そうだったわね。つい自分が無敵だって勘違いする」
　アスカは自分が開戦早々に武器をロストしたヘマをすこしでも取り戻そうとして、注意散漫になっていたことを反省した。

　まったく、これじゃあ、クララやエドと変わりゃしないじゃないの。

「メイ、ありがと……」
　アスカは感謝のことばを呟くと、すぐさま攻撃を開始した。ビルの側面に両手をかけると、そのままセラ・ヴィーナスのからだを横に何度かゆらして勢いをつけ、上空に飛び上がった。
　すぐさま中空で手首に巻いた『万布』を幅広のラケット状に変形させる。テニス用というには、フェース部分がやけに広い形状。まるでしっかりとしたグリップのついた『団扇うちわ』のようだった。
　アスカはそれを魔法少女の群れにむかって振り抜いた。
　幅広のフェース面は手ではたき落としていたのとは比較にならないほどいっぺんに魔法少女を叩き潰した。２、３０体ほどが飛ぶ力をうしない落ちて行く。
　アスカはすぐさまラケットを元の布に戻して手首に巻きつけると、飛び出した先にある柱のビルに、抱きつくようにしてぶつかった。
　セラ・ヴィーナスはしっかとしがみつくのに成功したが、今度は飛び込んだ勢いを老朽化したビルが吸収できなかった。セラ・ヴィーナスのはるか下方のほうで、ボンという鈍い音がしたと思うと、土煙があがった。ビルの中腹あたりの数層が潰れて、ビルがゴトンと数メートル下に沈むのが見えた。
　上空をみあげる。
　天井を支えていたビルの頂上部が崩れ、上空から雨のように、建材や部品の破片がばらばらと降り注いでくる。
　まずい——。

　そう思った瞬間、ビルが傾きはじめた。