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第三章 第四節 エンマ・アイ

第590話 なぜ魔法少女は見つからなかったの?

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 ミサトはことばを続けた。
「それにね。そのあとこの場所は『高レベル核廃棄物』の最終処分場と流用されることになって、電波どころか放射能も通さない『超高密シールド』で密閉されてる。どんなに高性能の探知器を使っても、ここに潜まれたら見つけることは困難だわ」
「でも、亜獣の『魔法』は漏れでていた」
 ミサトはレイがそう言及してきたのを一蹴した。
「そう。それくらい亜獣の能力がすごいってこと。あなたたちも覚悟して、戦いに備えてちょうだい」

「はん、ブライトが一群に襲われなければ、これってわかンなかったのよね」
 せっかく話を終わりにしたにもかかわらず、アスカが空気を読まずに事を荒げるような意見をぶっ込んできた。
 会議室の数人が部屋の片隅で会議を傍観していたブライトのほうに目をむける。
 ミサトはこころのなかで舌打ちをする思いだったが、春日リンがアスカを諌めるように声をあげた。

「アスカ、運が良かったのよ。喜びなさい。それよりも第二と第三、どちらに亜獣がいるかってことのほうが重要じゃないのかしら?」

「そうですわね。わたしもそれが気になって仕方がありませんでした」
 クララがそれに乗っかるように会話に加わってきた。アスカのように面倒くさい人種と思われないように、という意図が透けて見えたが、それはそれで有り難かった。
 前回、つまらなぬことで意固地になったのを、すこし反省しているのだろう。
「なんで、特定できてないのよぉ」
 アスカは自分への集中砲火を回避するように不満を口先に出した。ミサトはエドに目をむけたが、まだなにか考え事をしているようで、役にたたなさそうだった。
「金田日先生。教えてください」
「あぁ。特定できなくて、大変申し訳ない。これは先ほどの話にもあったように。放射能すら漏れ出さないつくりになっているせいで、現行の計測装置のほとんど使えず、どんな周波数の電波もなかまで届かない。今回の作戦では、有線接続の自走ネットワークロボットを、内部に先行して侵入させているのだが、地下都市内部があまりに広大で捕捉できないのだよ」
「それにブライトの自宅がこの『箱根』と『熱海』のまんなか付近にあるから、場所からも特定しにくいしね」
 金田日の弁明にミサトはことばを添えた。
「だったら、第二東京区から、第三東京区へむけてローラー作戦すればいいンじゃないのぉ」

「アスカくん。それがそうはいかないのです」
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