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第三章 第四節 エンマ・アイ
第579話 ユウキ。きみはもっと自信をもっていい
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「アスカくん。きみはそれが間違いなくできる人間だ。アトンとの戦いで日本国防軍の中将の命を救った実績もある」
「ユウキさん、そんな心配をするなら。わたしの方が深刻じゃありませんこと。わたしはたぶんあなたより隊員を救えない。自信もないし、たぶん頼りにならない」
クララが眉根をつりあげて言った。
「だが、君は女性だ。すこしくらいのミスがあっても……」
「は、ユウキ、まぁだ、そんな前々世紀的なこと言ってるの!。あんた、男の性に甘えすぎよ。男だからやらねばならないっていうのは、自分に対する免罪符にしかきこえない」
「ああ、ユウキ。きみはもっと自信をもっていい……」
ヤマトが諭すようにことばを連ねた。
「そうでなければきみに協力する隊員がむしろ気の毒だし、ひいては一緒に戦うこと自体が危険きわまりないことになる」
ユウキは手が汗ばむのを感じた。自分のコンプレックスを見透かされて、恥ずかしくも、腹立たしくもあった。虚勢をはることすら自信がない。
その時レイが無言で立ちあがって、二階へむかおうとした。
「レイ、あんたどこ行くのよ」
「もう寝るわ。話をしててもしかたないから」
「レイさん。しかたないって。ユウキさんがとても……」
「ごめん、クララ。私にはユウキの心配がわからない」
「わからない?」
「ええ。わたしは自分の班の隊員がどうなろうが気にしないもの。隊員全員を犠牲にして亜獣を倒せるなら、わたしは迷わずそうするから」
レイはこともなげにそう口にした。ユウキはそのことばに面喰ったが、それはクララやアスカも同じようだった。
「だから、わたしは草薙大佐にお願いするつもり。わたしの班は命知らずの精鋭か、命がいらない狂人にしてって」
ユウキはレイが二階にあがっていく背中を見送っていたが、レイの姿が見えなくなると、アスカがユウキとクララに交互に見てから言った。
「あたしがもし小隊の隊員だったら、レイの班だけはごめんだわね」
「えぇ、わたしもです。レイさん、あれ、本気で言ってますものね」
「クララ、あんた、レイが一度でも冗談言ったの、聞いたことある?」
「で、ですよね……」
そう答えながらクララがユウキに目を向けてきた。ユウキは簡単にふたりに同意していいものか迷った。だが彼が口を開きあぐねている横で、ヤマトが口元をおさえて笑いを押し殺しながら言った。
「くっ、くっ。ユウキ。参ったね……」
ヤマトはユウキの肩を軽く叩いた。
「ぼくだって、レイの班に加わるくらいなら、きみの班を選ぶよ」
「絶望させられるより、失望させられるほうが、100倍楽だからね」
「ユウキさん、そんな心配をするなら。わたしの方が深刻じゃありませんこと。わたしはたぶんあなたより隊員を救えない。自信もないし、たぶん頼りにならない」
クララが眉根をつりあげて言った。
「だが、君は女性だ。すこしくらいのミスがあっても……」
「は、ユウキ、まぁだ、そんな前々世紀的なこと言ってるの!。あんた、男の性に甘えすぎよ。男だからやらねばならないっていうのは、自分に対する免罪符にしかきこえない」
「ああ、ユウキ。きみはもっと自信をもっていい……」
ヤマトが諭すようにことばを連ねた。
「そうでなければきみに協力する隊員がむしろ気の毒だし、ひいては一緒に戦うこと自体が危険きわまりないことになる」
ユウキは手が汗ばむのを感じた。自分のコンプレックスを見透かされて、恥ずかしくも、腹立たしくもあった。虚勢をはることすら自信がない。
その時レイが無言で立ちあがって、二階へむかおうとした。
「レイ、あんたどこ行くのよ」
「もう寝るわ。話をしててもしかたないから」
「レイさん。しかたないって。ユウキさんがとても……」
「ごめん、クララ。私にはユウキの心配がわからない」
「わからない?」
「ええ。わたしは自分の班の隊員がどうなろうが気にしないもの。隊員全員を犠牲にして亜獣を倒せるなら、わたしは迷わずそうするから」
レイはこともなげにそう口にした。ユウキはそのことばに面喰ったが、それはクララやアスカも同じようだった。
「だから、わたしは草薙大佐にお願いするつもり。わたしの班は命知らずの精鋭か、命がいらない狂人にしてって」
ユウキはレイが二階にあがっていく背中を見送っていたが、レイの姿が見えなくなると、アスカがユウキとクララに交互に見てから言った。
「あたしがもし小隊の隊員だったら、レイの班だけはごめんだわね」
「えぇ、わたしもです。レイさん、あれ、本気で言ってますものね」
「クララ、あんた、レイが一度でも冗談言ったの、聞いたことある?」
「で、ですよね……」
そう答えながらクララがユウキに目を向けてきた。ユウキは簡単にふたりに同意していいものか迷った。だが彼が口を開きあぐねている横で、ヤマトが口元をおさえて笑いを押し殺しながら言った。
「くっ、くっ。ユウキ。参ったね……」
ヤマトはユウキの肩を軽く叩いた。
「ぼくだって、レイの班に加わるくらいなら、きみの班を選ぶよ」
「絶望させられるより、失望させられるほうが、100倍楽だからね」
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