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第三章 第四節 エンマ・アイ
第561話 今回の亜獣は今までに前例がないことばかり
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リンが着席するなり、ミサトがまず口をひらいた。
「話はわかったわぁ。でも、亜空間にいながらそれだけの力を行使できるのなら、そもそも亜獣たちはこちらの世界に出現する必要ないような気がするわ」
そのミサトの疑問に追従したのは、ゴーストで参加しているウルスラだった。
「そうだな。人間世界を混乱をもたらすだけなら、デミリアンに攻撃される危険をおかしてまで、こちらにくることがおかしいな」
その視線はまっすぐヤマトを見ていた。徴発するような視線。
いや、そうではなくわざわざ出現する理由がある。そしてそれは『四解文書』に関係するものだ。とあからさまに詰問しているようだった。
ヤマトはその視線にむけて、しっかりと否定の意志を送ってから言った。
「ぼくにはわかりません。亜獣のことはエドや金田日先生に聞いてください」
突然、話をふられてエドと金田日が顔をひきつらせた。彼らからすると、流れ弾にあたったようなものだ。
だが、そこに春日リンがわりいった。話がそれることを嫌ったのだろう。ヤマトのほうへ恨めしげな目線だけをくれてから言った。
「ウルスラ総司令。ふたりに尋ねても無駄ですよ。今回の亜獣は今までに前例がないことばかりですからね」
「前例がない……?」
「えぇ。そうでしょう。今回現れた二体。イオージャとエンマ・アイを騙った亜獣は、直接ことばでコンタクトをとってきました。それに加えて、あちら側にいながらにして、こちらの世界に攻撃を与えてきています。前例がないことだらけです」
「ほかにも前例がない、そう、イレギュラーがあったわ」
ふいにリンの横で座ったまま静かにしていたレイがボソリと呟いた。
「80年に及ぶ亜獣との戦いではじめて、亜獣がとつぜん出現した」
金田日がその意見に疑義を差し挟んできた。
「レイくん。何を言ってるのかね!。そんなことは……」
「は、あのいけすかない小動物、キーヘーのことね」
アスカがレイをアシストする。だが腕を胸の前でとんだまま、できるかぎりおもしろくなさそうな口ぶだ。
「キーヘー?」
金田日がキョトンとした顔で聞き返してきたので、アスカはたまらず立ちあがって語気を強めた。
「あの魔法少女の亜獣と一緒に現われたあの妙ちくりんな小動物よ。自分のことを『ヒカチュー』と呼んでくれとか言ってたヤツ。あいつイオージャでしょうがぁ」
ユウキがアスカの言いたいことを解説するように、意見を重ねた。
「あちら側に消えたあと予測されてないのに、わずか数十秒後に再びあらわれたということですよね」
「ええ。そうよ」
そうぶっきらぼうに言うと、アスカはドンと音をたてて座った。
「いや、あれは計測が可能なほど時間がはなれてなかったから」
金田日がすこしばかりばつが悪そうに弁明した。が、リンがそれをたしなめた。
「でも、それって前例がないことよね。活動時間をすぎたのに、もう一度現れたってことも含めてね……」
そしてエドのほうに目だけで確認した。
「でしょ、エド」
リンの鋭い視線に気後れした表情で、エドは「えぇ」とだけ答えた。
「そう、今回はあまりにも前例がないことばかり起きているのです」
「レイはそこに違和感があると言っています」
「話はわかったわぁ。でも、亜空間にいながらそれだけの力を行使できるのなら、そもそも亜獣たちはこちらの世界に出現する必要ないような気がするわ」
そのミサトの疑問に追従したのは、ゴーストで参加しているウルスラだった。
「そうだな。人間世界を混乱をもたらすだけなら、デミリアンに攻撃される危険をおかしてまで、こちらにくることがおかしいな」
その視線はまっすぐヤマトを見ていた。徴発するような視線。
いや、そうではなくわざわざ出現する理由がある。そしてそれは『四解文書』に関係するものだ。とあからさまに詰問しているようだった。
ヤマトはその視線にむけて、しっかりと否定の意志を送ってから言った。
「ぼくにはわかりません。亜獣のことはエドや金田日先生に聞いてください」
突然、話をふられてエドと金田日が顔をひきつらせた。彼らからすると、流れ弾にあたったようなものだ。
だが、そこに春日リンがわりいった。話がそれることを嫌ったのだろう。ヤマトのほうへ恨めしげな目線だけをくれてから言った。
「ウルスラ総司令。ふたりに尋ねても無駄ですよ。今回の亜獣は今までに前例がないことばかりですからね」
「前例がない……?」
「えぇ。そうでしょう。今回現れた二体。イオージャとエンマ・アイを騙った亜獣は、直接ことばでコンタクトをとってきました。それに加えて、あちら側にいながらにして、こちらの世界に攻撃を与えてきています。前例がないことだらけです」
「ほかにも前例がない、そう、イレギュラーがあったわ」
ふいにリンの横で座ったまま静かにしていたレイがボソリと呟いた。
「80年に及ぶ亜獣との戦いではじめて、亜獣がとつぜん出現した」
金田日がその意見に疑義を差し挟んできた。
「レイくん。何を言ってるのかね!。そんなことは……」
「は、あのいけすかない小動物、キーヘーのことね」
アスカがレイをアシストする。だが腕を胸の前でとんだまま、できるかぎりおもしろくなさそうな口ぶだ。
「キーヘー?」
金田日がキョトンとした顔で聞き返してきたので、アスカはたまらず立ちあがって語気を強めた。
「あの魔法少女の亜獣と一緒に現われたあの妙ちくりんな小動物よ。自分のことを『ヒカチュー』と呼んでくれとか言ってたヤツ。あいつイオージャでしょうがぁ」
ユウキがアスカの言いたいことを解説するように、意見を重ねた。
「あちら側に消えたあと予測されてないのに、わずか数十秒後に再びあらわれたということですよね」
「ええ。そうよ」
そうぶっきらぼうに言うと、アスカはドンと音をたてて座った。
「いや、あれは計測が可能なほど時間がはなれてなかったから」
金田日がすこしばかりばつが悪そうに弁明した。が、リンがそれをたしなめた。
「でも、それって前例がないことよね。活動時間をすぎたのに、もう一度現れたってことも含めてね……」
そしてエドのほうに目だけで確認した。
「でしょ、エド」
リンの鋭い視線に気後れした表情で、エドは「えぇ」とだけ答えた。
「そう、今回はあまりにも前例がないことばかり起きているのです」
「レイはそこに違和感があると言っています」
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