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第三章 第三節 進撃の魔法少女
第540話 掴みます!
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『掴みます!』
そう聞こえた瞬間、驚くほど強い力で上腕をつかまれた。だが勢いのあまり腕をつかむ手が滑っていく。が、からだがおおきく振られて、ふわりと浮いた。あっと思ったときには李子は、バイクの後部シートに座らされていた。たぶんに荒っぽい着座だったが、一瞬の浮力を利用してたぐり寄せたのだ。
李子がシートに座ったとみるや、トグロはすぐさまブレーキをかけて、バイクを水平に戻した。
「アイダ先生。大丈夫ですか?」
うしろ手に腕を伸ばしたトグロに、腕をつかまれたまま答えた。
「あ、ええ……」
声がうまくでてこなかった。トグロは上半身をひねると、自分のかぶっていたヘルメットを脱いで、有無を言わさず李子の頭の上からかぶせた。
『アイダ先生、深呼吸をしてください』
意味がわからなかったが、言われるがまま大きく息を吸い込んだ。なんともいえず甘い匂いが鼻腔をくすぐった。たぶんトグロの体臭と香水がまじった匂いなのだろう。甘さのなかにわずかにスパイシーさが混じる。
ちっとも嫌な匂いではなかった。
『すみません。一個しかないので、わたしので我慢してください。酸素が足りてないので、それでゆっくりと補給を……』
なんとも申し訳なさげな表情に、おもわず口元がほころんだ。命の恩人なのに、謝ってくるなんて、なんて謙虚なひとなのだろう……。
『まだ上空1000メートルはありますので、まずは地上に降りることにします。わたしの腰をしっかりと掴んでもらえますか?』
李子はおずおずとトグロの腰に手を回した。マッチョな体躯のせいで李子には手をまわしきれなかった。鍛えこんだ腹横筋がまわした腕の下に感じられる。
たちまち、李子は安堵感につつまれた。安心しすぎて腰から下が脱力するような感覚にさえ感じられた。
その時、自分の左足に何とも言えない違和感を感じた。
李子はなにげなく自分の足首に目をやった。
誰かの手が自分の足首をつかんでいた——。
そう聞こえた瞬間、驚くほど強い力で上腕をつかまれた。だが勢いのあまり腕をつかむ手が滑っていく。が、からだがおおきく振られて、ふわりと浮いた。あっと思ったときには李子は、バイクの後部シートに座らされていた。たぶんに荒っぽい着座だったが、一瞬の浮力を利用してたぐり寄せたのだ。
李子がシートに座ったとみるや、トグロはすぐさまブレーキをかけて、バイクを水平に戻した。
「アイダ先生。大丈夫ですか?」
うしろ手に腕を伸ばしたトグロに、腕をつかまれたまま答えた。
「あ、ええ……」
声がうまくでてこなかった。トグロは上半身をひねると、自分のかぶっていたヘルメットを脱いで、有無を言わさず李子の頭の上からかぶせた。
『アイダ先生、深呼吸をしてください』
意味がわからなかったが、言われるがまま大きく息を吸い込んだ。なんともいえず甘い匂いが鼻腔をくすぐった。たぶんトグロの体臭と香水がまじった匂いなのだろう。甘さのなかにわずかにスパイシーさが混じる。
ちっとも嫌な匂いではなかった。
『すみません。一個しかないので、わたしので我慢してください。酸素が足りてないので、それでゆっくりと補給を……』
なんとも申し訳なさげな表情に、おもわず口元がほころんだ。命の恩人なのに、謝ってくるなんて、なんて謙虚なひとなのだろう……。
『まだ上空1000メートルはありますので、まずは地上に降りることにします。わたしの腰をしっかりと掴んでもらえますか?』
李子はおずおずとトグロの腰に手を回した。マッチョな体躯のせいで李子には手をまわしきれなかった。鍛えこんだ腹横筋がまわした腕の下に感じられる。
たちまち、李子は安堵感につつまれた。安心しすぎて腰から下が脱力するような感覚にさえ感じられた。
その時、自分の左足に何とも言えない違和感を感じた。
李子はなにげなく自分の足首に目をやった。
誰かの手が自分の足首をつかんでいた——。
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