539 / 1,035
第三章 第三節 進撃の魔法少女
第538話 亜獣の責任者になった者の特権
しおりを挟む
「でも、そのことがぼくが腕利きのハッカーを知っている、ということとは直接結びつかないと思うけど」
エドは苦笑しながら言った。
「何を言ってるんだい。ほらあの時……、セラ・プルートが亜獣と化した時、三番目に出現した幻影獣『モスピダン』の分析データにアクセスできなくなった。ヘルメット博士の生体パスワードでないと、封印できないはずのデータなのに、誰かがアクセス不能にしたんだ。そんなことって、特別な権限を受け継いだ者にしかできっこないだろ」
ヤマトはあえて何も言わず、エドの目をじっと見た。エドはすこし煽るような口調で言った。
「あのモスピダンの分析データのなかに、『四解文書』の真実に触れるなにかが、そこにあったんだろ。そのもの単体では気づかれない内容だけど、『プルートゥ』の事案とつきあわせると、浮びあかるような何かが」
「だったら?」
ヤマトは冷たく言い返した。一触即発の空気を感じてか、金田日がおろおろした表情をみせている。いつの間にかエドの態度があの時のような強気にあふれている。
「いいや、なにも。ぼくは『四解文書』には何の興味もない。それに君もすでに知っているように、ぼくも『四解文書』の一節を受け継がされているからね」
ヤマトは余裕でその告白を無視したが、金田日はおおきなショックを受けていた。笑ってしまうほど目をひんむいてエドの顔を凝視している。
「エド、それは本当なのかネ」
「金田日博士。亜獣の責任者になった者の特権なのですよ。このあいだうちあけた、ヤマトくんも知らない亜獣に関するいくつかの秘密と、『四解文書』の一節を受け継ぐのはね。まあ、ぼくは特権というより足枷だと思ってますがね」
「知っているのはどの一節です?」
「ヤマトくん。君はこの文書の内容をひとまえで口外できないのを知ってるだろ?。でもぼくにはこの節がなにを言っているのかよくわからずにいる。そう言えば、きみにはこれがどの一節がわかるんじゃないかな」
「ええ。おそらく……。なんとなくわかりました」
ヤマトはエドがいろいろ打ちあけてくれたことに満足していた。これだけ胸襟をひらいてくれたことははじめてかもしれない。
「エド、協力させてもらうよ」
エドは眼鏡の枠をつかんですこし下にずらすと、自分の目をこちらにむけてきた。レンズ越しでは真意がみてとれないとでもいう仕草に見えた。なんとも芝居がかりすぎだ。
「ぼくも魔法少女が誰なのか気になる。そんな脅威が人知れず基地内で大手をふっているっていうのも気にいらないしね」
「どどうやるつもりなんだい?」
ヤマトは困ったような表情をしてみせた。
「すまない、エド。ぼくもそれはわからない。でもその人物ならまちがいなくAIをだし抜いてくれる」
エドは苦笑しながら言った。
「何を言ってるんだい。ほらあの時……、セラ・プルートが亜獣と化した時、三番目に出現した幻影獣『モスピダン』の分析データにアクセスできなくなった。ヘルメット博士の生体パスワードでないと、封印できないはずのデータなのに、誰かがアクセス不能にしたんだ。そんなことって、特別な権限を受け継いだ者にしかできっこないだろ」
ヤマトはあえて何も言わず、エドの目をじっと見た。エドはすこし煽るような口調で言った。
「あのモスピダンの分析データのなかに、『四解文書』の真実に触れるなにかが、そこにあったんだろ。そのもの単体では気づかれない内容だけど、『プルートゥ』の事案とつきあわせると、浮びあかるような何かが」
「だったら?」
ヤマトは冷たく言い返した。一触即発の空気を感じてか、金田日がおろおろした表情をみせている。いつの間にかエドの態度があの時のような強気にあふれている。
「いいや、なにも。ぼくは『四解文書』には何の興味もない。それに君もすでに知っているように、ぼくも『四解文書』の一節を受け継がされているからね」
ヤマトは余裕でその告白を無視したが、金田日はおおきなショックを受けていた。笑ってしまうほど目をひんむいてエドの顔を凝視している。
「エド、それは本当なのかネ」
「金田日博士。亜獣の責任者になった者の特権なのですよ。このあいだうちあけた、ヤマトくんも知らない亜獣に関するいくつかの秘密と、『四解文書』の一節を受け継ぐのはね。まあ、ぼくは特権というより足枷だと思ってますがね」
「知っているのはどの一節です?」
「ヤマトくん。君はこの文書の内容をひとまえで口外できないのを知ってるだろ?。でもぼくにはこの節がなにを言っているのかよくわからずにいる。そう言えば、きみにはこれがどの一節がわかるんじゃないかな」
「ええ。おそらく……。なんとなくわかりました」
ヤマトはエドがいろいろ打ちあけてくれたことに満足していた。これだけ胸襟をひらいてくれたことははじめてかもしれない。
「エド、協力させてもらうよ」
エドは眼鏡の枠をつかんですこし下にずらすと、自分の目をこちらにむけてきた。レンズ越しでは真意がみてとれないとでもいう仕草に見えた。なんとも芝居がかりすぎだ。
「ぼくも魔法少女が誰なのか気になる。そんな脅威が人知れず基地内で大手をふっているっていうのも気にいらないしね」
「どどうやるつもりなんだい?」
ヤマトは困ったような表情をしてみせた。
「すまない、エド。ぼくもそれはわからない。でもその人物ならまちがいなくAIをだし抜いてくれる」
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
アルビオン王国宙軍士官物語(クリフエッジシリーズ合本版)
愛山雄町
SF
ハヤカワ文庫さんのSF好きにお勧め!
■■■
人類が宇宙に進出して約五千年後、地球より数千光年離れた銀河系ペルセウス腕を舞台に、後に“クリフエッジ(崖っぷち)”と呼ばれることになるアルビオン王国軍士官クリフォード・カスバート・コリングウッドの物語。
■■■
宇宙暦4500年代、銀河系ペルセウス腕には四つの政治勢力、「アルビオン王国」、「ゾンファ共和国」、「スヴァローグ帝国」、「自由星系国家連合」が割拠していた。
アルビオン王国は領土的野心の強いゾンファ共和国とスヴァローグ帝国と戦い続けている。
4512年、アルビオン王国に一人の英雄が登場した。
その名はクリフォード・カスバート・コリングウッド。
彼は柔軟な思考と確固たる信念の持ち主で、敵国の野望を打ち砕いていく。
■■■
小説家になろうで「クリフエッジシリーズ」として投稿している作品を合本版として、こちらでも投稿することにしました。
■■■
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+でも投稿しております。
【なろう400万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ
海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。
衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。
絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。
ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。
大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。
はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?
小説家になろうSF(パニック)部門にて400万pv達成、日間/週間1位、月間2位、四半期/年間3位の実績あり。
カクヨムのSF部門においても高評価いただき80万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。
お兄ちゃんの装備でダンジョン配信
高瀬ユキカズ
ファンタジー
レベル1なのに、ダンジョンの最下層へ。脱出できるのか!?
ダンジョンが現代に現れ、ライブ配信が当たり前になった世界。
強さに応じてランキングが発表され、世界的な人気を誇る配信者たちはワールドクラスプレイヤーと呼ばれる。
主人公の筑紫春菜はワールドクラスプレイヤーを兄に持つ中学2年生。
春菜は兄のアカウントに接続し、SSS級の激レア装備である【神王の装備フルセット】を持ち出してライブ配信を始める。
最強の装備を持った最弱の主人公。
春菜は視聴者に騙されて、人類未踏の最下層へと降り立ってしまう。しかし、危険な場所に来たことには無自覚であった。ろくな知識もないまま攻略し、さらに深い階層へと進んでいく。
無謀とも思える春菜の行動に、閲覧者数は爆上がりする。
シグマの日常
Glace on!!!
SF
博士に助けられ、瀕死の事故から生還した志津馬は、「シグマ」というね――人型ロボットに意識を移し、サイボーグとなる。
彼は博士の頼みで、世界を救うためにある少女を助けることになる。
志津馬はタイムトラベルを用い、その少女を助けるべく奔走する。
彼女と出会い、幾人かの人や生命と出逢い、平和で退屈な、されど掛け替えのない日常を過ごしていく志津馬。
その果てに出合うのは、彼女の真相――そして志津馬自身の真相。
彼女の正体とは。
志津馬の正体とは。
なぜ志津馬が助けられたのか。
なぜ志津馬はサイボーグに意識を移さなければならなかったのか。
博士の正体とは。
これは、世界救済と少女救出の一端――試行錯誤の半永久ループの中のたった一回…………それを著したものである。
――そして、そんなシリアスの王道を無視した…………日常系仄々〈ほのぼの〉スラップスティッキーコメディ、かも? ですっ☆
ご注文はサイボーグですか?
はい! どうぞお召し上がり下さい☆ (笑顔で捻じ込む)
〈完結〉世界を大きくひっくり返しかき回し、またお前に会えたとしても。
江戸川ばた散歩
SF
「婚約破棄を力技で破棄させた理由と結果。」の元ネタ話。
時代は遠未来。ただ生活は現代のそれとそう変わらない。所詮食べ物だの着るものなどはそう変わるものではないということで。
舞台は星間統一国家を作った「帝都政府」と、それぞれ属国的な独立惑星国家のあるところ。
「帝国」と「属国」と思ってもらえばいいです。
その中の一つ「アルク」で軍におけるクーデター未遂事件の犯人が公開処刑されたことを皮切りに話ははじまる。
視点は途中までは「アルク」にて、大統領の愛人につけられたテルミンのもの。彼がその愛人を世話し見ているうちに帝都政府の派遣員とも関係を持ったり、愛人の復讐に手を貸したり、という。
中盤は流刑惑星「ライ」にて、記憶を失った男、通称「BP」が収容所で仲間と生き残り、やがて蜂起して脱出するまでの話。
後半は元大統領の愛人が政府を乗っ取った状態を覆すために過去の記憶が曖昧な脱走者達が裏社会とも手を組んだりして色々ひっくり返す話。
その中で生き残って会いたいと思う二人は存在するんだけど、十年という長い時間と出来事は、それぞれの気持ちを地味に変化させて行くという。
そんで出てくる人々の大半が男性なんでBL+ブロマンス要素満載。
カテゴリに迷ったけど、この設定のゆるゆる感はSFではなくファンタジーだろってことでカテゴリとタイトルと構成と視点書き換えで再投稿。
……したはずなんですが、どうもこの中の人達、恋愛感情とかにばかり動かされてるよな、社会とかそれ以外の他人とか、ということでBLに更に変更。
適宜変えます(笑)。
初稿は25年近く昔のものです。
性描写がある章には※つきで。
簡単な水増しほど簡単にはいかないモノは無い
蓮實長治
SF
地獄への道は、善意や悪意で舗装されているのでは無い。
安易な選択をする事こそが地獄への道に足を踏み入れる事なのだ。
「なろう」「カクヨム」「アルファポリス」「pixiv」「Novel Days」「ノベリズム」「GALLERIA」「ノベルアップ+」に同じモノを投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる