532 / 1,035
第三章 第三節 進撃の魔法少女
第531話 これでひとまず目の前の危機は去った
しおりを挟む
草薙のエア・バイクは時速300キロの猛スピードで、魔法少女の横をすり抜けていた。
うしろを振り返る隙などない。すぐにブライトたちの乗る車の後部カメラ映像を網膜に呼び出す。
魔法少女の頭のから生えていた三本の脚が、刎ね飛ばされてなくなっていた。それだけではない。腹を叩き切られて下半身もちぎれかかっているのもわかった。
その下半身はほんの数秒風圧に耐えていたが、すぐに千切れて、頭に生えていた脚を追いかけるように落ちていった。
だが上半身は左手一本でなんとか車にしがみついている。
草薙はすぐさまバイクを反転させると、ふたたびすれ違いざまに剣を振るった。左腕を斬り落すと、返す刀で背中の羽根を削り取った。掴む腕と飛ぶための羽根をうしなった魔法少女は、なんの抵抗もできずそのまま飛ばされていった。
必死で羽根を動かす、ビリビリという悪あがきの音が一瞬だけ聞こえたが、それもすぐに聞こえなくなった。
これでひとまず目の前の危機は去った。
安堵のため息とともに草薙はバイクのスピードを緩めると、ハンドルを切ってブライトたちの乗るスカイ・モービルのほうへ戻ろうとした。
が、その草薙の目にその車の下方から何かのパーツがとれて、落ちていくのが映った。
草薙の喉に苦い唾と同時に、悔しさがこみあげた。
間に合ってなかった——。
------------------------------------------------------------
アイダ李子はスカイ・モービルの後部座席から、草薙が魔法少女を駆逐するのを、はらはらしながら見守っていた。だが、実際には淀みない手際で、危なげなく排除してくれた。
李子はどっとシートに沈み込んだ。
魔法少女が観光バスの屋根から、こちらへ飛び移るタイミングをうかがっているのがわかって、内蔵がぎゅっと縮こまるような緊張をしいられた。このまま内蔵が収縮して無くなってしまうのではないかと恐怖したときに、どこからか草薙が助けに現れてくれた。
「ブライトさん……。もう大丈夫……そうです」
安堵の息をおおきく吐き出しながら言うと、ブライトは咳払いをしてから答えた。
「えぇ。さすが、草薙大佐。いい仕事をしてくれました」
すこし喉に痰がからみついたような声。おそらく彼も緊張していたのだろう。
李子は網膜デバイス上にチカチカと瞬いているアラートに注意を移した。さきほどからずっといくつもの警告文が目の中で、のべつまくなしに点滅していた。
精神科医の見解として、それは無理からぬ話だった。あれほどの危機に見舞われたのだ。脳内物質は分泌しぱなし、内蔵は収縮しまくり、心臓は早鐘のごとく鼓動を打ちまくっていたのだから。
うしろを振り返る隙などない。すぐにブライトたちの乗る車の後部カメラ映像を網膜に呼び出す。
魔法少女の頭のから生えていた三本の脚が、刎ね飛ばされてなくなっていた。それだけではない。腹を叩き切られて下半身もちぎれかかっているのもわかった。
その下半身はほんの数秒風圧に耐えていたが、すぐに千切れて、頭に生えていた脚を追いかけるように落ちていった。
だが上半身は左手一本でなんとか車にしがみついている。
草薙はすぐさまバイクを反転させると、ふたたびすれ違いざまに剣を振るった。左腕を斬り落すと、返す刀で背中の羽根を削り取った。掴む腕と飛ぶための羽根をうしなった魔法少女は、なんの抵抗もできずそのまま飛ばされていった。
必死で羽根を動かす、ビリビリという悪あがきの音が一瞬だけ聞こえたが、それもすぐに聞こえなくなった。
これでひとまず目の前の危機は去った。
安堵のため息とともに草薙はバイクのスピードを緩めると、ハンドルを切ってブライトたちの乗るスカイ・モービルのほうへ戻ろうとした。
が、その草薙の目にその車の下方から何かのパーツがとれて、落ちていくのが映った。
草薙の喉に苦い唾と同時に、悔しさがこみあげた。
間に合ってなかった——。
------------------------------------------------------------
アイダ李子はスカイ・モービルの後部座席から、草薙が魔法少女を駆逐するのを、はらはらしながら見守っていた。だが、実際には淀みない手際で、危なげなく排除してくれた。
李子はどっとシートに沈み込んだ。
魔法少女が観光バスの屋根から、こちらへ飛び移るタイミングをうかがっているのがわかって、内蔵がぎゅっと縮こまるような緊張をしいられた。このまま内蔵が収縮して無くなってしまうのではないかと恐怖したときに、どこからか草薙が助けに現れてくれた。
「ブライトさん……。もう大丈夫……そうです」
安堵の息をおおきく吐き出しながら言うと、ブライトは咳払いをしてから答えた。
「えぇ。さすが、草薙大佐。いい仕事をしてくれました」
すこし喉に痰がからみついたような声。おそらく彼も緊張していたのだろう。
李子は網膜デバイス上にチカチカと瞬いているアラートに注意を移した。さきほどからずっといくつもの警告文が目の中で、のべつまくなしに点滅していた。
精神科医の見解として、それは無理からぬ話だった。あれほどの危機に見舞われたのだ。脳内物質は分泌しぱなし、内蔵は収縮しまくり、心臓は早鐘のごとく鼓動を打ちまくっていたのだから。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
第一次世界大戦はウィルスが終わらせた・しかし第三次世界大戦はウィルスを終らせる為に始められた・bai/AI
パラレル・タイム
SF
この作品は創造論を元に30年前に『あすかあきお』さんの
コミック本とジョンタイターを初めとするタイムトラベラーや
シュタインズゲートとGATE(ゲート) 自衛隊 彼の地にて・斯く戦えり
アングロ・サクソン計画に影響されています
当時発行されたあすかあきおさんの作品を引っ張り出して再読すると『中国』が経済大国・
強大な軍事力を持つ超大国化や中東で
核戦争が始まる事は私の作品に大きな影響を与えましたが・一つだけ忘れていたのが
全世界に伝染病が蔓延して多くの方が無くなる部分を忘れていました
本編は反物質宇宙でアベが艦長を務める古代文明の戦闘艦アルディーンが
戦うだけでなく反物質人類の未来を切り開く話を再開しました
この話では主人公のアベが22世紀から21世紀にタイムトラベルした時に
分岐したパラレルワールドの話を『小説家になろう』で
『青い空とひまわりの花が咲く大地に生まれて』のタイトルで発表する準備に入っています
2023年2月24日第三話が書き上がり順次発表する予定です
話は2019年にウィルス2019が発生した
今の我々の世界に非常に近い世界です
物語は第四次世界大戦前夜の2038年からスタートします
全校転移!異能で異世界を巡る!?
小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。
目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。
周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。
取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。
「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」
取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。
そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。
NPCが俺の嫁~リアルに連れ帰る為に攻略す~
ゆる弥
SF
親友に誘われたVRMMOゲーム現天獄《げんてんごく》というゲームの中で俺は運命の人を見つける。
それは現地人(NPC)だった。
その子にいい所を見せるべく活躍し、そして最終目標はゲームクリアの報酬による願い事をなんでも一つ叶えてくれるというもの。
「人が作ったVR空間のNPCと結婚なんて出来るわけねーだろ!?」
「誰が不可能だと決めたんだ!? 俺はネムさんと結婚すると決めた!」
こんなヤバいやつの話。
GHOST GIRL.hack(ゴーストガールドットハック)
東郷 零士
SF
「あれ?私死んでるんですけど」
殉職した婦人警官「山本美鈴」は、とある科学の研究プロジェクトで「実験体」としてあの世から無理矢理呼び戻されてしまう、
奇想天外SFコミカルストーリー。
強力な相棒を手に入れプロジェクトから脱走を試みる美鈴。
そして自分を殺した犯人を自分で追い詰める。
シグマの日常
Glace on!!!
SF
博士に助けられ、瀕死の事故から生還した志津馬は、「シグマ」というね――人型ロボットに意識を移し、サイボーグとなる。
彼は博士の頼みで、世界を救うためにある少女を助けることになる。
志津馬はタイムトラベルを用い、その少女を助けるべく奔走する。
彼女と出会い、幾人かの人や生命と出逢い、平和で退屈な、されど掛け替えのない日常を過ごしていく志津馬。
その果てに出合うのは、彼女の真相――そして志津馬自身の真相。
彼女の正体とは。
志津馬の正体とは。
なぜ志津馬が助けられたのか。
なぜ志津馬はサイボーグに意識を移さなければならなかったのか。
博士の正体とは。
これは、世界救済と少女救出の一端――試行錯誤の半永久ループの中のたった一回…………それを著したものである。
――そして、そんなシリアスの王道を無視した…………日常系仄々〈ほのぼの〉スラップスティッキーコメディ、かも? ですっ☆
ご注文はサイボーグですか?
はい! どうぞお召し上がり下さい☆ (笑顔で捻じ込む)
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
簡単な水増しほど簡単にはいかないモノは無い
蓮實長治
SF
地獄への道は、善意や悪意で舗装されているのでは無い。
安易な選択をする事こそが地獄への道に足を踏み入れる事なのだ。
「なろう」「カクヨム」「アルファポリス」「pixiv」「Novel Days」「ノベリズム」「GALLERIA」「ノベルアップ+」に同じモノを投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる