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第三章 第三節 進撃の魔法少女

第523話 一群の魔法少女がバットーたちを襲う

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 目のない魔法少女が一群だとわかっても、草薙はこの状況をどう打開すべきかわからずにいた。一群に通用する兵器はここにはなく、多方向からの同時攻撃もかなわない。ただいたずらに銃撃して、威嚇いかくにもならない攻撃をするしかなかった。
 バットーとトグロ、イシカワたちにとって、それが精いっぱいの抵抗だった。
 もちろん一発も着弾することができなかったが、一斉射撃に警戒をつよめたのか、魔法少女は車の上を通り過ぎていった。目のない魔法少女は襲ってこなかった。

「逃げちまったぞ」
 イシカワがおもわず声を荒げたが、すぐさま草薙はそれを一喝した。
「様子見しているだけだ。すぐ戻ってくるぞ!」
 あまりの剣幕に細目の兵士はひとりだけ、あわてて銃を構え直した。

『この状況では難しいか……』
 どんなに気を引き締めて立ち向かっても、車に乗ったままの状態である限り、おなじ方向からの攻撃しかできない。
 草薙はこれを打開するためのソリューションは、たったひとつしか思い浮かばなかった。
「バトー、あの魔法少女に飛びかかれるか」
「ああ……。そうくると思ってましたよ」
「すまんな。おそらくそれしか方法を思いつかん」
「なあに、ひとつでも思いつきゃあ上等でさぁ」
 そう言うなりバットーはドアを大きく開いて体を外に乗りだした。車の上のフレームに手をかけると、なかにいるトグロとイシカワにむかって言った。
「っていうわけだ。大佐の命令なんでオレは魔法少女を空中でとっつかまえる。援護を頼むぜ」
「バットー、あんたを撃ち抜いてもかまわんかね」
 イシカワがこともなげに言った。隣の細目の兵士が目をまるくしている。
「あぁ、イシカワさん。構わねえよ。オレのこのからだは『素体』だ。撃たれたところで痛かぁねぇし、死にやぁしねぇ。オレのこのからだがバラされる前に、倒しきれなかったねんてことないようにしてくれよ」
「もしうまくいかなかったら?」
「そんときゃ、とっとと逃げろや。オレなんかにゃあ、かまわずな」
「わかった」
 イシカワの決意のこもったことばを聞くなり、バットーは車の屋根の上に自分の体をひきあげた。
 草薙は共有しているバットーの視界のほうをメインに切り替えた。バットーが車のルーフのへりに手をかけたまま、あたりを見回した。
 魔法少女はすぐに見つかった。
 車の後方から猛スピードで、こちらへむかってこようとしていた。

「後方だ。援護射撃を!」
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