523 / 1,035
第三章 第三節 進撃の魔法少女
第522話 なすすべもない自分たちに腹をたてる暇すらない
しおりを挟む
「ブライト!。魔法少女が!」
おもわず李子は叫んでいた。
「えぇ、わかってます!」
ブライトは魔法少女の存在に気づいていた。悔しさいっぱいに歯がみする。
「だがここでは逃げようがない!」
と、今度はワンボックスカーが左側に傾いた。突然の車体の揺れに振られて、なかにいる三人が投げ出されるように倒れた。と同時に、タイヤがぽろぽろと外れ、そのまま下へ落ちていった。当然のように車軸がとれて落下していく。
車の上部では車体がへこみはじめた。音は聞こえるはずもなかったが、ベコベコとカバーがへこみ、ルーフがまるごとはずれて空に舞いあがる。
ルーフにしがみついていた魔法少女は、飛んでいくルーフごと彼方へ飛ばされていった。
突然、ルーフごと車の外装が一気に引き剥がされて、なかにいた人々が丸見えになったが、それも一瞬だった。正面から襲ってきた風圧に、男女ふたりがあっと言う間に吹き飛ばされた。ヒスパニック系の女性はとっさにシャーシにしがみつき、飛んでいくふたりに手を伸ばしたが、間に合わない。
ふたりの男女のあられもない裸身が空中に踊る。
女性は呆然として、落ちて行くふたりを見送っていたが、車の土台部分の金具がバラリとわかれると、その隙間からあっけなく下へ落下していった。
李子は音をたてて息をのんだ。
あまりにも目まぐるしい展開にも、なすすべもない自分たちに腹をたてる暇すらない。
ワンボックスカーはすでに李子たちの車を追い抜いて、先を走っていた。
運転席で運転手がなにか喚いているのが見えた。
背後にいた仲間が突然消えてしまい、運転手はどうしていいかわからず、いくぶんパニックになっている。が、エンジン部分から煙と同時に噴き上がった炎に包まれた。
男は熱さにもがき苦しんで、運転席から降りようとしたが、ドアを開けたと同時に爆発がおき、車ごと吹き飛んだ。
運転手が火だるまのまま、車のおおかたのパーツとともに落下していく。
車のステップ部分のフレームだけが、電磁誘導パルスに乗っかって猛スピードでさきに進んでいった。
「とりあえず、当面の危機は脱したようです」
ブライトがあきらかにほっとした口調で、李子に声をかけた。李子は名も知らぬとはいえ、男女四人が犠牲になるのを目の当たりにしてショックを受けていたが、できるだけそう思われないよう事務的に返事をした。
「えぇ。そうですね。あぶないところでしたけど、なんとか……」
そこまで言ったところで、李子の声は喉にひっかかって行き場をうしなった。
李子の視点に『スーパー・スカウェイ・レーン』を走ってくる後続車の姿が見えていた。
大型の観光バス——。
その屋根の上にふたたびあの魔法少女が取り憑いていた。
おもわず李子は叫んでいた。
「えぇ、わかってます!」
ブライトは魔法少女の存在に気づいていた。悔しさいっぱいに歯がみする。
「だがここでは逃げようがない!」
と、今度はワンボックスカーが左側に傾いた。突然の車体の揺れに振られて、なかにいる三人が投げ出されるように倒れた。と同時に、タイヤがぽろぽろと外れ、そのまま下へ落ちていった。当然のように車軸がとれて落下していく。
車の上部では車体がへこみはじめた。音は聞こえるはずもなかったが、ベコベコとカバーがへこみ、ルーフがまるごとはずれて空に舞いあがる。
ルーフにしがみついていた魔法少女は、飛んでいくルーフごと彼方へ飛ばされていった。
突然、ルーフごと車の外装が一気に引き剥がされて、なかにいた人々が丸見えになったが、それも一瞬だった。正面から襲ってきた風圧に、男女ふたりがあっと言う間に吹き飛ばされた。ヒスパニック系の女性はとっさにシャーシにしがみつき、飛んでいくふたりに手を伸ばしたが、間に合わない。
ふたりの男女のあられもない裸身が空中に踊る。
女性は呆然として、落ちて行くふたりを見送っていたが、車の土台部分の金具がバラリとわかれると、その隙間からあっけなく下へ落下していった。
李子は音をたてて息をのんだ。
あまりにも目まぐるしい展開にも、なすすべもない自分たちに腹をたてる暇すらない。
ワンボックスカーはすでに李子たちの車を追い抜いて、先を走っていた。
運転席で運転手がなにか喚いているのが見えた。
背後にいた仲間が突然消えてしまい、運転手はどうしていいかわからず、いくぶんパニックになっている。が、エンジン部分から煙と同時に噴き上がった炎に包まれた。
男は熱さにもがき苦しんで、運転席から降りようとしたが、ドアを開けたと同時に爆発がおき、車ごと吹き飛んだ。
運転手が火だるまのまま、車のおおかたのパーツとともに落下していく。
車のステップ部分のフレームだけが、電磁誘導パルスに乗っかって猛スピードでさきに進んでいった。
「とりあえず、当面の危機は脱したようです」
ブライトがあきらかにほっとした口調で、李子に声をかけた。李子は名も知らぬとはいえ、男女四人が犠牲になるのを目の当たりにしてショックを受けていたが、できるだけそう思われないよう事務的に返事をした。
「えぇ。そうですね。あぶないところでしたけど、なんとか……」
そこまで言ったところで、李子の声は喉にひっかかって行き場をうしなった。
李子の視点に『スーパー・スカウェイ・レーン』を走ってくる後続車の姿が見えていた。
大型の観光バス——。
その屋根の上にふたたびあの魔法少女が取り憑いていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
26
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる