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第三章 第三節 進撃の魔法少女

第517話 なぜ一群がでてきたの?

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 ミサトはふたりの顔を見た。ふたりとも真摯しんしな目でこちらを見ていた。
「いえ。よしとくわぁ。どうせ間に合わないし、うかつに動くと別のトラップにでもひっかかりそうだしね……」
「そうしてちょうだい、ミサト」
 春日リンがすこしばかり力のない声で言った。
「今、草薙大佐が現場で指揮をしてるっていうから、彼女に任せるしかないわ」
「一群は予想外だったかもしれないけど、草薙さんはこの事態を予想して、対策していたんだ。ここはそれにゆだねるしかないと思う」
 ヤマトがやけに落ち着いた口調で説明した。おそらく先ほどまで、春日リンをおなじような理由で説得していたのだろうと、ミサトは感じ取った。

 考えてみれば自分はブライトと、以前つきあっていただけで、今はむしろ仕事上のライバル関係でしかない。その身を案ずる権利はあるが、現在ステディな関係のリン以上に気をもむ理由もない。
 そう思い直すと自分がなぜこんなにも取り乱したのかがわからない。
「そうね。今、ここでわたしたちがなにを言ったところで、仕方がないわね」
 司令室内に張りつめていた緊張感がすこしやわらいだ気がした。

「なぜ一群がでてきたの?」
 どなりあいが途切れたタイミングを見計らったように、レイがぼそりと聞いてきた。
「以前、魔法少女の出現が世界中で観測されたとき、なぜか日本だけ現れなかった。世界中が赤い点でおおわれたのに、日本にはその点が打たれなかった。そうでしょ、エド」
「あ、あぁ、そ、そうだったね。でもほんのすこしの間だけだったよ」
「でもあまりに不自然だった」
「レイ、なにが言いたいの?」
 ミサトはあいかわらず的を射ないレイのことばに苛ついた。
 この子の会話はいつだって疑問形と断定のどちらかしかない。しかも結論を先に言わない。いやそれどころか、そこに至る過程を重要視して結論にこだわらない。
 だが、この子が優秀なのは証明済だし、かわされる会話のすべてに考察をまじえているのも知っている。
 まったく面倒くさい人種——。

「ミサト。この日本だけ魔法少女の存在が示されなかったのに、現れたらほかでは報告されていない一群がまじっている。これはたんなる偶然や特異例で片づけてはいけないような気がするの」
 ミサトはレイに丁寧に説明されて、返って面倒臭くなったと感じた。すぐさまエドのほうに視線をくれると、同意を求めた。

「エド、あなたもそう思う?」
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