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第三章 第三節 進撃の魔法少女

第510話 大佐、残りの連中はこっちにきてるぜ

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 どこにもいない——?。

「トグロ、魔法少女は31体という報告だったな」
「あ、はい。11体倒しましたので、あと20体かと」

『大佐、残りの連中はこっちにきてるぜ』
 ふいにふたりの会話に、バットーが割って入ってきた。
『バトー、どういうことだ?』
『ちょいとね。やばくなってきてる。今、シャッターがぎしぎしきしみはじめてね。そろそろ分解しそうさね』
『わかった。いますぐむかう』

『急いでくんねぇかな』
 そう言って、バットーは自分の視覚データを無理やり、草薙の網膜に投影してきた。そこにはガレージに並ぶ2台のスカイモービルが映っていた。が、ガレージのシャッターのすぐ前にある一台の後部座席にひとが乗っているのがわかった。

『なんど説得してもきいてくれねぇんでさぁ。ブライトさん、シャッターが壊れると同時に出て行くって……』

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 ブライトはスカイ・モービルの後部シートの足元部分に身を沈み込ませて、その瞬間を待っていた。自分の目と鼻の先にはおなじようにして、アイダ・李子も身を縮こまらせている。すこし震えているように見えたが、今はそれをいたわっている余裕がなかった。
 ガレージが破壊され、魔法少女たちが中にはいってきた瞬間に、車で一気に飛びあがれるよう神経を集中していたかった。
 まずこの位置なら車内を覗きこまれない限り見つかることはない。運転はすでに車載AIに指示をしてある。そして素体に憑依ひょういしたバットーが、武装してスタンバイしている。

 アイダ・李子の手を曳いてガレージまでやってきたとき、なかから騒々しい物音がしたときは、すでに魔法少女の手がまわっていると覚悟した。なかにいるのが警護部のバットーだとわかってホッとしたが、同時に今回の脱出作戦を発案する契機にもなった。
 
 ブライトが脳内通信『テレパス・ライン』でバットーに再確認をした。
『バットー君。スタンバイは大丈夫だろうか。ヤツラが入ってきたら、その機関銃を……』
『わかってますって。乱射してこちらに魔法少女たちの注意をひきつけろ、でしょう』
『あぁ、すまんね。頼むよ』

『ですがね、一条中将。もう一度考え直してもらえませんかね。もうすぐここに草薙隊長も来ますんで……』
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