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第三章 第三節 進撃の魔法少女
第508話 心臓の破壊に成功しました
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トグロは銃を身構えた。
が、立ちあがってきた魔法少女の様子がすこしおかしいことに気づいた。魔法少女のからだの表面が粉でもふいたように白ばんでいる。しかもその白い粉は光を反射して煌めいてみえる。
凍ってる?。
と、思った瞬間、ボンとくぐもった爆発音がして、魔法少女の胸の筋肉がぐっと一気に持ち上がった。と同時に表面の白い粉がばらばらとはがれ落ちる。
ぐらりとからだを捻って、魔法少女はその場に崩れ落ちた。
『心臓の破壊に成功しました』
サイトーが思念で報告をよこしてきた。
「今のは?」
トグロが尋ねるとサイトーは晴れやかな顔をして口をひらいた。
「微遅効性の爆発弾です。心臓を狙った弾丸は着弾すると、一部がからだの表面でとまって周辺部を一気に凍らせるんです。そして数秒後、指向性の爆弾が内側にむけて炸裂する。これなら周辺に被害を及ぼさずに……」
トグロはサイトーの説明を手で制した。
開いたままの窓から次の一体がはいりこもうとしていた。
「サイトー。その地味なヤツ、もう一発ぶっこんでくれ」
サイトーは促されるまま、窓枠にとりついた魔法少女に照準をあわせた。
が、そのとき、一番奥側の窓のほうで、カチッと音が聞こえたかと思うと、魔法少女が飛び込んできた。中央の窓から侵入してくる魔法少女に集中していた兵士たちは、その奇襲に対応できなかった。
二体による陽動作戦——。
一瞬行動が遅れ、一番端で銃を身構えていた女性兵士があっという間につかまった。
彼女は頭をつかみあげられて、天井のほうに持ちあげられた。
「隊長!」
彼女の叫び声が室内に響く。トグロはすぐさまそちらに照準をむけた。
魔法少女は5メートルある天井すれすれに浮かんでいた。そこからぶら下がった女性兵士はなんとか逃れようと、中空を蹴飛ばしてもがいている。だが彼女の頭を押さえつける魔法少女の四本の手は、容易にそうさせてくれない。
その魔法少女は腕のつけ根から二本づつ腕がはえていた。屈強な黒人の腕とか細く短い腕。よく見ると短いほうの腕は、上腕部が不自然にとりついているだけだった。
顔はみえなかった。からだは正面をこちら側にむけているのに、頭だけが後頭部をこちらにむけていたからだ。
「助けて!」
女性兵士が叫んだ。彼女は目から大粒の涙を流して訴えかけていた。
だが、彼女のからだは、こちら側に背中をむけていた。
トグロはギリッと奥歯を噛みしめた。
女性兵士のからだはゆっくりと回っていた。
四本の手につかまれた頭はこちらをむけたまま、からだだけが回っていく。
涙をあふれさせた目が、じっとこちらを見つめ続けていたが、トグロにはどうすることもできなかった。おもわずぎゅっと目を閉じた。
「何をしている!。魔法少女もろとも射殺しろ!」
そのとき廊下側のドアがひらいて、草薙が飛び込んできた。
が、立ちあがってきた魔法少女の様子がすこしおかしいことに気づいた。魔法少女のからだの表面が粉でもふいたように白ばんでいる。しかもその白い粉は光を反射して煌めいてみえる。
凍ってる?。
と、思った瞬間、ボンとくぐもった爆発音がして、魔法少女の胸の筋肉がぐっと一気に持ち上がった。と同時に表面の白い粉がばらばらとはがれ落ちる。
ぐらりとからだを捻って、魔法少女はその場に崩れ落ちた。
『心臓の破壊に成功しました』
サイトーが思念で報告をよこしてきた。
「今のは?」
トグロが尋ねるとサイトーは晴れやかな顔をして口をひらいた。
「微遅効性の爆発弾です。心臓を狙った弾丸は着弾すると、一部がからだの表面でとまって周辺部を一気に凍らせるんです。そして数秒後、指向性の爆弾が内側にむけて炸裂する。これなら周辺に被害を及ぼさずに……」
トグロはサイトーの説明を手で制した。
開いたままの窓から次の一体がはいりこもうとしていた。
「サイトー。その地味なヤツ、もう一発ぶっこんでくれ」
サイトーは促されるまま、窓枠にとりついた魔法少女に照準をあわせた。
が、そのとき、一番奥側の窓のほうで、カチッと音が聞こえたかと思うと、魔法少女が飛び込んできた。中央の窓から侵入してくる魔法少女に集中していた兵士たちは、その奇襲に対応できなかった。
二体による陽動作戦——。
一瞬行動が遅れ、一番端で銃を身構えていた女性兵士があっという間につかまった。
彼女は頭をつかみあげられて、天井のほうに持ちあげられた。
「隊長!」
彼女の叫び声が室内に響く。トグロはすぐさまそちらに照準をむけた。
魔法少女は5メートルある天井すれすれに浮かんでいた。そこからぶら下がった女性兵士はなんとか逃れようと、中空を蹴飛ばしてもがいている。だが彼女の頭を押さえつける魔法少女の四本の手は、容易にそうさせてくれない。
その魔法少女は腕のつけ根から二本づつ腕がはえていた。屈強な黒人の腕とか細く短い腕。よく見ると短いほうの腕は、上腕部が不自然にとりついているだけだった。
顔はみえなかった。からだは正面をこちら側にむけているのに、頭だけが後頭部をこちらにむけていたからだ。
「助けて!」
女性兵士が叫んだ。彼女は目から大粒の涙を流して訴えかけていた。
だが、彼女のからだは、こちら側に背中をむけていた。
トグロはギリッと奥歯を噛みしめた。
女性兵士のからだはゆっくりと回っていた。
四本の手につかまれた頭はこちらをむけたまま、からだだけが回っていく。
涙をあふれさせた目が、じっとこちらを見つめ続けていたが、トグロにはどうすることもできなかった。おもわずぎゅっと目を閉じた。
「何をしている!。魔法少女もろとも射殺しろ!」
そのとき廊下側のドアがひらいて、草薙が飛び込んできた。
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