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第三章 第三節 進撃の魔法少女

第496話 ぼくは誰ともつがわない

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 ぼくはいつのまにか父さんのことばを制していた。

 かなり気負っていたらしく、自分でもおどろくほど大声をだしていたらしい。
 まるで高らかに宣言しているかのような、だれかれ構わず喧嘩けんかを売っているかのようなぼくのことばに、そこにいる全員が反応した。
 一人残らずだ——。まちがいない。
 それまでラウンジのそこかしこで語らいあっていた人々の声がピタリととまった。だれもが驚いた表情でぼくへ目をむけている。
 ぼくはその視線をひとつひとつめ付けるようにして、あたりを見回した。みな、ぼくがなにかまちがえたことを言ったか、つい口をすべらせたと思っているように感じられた。
 ぼくはこんどは静かに、ゆっくりと噛んでふくめるように言った。

「ぼくは誰ともつがわない」

「どういうことだ」
 父さんの口調はとても冷たく厳しいものだった。先ほどまでの上気したような顔はすでにない。それでもいつものように激高しなかったし、手をだすこともなかった。衆人のなか、訓練中でもないのに、そんな態度をとるわけにはいかない、という父さんなりの線引きがあるのだろう。
「ことばのとおりさ、父さん。ぼくは次の世代には……、自分の子供にはこの戦いをひき継がせない」
「タケル、おまえ、自分の言っていることがわかっているのか?」
「もちろん、わかってるさ」
 次の瞬間、父さんがぼくに殴りかかってくると感じた。ここがどんな場であろうと、だれが見ていようと、正すべきものは正す、という大義名分をぼくがあたえたからだ。
 ぼくはどこからどう殴られてもいいように身構えた。
 だけど父さんはこぶしこそ握りしめたものの、身動きしようとしなかった。そのかわりにひと言だけを、歯の隙間から絞り出した。
「なぜだ?」

 ぼくは室内を見渡した。
 ブライトは唖然とした様子でこちらを見ていた。事態が完全には飲み込めていない様子だ。アルとエドは顔をいくぶん莟ざめさせてこちらを見ていた。テツゴおじさんの表情は読み取れなかった。だけどその視線は悲しいとも怒っているともとれた。
 十三は作業の手をとめたままこちらを見ていた。心配そうな目をしていた。そしてその十三に抱え上げられようとしていたアヤトは、だらしなく床に座りこんでいた。だけど、目だけは「謝れ」と強く訴えていた。ぼくにはそう見えた。床に膝をついてアヤトを介抱していたしょうとさんは、無言のままただぼくを見つめていた。たぶん混乱しているにちがいない。
 そして、アイは……。

 エンマ・アイは泣いていた。
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