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第三章 第三節 進撃の魔法少女

第494話 ふたりはどうやって『共命率』を高めあったの?

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「そんなこと言わないの!」

 そう言ってしょうとさんはアヤトの頭をかるくひっぱたいた。
「ほんと、デリカシーがないわね」
 アイがアヤトの顔を覗き込むようにして言った。
「大人同士の秘め事は脳内通信かなにかで、こっちに聞こえないようにしてよね。今日はあたしたちが主役なんだから」
 真正面から睨みつけられたアヤトは、アイにむかって「リョーカイ」と囁いてから、ばつが悪そうにグラスをあおった。

「で、その思春期まっただなかのおふたりは、どんなふうにして『共命率』を高めあったのかしら?」
 リンさんが目をすがめるようにして訊いてきた。あきらかにすこし意地悪な意味を含んでいる。だけどアイはそれをそのまま受け取って即答した。
「リン、あたしたち『共命率』を高めあうような努力はしてないわ。なんかいつの間にか自然とわかるようになったの」
「あら、そんな都合のいい話あるの?」
「だって、あたしたちつきあってるのよ。愛よ、愛の力!」
 アイがあっけらかんとそうカミングアウトしたので、ぼくは口にふくんでいた飲み物をあやうく吹きだしそうになった。
「ちょ、ちょっと、アイ、なに勝手なこと言いだすんだい」
「あら、だってそうでしょ。あたしはあなたのことが大好きだし、タケル、あなたもあたしのこと憎からずおもってるンだから」
「憎からずって……。それって『好き』とおなじ意味じゃないだろ」
 ぼくはアイを傷つけないように、精いっぱいの抵抗を試みた。だけど、アヤトはおもしろがって、ぼくを煽ってきた。
「そうなのか、タケル、おまえやっことさ……、腹うぉくぐったか」
 ずいぶん酔いがまわっているのか、呂律ろれつが怪しくなってきている。ぼくはアヤトに余計なことを言わないでくれ、と迷惑そうな目をむけたが、すでに首を前にのめらせてアヤトは沈没寸前だった。隣で肩を抱いていたしょうとさんが、目でごめんなさいと詫びてきた。
「まぁ、愛の力であれだけの連携ができるかね。たいしたものだ」
 そう、ツルゴおじさんが言ってきたかと思うと、おもむろに掲げたグラスを傾けた。
「では、愛に乾杯!」
 勝手気ままに祝杯をあげたが、それに釣られるようにして、無言のままアルとエドがグラスを上に掲げてみせた。するとそれにリンまでが便乗してきた。
「そうね。アイ、あなたの言うその『愛の力』であれだけ活躍してもらえるなら、デミリアンの責任者として、わたしは大歓迎よ」
「任せておいて、リン。あたしとタケルはもう一身同体みたいなものなの。このふたりだったらいつだって一体化できるわ。体も心もね」

「ちょっとぉ、アイ。一体化するのはこころだけにしてよ。いくら思春期だからって、からだのほうはもうすこし待ってちょうだい」
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