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第三章 第三節 進撃の魔法少女
第491話 はじめてマンゲツで戦った日
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その日のことはどういうわけか、いつも父さんの笑顔とともに思いだす。
めったに笑った顔を見せない父さんが、大口をあけてこころの底から大笑いしていた。酒がはいっていたせいもあるだろう。だけどその日は父さんはめずらしく機嫌がよかった。
ぼくはその日、主力機である『マンゲツ』に初めて搭乗して戦った。数ヶ月前に隊長だった父さんに譲りうけて、はじめての戦いだった。そしてぼくとアイのふたりだけで亜獣を駆逐したはじめての戦いでもあった。
もちろん、実際には父さんやアヤト、テツゴおじさんが、うしろでスタンバイしていて、万が一のときにはいつでも手助けできるようにしてくれてはいた。だけど、ぼくとアイはそんな心配などまるで杞憂であったように、鮮やかな勝利をもぎとった。それは自分たちでもおどろくほど、効率的で無駄がなく、まったく危なげのない勝ち方だった。
父さんはその戦いっぷりがよほど嬉しかったようで、今回の戦いの責任者たちをパイロット・ルームのラウンジに招いて、ささやかなパーティーを開いてくれた。それはまったくもって突然の計画だったが、執事の沖田十三は見事にそんな無茶でもしっかりと応えてくれた。
食事の一部はケータリングを利用したけど、十三が晴れの席に相応しいアレンジを加え、ゴージャスな雰囲気を演出してくれたし、とっておきのお酒やデザートもふんだんに振る舞ってくれた。パイロット・ルームのラウンジに何十人もひとが集まったのははじめてだったし、こんなに華やいだのもはじめてだった。
ふだんはただ通り抜けるだけの静かな空間が、ひとびとのおしゃべりで満たされているのをみるのは、なんとも新鮮な感覚だった。
「とどめを刺したのはあたし。見事だったでしょう」
アイが胸を張って言った。
「ええ、そうね。あれはお見事だったわ、アイ。それとタケルくんも」
春日リンがお手上げといわんばかりに、ちいさく万歳をしながら言うと、舎利弗小人も口元にグラスを運びながら「毎回、あの調子なら、わたしたち失業しちゃうわ」と茶目っ気たっぷりに賛辞を付け足した。
「まったくだ。あれでは司令官すら不要に思えてくるよ」
ブライト司令官がリンへワイングラスを渡しながら言った。ブライトは実に満足そうな笑みを浮かべていた。さらに父さんのほうにむかって、謝意を伝えはじめた。
「ヤマト隊長。今回、あなたのご子息タケルくんが、独り立ちして大勝利をおさめたことを心から祝わせてください。司令官としてこれほど頼もしいことはありません」
「ブライト司令、褒めていただくのはありがたいが、タケルが本領を発揮するのはこれからです。これからタケルは今までの歴代パイロットができなかった偉業を達すると、わたしは信じています」
「なんと頼もしい。着任してそれほど経っていないというのに、わたしは予想外なほどおおくの亜獣退治に立ちあう機会に恵まれた。このまま108体目の……、最後の亜獣の断末魔を見届けられたら、と夢想してしまいます」
「いや、このヤマト・タケルがかならず、その夢を実現してくれるでしょう」
父さんはぼくの頭に手をやり、髪の毛をくしゃくしゃとなで回しながらそう言った。父さんに触られるときは、殴られるときと決まっていたので、その仕草にぼくは戸惑った。
めったに笑った顔を見せない父さんが、大口をあけてこころの底から大笑いしていた。酒がはいっていたせいもあるだろう。だけどその日は父さんはめずらしく機嫌がよかった。
ぼくはその日、主力機である『マンゲツ』に初めて搭乗して戦った。数ヶ月前に隊長だった父さんに譲りうけて、はじめての戦いだった。そしてぼくとアイのふたりだけで亜獣を駆逐したはじめての戦いでもあった。
もちろん、実際には父さんやアヤト、テツゴおじさんが、うしろでスタンバイしていて、万が一のときにはいつでも手助けできるようにしてくれてはいた。だけど、ぼくとアイはそんな心配などまるで杞憂であったように、鮮やかな勝利をもぎとった。それは自分たちでもおどろくほど、効率的で無駄がなく、まったく危なげのない勝ち方だった。
父さんはその戦いっぷりがよほど嬉しかったようで、今回の戦いの責任者たちをパイロット・ルームのラウンジに招いて、ささやかなパーティーを開いてくれた。それはまったくもって突然の計画だったが、執事の沖田十三は見事にそんな無茶でもしっかりと応えてくれた。
食事の一部はケータリングを利用したけど、十三が晴れの席に相応しいアレンジを加え、ゴージャスな雰囲気を演出してくれたし、とっておきのお酒やデザートもふんだんに振る舞ってくれた。パイロット・ルームのラウンジに何十人もひとが集まったのははじめてだったし、こんなに華やいだのもはじめてだった。
ふだんはただ通り抜けるだけの静かな空間が、ひとびとのおしゃべりで満たされているのをみるのは、なんとも新鮮な感覚だった。
「とどめを刺したのはあたし。見事だったでしょう」
アイが胸を張って言った。
「ええ、そうね。あれはお見事だったわ、アイ。それとタケルくんも」
春日リンがお手上げといわんばかりに、ちいさく万歳をしながら言うと、舎利弗小人も口元にグラスを運びながら「毎回、あの調子なら、わたしたち失業しちゃうわ」と茶目っ気たっぷりに賛辞を付け足した。
「まったくだ。あれでは司令官すら不要に思えてくるよ」
ブライト司令官がリンへワイングラスを渡しながら言った。ブライトは実に満足そうな笑みを浮かべていた。さらに父さんのほうにむかって、謝意を伝えはじめた。
「ヤマト隊長。今回、あなたのご子息タケルくんが、独り立ちして大勝利をおさめたことを心から祝わせてください。司令官としてこれほど頼もしいことはありません」
「ブライト司令、褒めていただくのはありがたいが、タケルが本領を発揮するのはこれからです。これからタケルは今までの歴代パイロットができなかった偉業を達すると、わたしは信じています」
「なんと頼もしい。着任してそれほど経っていないというのに、わたしは予想外なほどおおくの亜獣退治に立ちあう機会に恵まれた。このまま108体目の……、最後の亜獣の断末魔を見届けられたら、と夢想してしまいます」
「いや、このヤマト・タケルがかならず、その夢を実現してくれるでしょう」
父さんはぼくの頭に手をやり、髪の毛をくしゃくしゃとなで回しながらそう言った。父さんに触られるときは、殴られるときと決まっていたので、その仕草にぼくは戸惑った。
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