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第三章 第二節 魔法少女大戦

第468話 世界中から嫌われてるのに、命を懸けようなんて……

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「図星なんじゃないかい?」
 ヤマトはキーヘーを挑発した。
「だって、いままでのような殺傷能力の高さや、破壊力の強さでは勝てないから、パイロットを直接ターゲットにすることにしたんだろ」
「さぁ、それはどうだろうね。でもぼくらはまだ8体いるんだ。そのうちのどれかが、かならずキミを排除する……」
「まだじゃない!、あと8体だ!」
 ヤマトはキーヘーを一喝した。
「たったの8体だ。でもこちらのパイロットは今、五人もいる。これからもどんどん増やしていくだろう。万が一、ぼくがやられたとしても、人類はきみたちを全滅させるまで終わらせるつもりはない」
「残念だね。そうはならないよ。だってしょせん彼らは純血が不足している種族だろ?。とるに足らないさ」
 キーヘーはガラスの目玉をぱちくりとさせてから付け加えた。 
「それにキミはこの世界のさいごの頼みの綱だ。その精神的支柱がいなくなって、その後も今みたいな快進撃が続けられるとは思えないね。それだけ重要だから、キミを厄介払いしたいのさ、ぼくらはね」
 すると、それまでひとこともしゃべらなかった魔法少女が口を開いた。
「ほんとうに、あんたは厄介……」
 かぶっているお面のせいで、声がくぐもって聞こえる。

「この地球の100億人全員に嫌われてるのに、その人たちのために命懸けで戦おうっていうんだから……」

 ヤマトは一瞬だけモニタ越しに、司令室の草薙素子と春日リンに目をむけた。
 ふたりとも深刻な表情を浮かべていた。
 草薙はいままにないほど険しい表情で魔法少女の映像を睨みつけていたが、リンは心ここに在らずという目つきで、なかば放心しているように見えた。
 だが当然の反応だ——。
 ヤマトはおおきく息を吸うと、不退転の覚悟で誰何すいかした。

「きみは……、きみは誰だ!」

「あたしは魔法少女茆目・愛かやめ・まどか……。キミはとっくに知っていたと思うけど?」
「カヤメ・マドカ……?。ぼくは知らない、そんなひと」
「あら。じゃあ、漢字の読み方がちがったのかしら。だったら、こっちの読み方がただしいのよね」
 魔法少女は顔につけていた面をはずしながら言った。

茆目・愛えんま・あい

 そこに、エンマ・アイがいた。愛しい気持ちをかきたてずにいられない、ヤマトの大好きで、大好きで、大好きでたまらない人の笑顔があった。
 エンマ・アイがうれしそうに笑った。


「ひさしぶりね。タケル」
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