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第三章 第二節 魔法少女大戦

第452話 尻尾の一本くらい斬らないと示しがつかない

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「だから、アスカにその役目をやってもらうの。その代わり囮役はユウキひとりっていうわけ」
「レイ。いいわ。やってやるわよ」
 レイとヤマトとの意見対立に苛立ったのか、アスカが痺れをきらして声をあげた。
「レイ、あんたはあのイオージャの頬っぺたを赤く染めるくらいの傷を負わせたんだものね。あたしも尻尾のいっぽんくらいでも斬らないと示しがつかない」
 そう力強く宣誓すると、ユウキもそれに刺激されたのか、決意表明でもするように力強く言った。
「ああ、わたしもそれに乗らせてもらうよ。こちらは本物の亜獣とまだ一度も戦えてないのだ。そんな不名誉なパイロットはこれ以上ごめんこうむりたい」
「了解、わかった。慎重かつ大胆……」

「どーいうことよ!!」

 ヤマトはさらに注意を喚起しようとしたが、ミサトの裏返った悲鳴にさえぎられた。ただ事ではない声に、ヤマトはすぐさまミサトの視線の先にあるモニタに目をむけた。

 そこには地上軍が大量に攻撃をしかけた空間が映しだされいてた。
 まだすこし爆煙が漂っていたが、すでに攻整はやみ空がしだいに澄み渡りはじめていた。

 そこにあの集中砲火を免れて、残存する魔法少女の群れがあった。

「一体も……、一体もやられてません」
 ミライが解析されたデータの数字をみて、悲鳴のような声をあげた。

 一体も?——。
 ヤマトはその事実に大きく目を見開いた。
 あれだけの攻撃を受けながら、一体も損傷をうけてない?。まさか、この魔法少女は今までの種類とちがうのか?。いや、ありえない……。

「アスカ!。きみがつかんでいた魔法少女はどうなった!」
 おもわず叫んでいた。もしこの魔法少女が特別な存在なら、勝ち目はない……。

「もう見てなかったの?。とっくに潰したわよ。二体ともぐちゃぐちゃに。気持ちわるいったらなかったわよ!」
 そう悪態じみた報告をしながら、その時の記録映像をモニタ画面で再生してみせた。

 上空から降りてきたアスカは、地面に足がつくかつかないかのタイミングで、右手に握りしめた魔法少女を、後ろ手で(だが腕があべこべについているので順手で)、背後のビルに叩きつけて潰した。
『あー、やだぁ。気持ちわるぅぃぃ』
 おもわず漏れでたアスカの声が記録されている。
 だが、アスカはそう言いながらも、潰れて血塗れになった魔法少女を、ザラザラしたビルの壁に力をこめてこすりつけた。
 強烈な摩擦で魔法少女の頭の上半分が削りとられる。

 そのビルの壁には、血がのたくったような痕がペイントされいた。
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