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第三章 第二節 魔法少女大戦

第451話 待っているだけじゃあ。時間切れになる

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 もどかしい——。

 自分で決断したことではあったが、ヤマトには歯がゆい思いがこみあげてならなかった。
 亜獣を目の前にしながら、一戦交えることがないというのは、おそらく初めて実戦に参加したとき以来のことだった。あのときは亜獣の能力で獣人化された、豪華客船の船客や乗組員を排除するように、父から申し付けられ、ただ船を沈めることに集中して、亜獣に触ることもなく戦いは終わった。

 だがヤマトはその決断を後悔していたわけではなかった。
 そのまま戦場にむかっていたら、こころの準備ができずにいる自分は、ふいをつかれて感情を乱されていた可能性がないとは言いきれない。
 それこそが、敵の罠。
 草薙大佐があの映像の異変を事前に発見してくれてくれてなければ、どうなっただろうか、と思う。

 ヤマトは上空約1000メートル地点の『電磁誘導パルスレーン』上で待機したままで、戦況を見守っていた。アスカとユウキの動きを複数のモニタでトレースする。
 ふたりとも魔法少女の群れの中をなにごともなく突っ切って、地面に無事着地したのち、次の行動に移っていた。
 まずアスカとユウキはこの地域のメイン通りを挟む形で、両側にわかれた。ふたりともすぐに身を隠せるおおきなビルを見つけて、その陰に滑り込んでいる。

 イオージャまでは一キロメートルは離れているだろうか。まわりには前回と同じように魔法少女が取り巻いている。前回とちがうのはその数。おそらく前回の二倍、500体はくだらないのでないだろうか。
 おかげでその印象は、『うじゃうじゃ』という、存外に気持ちのわるいものになっている。
「アスカ、ユウキ、待っているだけじゃあ。時間切れになる。どうにかして近づけないか?」
 ヤマトは二人にむかって指示をだした。
「わかってるわよ。タケル。今からイオージャに近づくトコよ」
「しかし、どうやって近づけばいいのかね。タケルくん」
 ヤマトは上空からを見ながら思いついたルートを指示しようとした。
「アスカは右側におおきく迂回してイオージャの真横から……」
 が、その指示に割って入るようにレイが発言した。
「タケル。そんなんじゃ間に合わない。最初の計画通り、ユウキに真正面から囮になってもらって、そのあいだにアスカはビルの上を」
「レイ、それではイオージャや魔法少女の標的になる。危険だ」
「なにが危険なの?。そういうプランだったでしょ」

「あれは最後にぼくが上空からイオージャを狙うもので……」
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