452 / 1,035
第三章 第二節 魔法少女大戦
第451話 待っているだけじゃあ。時間切れになる
しおりを挟む
もどかしい——。
自分で決断したことではあったが、ヤマトには歯がゆい思いがこみあげてならなかった。
亜獣を目の前にしながら、一戦交えることがないというのは、おそらく初めて実戦に参加したとき以来のことだった。あのときは亜獣の能力で獣人化された、豪華客船の船客や乗組員を排除するように、父から申し付けられ、ただ船を沈めることに集中して、亜獣に触ることもなく戦いは終わった。
だがヤマトはその決断を後悔していたわけではなかった。
そのまま戦場にむかっていたら、こころの準備ができずにいる自分は、ふいをつかれて感情を乱されていた可能性がないとは言いきれない。
それこそが、敵の罠。
草薙大佐があの映像の異変を事前に発見してくれてくれてなければ、どうなっただろうか、と思う。
ヤマトは上空約1000メートル地点の『電磁誘導パルスレーン』上で待機したままで、戦況を見守っていた。アスカとユウキの動きを複数のモニタでトレースする。
ふたりとも魔法少女の群れの中をなにごともなく突っ切って、地面に無事着地したのち、次の行動に移っていた。
まずアスカとユウキはこの地域のメイン通りを挟む形で、両側にわかれた。ふたりともすぐに身を隠せるおおきなビルを見つけて、その陰に滑り込んでいる。
イオージャまでは一キロメートルは離れているだろうか。まわりには前回と同じように魔法少女が取り巻いている。前回とちがうのはその数。おそらく前回の二倍、500体はくだらないのでないだろうか。
おかげでその印象は、『うじゃうじゃ』という、存外に気持ちのわるいものになっている。
「アスカ、ユウキ、待っているだけじゃあ。時間切れになる。どうにかして近づけないか?」
ヤマトは二人にむかって指示をだした。
「わかってるわよ。タケル。今からイオージャに近づくトコよ」
「しかし、どうやって近づけばいいのかね。タケルくん」
ヤマトは上空からを見ながら思いついたルートを指示しようとした。
「アスカは右側におおきく迂回してイオージャの真横から……」
が、その指示に割って入るようにレイが発言した。
「タケル。そんなんじゃ間に合わない。最初の計画通り、ユウキに真正面から囮になってもらって、そのあいだにアスカはビルの上を」
「レイ、それではイオージャや魔法少女の標的になる。危険だ」
「なにが危険なの?。そういうプランだったでしょ」
「あれは最後にぼくが上空からイオージャを狙うもので……」
自分で決断したことではあったが、ヤマトには歯がゆい思いがこみあげてならなかった。
亜獣を目の前にしながら、一戦交えることがないというのは、おそらく初めて実戦に参加したとき以来のことだった。あのときは亜獣の能力で獣人化された、豪華客船の船客や乗組員を排除するように、父から申し付けられ、ただ船を沈めることに集中して、亜獣に触ることもなく戦いは終わった。
だがヤマトはその決断を後悔していたわけではなかった。
そのまま戦場にむかっていたら、こころの準備ができずにいる自分は、ふいをつかれて感情を乱されていた可能性がないとは言いきれない。
それこそが、敵の罠。
草薙大佐があの映像の異変を事前に発見してくれてくれてなければ、どうなっただろうか、と思う。
ヤマトは上空約1000メートル地点の『電磁誘導パルスレーン』上で待機したままで、戦況を見守っていた。アスカとユウキの動きを複数のモニタでトレースする。
ふたりとも魔法少女の群れの中をなにごともなく突っ切って、地面に無事着地したのち、次の行動に移っていた。
まずアスカとユウキはこの地域のメイン通りを挟む形で、両側にわかれた。ふたりともすぐに身を隠せるおおきなビルを見つけて、その陰に滑り込んでいる。
イオージャまでは一キロメートルは離れているだろうか。まわりには前回と同じように魔法少女が取り巻いている。前回とちがうのはその数。おそらく前回の二倍、500体はくだらないのでないだろうか。
おかげでその印象は、『うじゃうじゃ』という、存外に気持ちのわるいものになっている。
「アスカ、ユウキ、待っているだけじゃあ。時間切れになる。どうにかして近づけないか?」
ヤマトは二人にむかって指示をだした。
「わかってるわよ。タケル。今からイオージャに近づくトコよ」
「しかし、どうやって近づけばいいのかね。タケルくん」
ヤマトは上空からを見ながら思いついたルートを指示しようとした。
「アスカは右側におおきく迂回してイオージャの真横から……」
が、その指示に割って入るようにレイが発言した。
「タケル。そんなんじゃ間に合わない。最初の計画通り、ユウキに真正面から囮になってもらって、そのあいだにアスカはビルの上を」
「レイ、それではイオージャや魔法少女の標的になる。危険だ」
「なにが危険なの?。そういうプランだったでしょ」
「あれは最後にぼくが上空からイオージャを狙うもので……」
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
学習能力スキルを使ってチートスキルを覚える魔術の商人
一色
SF
『ゼロ・オンライン』VRMMOは12年を経てとうとうサービス終了を迎える。発売当初からのプレイヤーである主人公は最後のログインをしていた。謎の人物から学習能力レベルMAXスキル(一度スキル見たらそのスキルを取得できる)を貰い、なんと異世界に転移、赤ん坊に転生をしてしまう。そして、異世界で辛い幼少期を過ごし、有名魔術学院に通うことになった。だがしかし、危険な魔術を使い退学となり、王国を追放される。そして、ダンジョンと都市を行き来する生活が始まった。そこで、一匹のフェンリルに出会ったことをきっかけに、鬱屈していた心境が変わり、やがて、魔術の商人として活躍することになる。
※誤字脱字、文章がおかしな点などは出来る限り追加修正中。アルファポリス、カクヨム、ノベルアッププラスでも投稿中。
レジェンド・オブ・ダーク 遼州司法局異聞
橋本 直
SF
地球人類が初めて地球外人類と出会った辺境惑星『遼州』の連合国家群『遼州同盟』。
その有力国のひとつ東和共和国に住むごく普通の大学生だった神前誠(しんぜんまこと)。彼は就職先に困り、母親の剣道場の師範代である嵯峨惟基を頼り軍に人型兵器『アサルト・モジュール』のパイロットの幹部候補生という待遇でなんとか入ることができた。
しかし、基礎訓練を終え、士官候補生として配属されたその嵯峨惟基が部隊長を務める部隊『遼州同盟司法局実働部隊』は巨大工場の中に仮住まいをする肩身の狭い状況の部隊だった。
さらに追い打ちをかけるのは個性的な同僚達。
直属の上司はガラは悪いが家柄が良いサイボーグ西園寺かなめと無口でぶっきらぼうな人造人間のカウラ・ベルガーの二人の女性士官。
他にもオタク趣味で意気投合するがどこか食えない女性人造人間の艦長代理アイシャ・クラウゼ、小さな元気っ子野生農業少女ナンバルゲニア・シャムラード、マイペースで人の話を聞かないサイボーグ吉田俊平、声と態度がでかい幼女にしか見えない指揮官クバルカ・ランなど個性の塊のような面々に振り回される誠。
しかも人に振り回されるばかりと思いきや自分に自分でも自覚のない不思議な力、「法術」が眠っていた。
考えがまとまらないまま初めての宇宙空間での演習に出るが、そして時を同じくして同盟の存在を揺るがしかねない同盟加盟国『胡州帝国』の国権軍権拡大を主張する独自行動派によるクーデターが画策されいるという報が届く。
誠は法術師専用アサルト・モジュール『05式乙型』を駆り戦場で何を見ることになるのか?そして彼の昇進はありうるのか?
巨大生物現出災害事案
113RC
SF
20××年某日、福島第一原発周辺の放射能レベルが急激に低下する異常事象が発生。
その事象を皮切りに、米空母に対する不審物衝突事件、北朝鮮内陸部における不測事態が勃発。
それに伴い不穏な行動をみせる米軍に、防衛省は2人の自衛官を調査に派遣させる。しかし、それは日本はもとより、重大な周辺事案としてアジア、そして世界を揺るがす元凶となっていた。
米の思惑とは裏腹に、神奈川県に姿を見せた巨大生物。破壊の後に、中露の魔の手が日本を襲う。
日本と、政治家。そして2人の自衛官。彼らはどう立ち向かっていくのか?!
NPCが俺の嫁~リアルに連れ帰る為に攻略す~
ゆる弥
SF
親友に誘われたVRMMOゲーム現天獄《げんてんごく》というゲームの中で俺は運命の人を見つける。
それは現地人(NPC)だった。
その子にいい所を見せるべく活躍し、そして最終目標はゲームクリアの報酬による願い事をなんでも一つ叶えてくれるというもの。
「人が作ったVR空間のNPCと結婚なんて出来るわけねーだろ!?」
「誰が不可能だと決めたんだ!? 俺はネムさんと結婚すると決めた!」
こんなヤバいやつの話。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜
櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。
パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。
車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。
ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!!
相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム!
けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!!
パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!
法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』の初陣
橋本 直
SF
その文明は出会うべきではなかった
その人との出会いは歓迎すべきものではなかった
これは悲しい『出会い』の物語
『特殊な部隊』と出会うことで青年にはある『宿命』がせおわされることになる
地球人が初めて出会った地球外生命体『リャオ』の住む惑星遼州。
理系脳の多趣味で気弱な『リャオ』の若者、神前(しんぜん)誠(まこと)がどう考えても罠としか思えない経緯を経て機動兵器『シュツルム・パンツァー』のパイロットに任命された。
彼は『もんじゃ焼き製造マシン』のあだ名で呼ばれるほどの乗り物酔いをしやすい体質でそもそもパイロット向きではなかった。
そんな彼がようやく配属されたのは遼州同盟司法局実働部隊と呼ばれる武装警察風味の『特殊な部隊』だった。
そこに案内するのはどう見ても八歳女児にしか見えない敗戦国のエースパイロット、クバルカ・ラン中佐だった。
さらに部隊長は誠を嵌(は)めた『駄目人間』の見た目は二十代、中身は四十代の女好きの中年男、嵯峨惟基の駄目っぷりに絶望する誠。しかも、そこにこれまで配属になった五人の先輩はすべて一週間で尻尾を撒いて逃げ帰ったという。
司法局実動部隊にはパイロットとして銃を愛するサイボーグ西園寺かなめ、無表情な戦闘用人造人間カウラ・ベルガーの二人が居た。運用艦のブリッジクルーは全員女性の戦闘用人造人間『ラスト・バタリオン』で構成され、彼女達を率いるのは長身で糸目の多趣味なアメリア・クラウゼだった。そして技術担当の気のいいヤンキー島田正人に医務室にはぽわぽわな詩を愛する看護師神前ひよこ等の個性的な面々で構成されていた。
その個性的な面々に戸惑う誠だが妙になじんでくる先輩達に次第に心を開いていく。
そんな個性的な『特殊な部隊』の前には『力あるものの支配する世界』を実現しようとする『廃帝ハド』、自国民の平和のみを志向し文明の進化を押しとどめている謎の存在『ビックブラザー』、そして貴族主義者を扇動し宇宙秩序の再編成をもくろむネオナチが立ちはだかった。
そんな戦いの中、誠に眠っていた『力』が世界を変える存在となる。
その宿命に誠は耐えられるか?
SFお仕事ギャグロマン小説。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる