419 / 1,035
第三章 第二節 魔法少女大戦
第418話 それはおよそ戦果と呼べるものではなかった
しおりを挟む
各地区から送られてくる戦況報告に、目をとおしていたヤシナ・ミライは眉をひそめた。
それはおよそ戦果と呼べるものではなかった。
とてもこれをカツライ・ミサト司令官にそのまま伝えるわけにはいかない。
今回見つかった魔法少女によると推察される死体隠匿エリアは、北半球だけでも数百ヶ所に及んだ。そのなかでも特にクラスターとなりうる大都市を重点的に攻める方向でまとまり、金田日がピックアップした主要都市36拠点に各国軍と国際連邦軍の各国支部の兵士をむかわせた。
だが、そのうちの15拠点で魔法少女の急襲を受けていた。
まず最初に部隊が全滅させられたのは、中国の東の街、東京だった。ここは約三百年前までは『統一朝鮮』と呼ばれた国の首都であったが、第三次世界大戦で中国に併合されると、日本への挑発の意味を込めて、日本の首都を思わせる紛らわしい名前に改名させられていた。
その次にもたらされたのは、ドイツの街ベルリンの拠点での任務にあたっていた部隊の全滅で、そのあとも芳しくない報告がつづいた。重苦しい空気が司令室に澱みはじめていたが、七ヶ所目にしてやっと朗報がもたらされた。
ミライは声をはずませて、その報告を読み上げた。
「ニューヨーク、ソーホー地区、アメリカ陸軍第二大隊、魔法少女殲滅に成功しました!」
とたんに司令室内に歓声があがった。安堵感が広がる。
「駆逐した魔法少女の数はおよそ200体。ただし200人が戦死、残ったのは大隊を率いたスージー・クアトロ中佐以下、わずか40余名だそうです」
「勝ったといっても、損害が多すぎるわね」
ミサトが失望をあらわにした。
「ミライ、その隊長にくわしい戦況をヒアリングして。このあとの戦闘に役立てたいわ」
「いえ、それが……。一命はとりとめられたのですが、スージー・クアトロ中佐は戦闘中に、頭蓋骨陥没や胸骨の骨折等を負われまして、現在治療中です」
「脳がやられたの?」
ふいにレイがミサトとの会話に割り込んできた。
また……。
以前にもおなじようなことをされて、意趣返しのせっかくの機会を邪魔された——。
「レイ。脳には異常がないとのことよ」
「だったら、ラピッド・ヒーリング(迅速治癒)装置で急がせば、なんとかなる」
「この隊長はアメリカ国軍隊の所属なの。こちらから勝手なリクエストはできません」
「だったら、戦闘データは見られないの?」
引き下がろうとしないレイに思わずため息が漏れる。
ミライはミサトのほうに顔をむけると、助けを求めるような目で尋ねた。
それはおよそ戦果と呼べるものではなかった。
とてもこれをカツライ・ミサト司令官にそのまま伝えるわけにはいかない。
今回見つかった魔法少女によると推察される死体隠匿エリアは、北半球だけでも数百ヶ所に及んだ。そのなかでも特にクラスターとなりうる大都市を重点的に攻める方向でまとまり、金田日がピックアップした主要都市36拠点に各国軍と国際連邦軍の各国支部の兵士をむかわせた。
だが、そのうちの15拠点で魔法少女の急襲を受けていた。
まず最初に部隊が全滅させられたのは、中国の東の街、東京だった。ここは約三百年前までは『統一朝鮮』と呼ばれた国の首都であったが、第三次世界大戦で中国に併合されると、日本への挑発の意味を込めて、日本の首都を思わせる紛らわしい名前に改名させられていた。
その次にもたらされたのは、ドイツの街ベルリンの拠点での任務にあたっていた部隊の全滅で、そのあとも芳しくない報告がつづいた。重苦しい空気が司令室に澱みはじめていたが、七ヶ所目にしてやっと朗報がもたらされた。
ミライは声をはずませて、その報告を読み上げた。
「ニューヨーク、ソーホー地区、アメリカ陸軍第二大隊、魔法少女殲滅に成功しました!」
とたんに司令室内に歓声があがった。安堵感が広がる。
「駆逐した魔法少女の数はおよそ200体。ただし200人が戦死、残ったのは大隊を率いたスージー・クアトロ中佐以下、わずか40余名だそうです」
「勝ったといっても、損害が多すぎるわね」
ミサトが失望をあらわにした。
「ミライ、その隊長にくわしい戦況をヒアリングして。このあとの戦闘に役立てたいわ」
「いえ、それが……。一命はとりとめられたのですが、スージー・クアトロ中佐は戦闘中に、頭蓋骨陥没や胸骨の骨折等を負われまして、現在治療中です」
「脳がやられたの?」
ふいにレイがミサトとの会話に割り込んできた。
また……。
以前にもおなじようなことをされて、意趣返しのせっかくの機会を邪魔された——。
「レイ。脳には異常がないとのことよ」
「だったら、ラピッド・ヒーリング(迅速治癒)装置で急がせば、なんとかなる」
「この隊長はアメリカ国軍隊の所属なの。こちらから勝手なリクエストはできません」
「だったら、戦闘データは見られないの?」
引き下がろうとしないレイに思わずため息が漏れる。
ミライはミサトのほうに顔をむけると、助けを求めるような目で尋ねた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
26
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる