上 下
416 / 1,035
第三章 第二節 魔法少女大戦

第415話 アメリカ陸軍対魔法少女6

しおりを挟む
 魔法少女!

 スージーはそう判断した。それはどう見ても人間の姿をしていた。そして羽こそ見えなかったが、シャフト内の中空を舞っていた。人間ではない——。
 だが、なによりもその格好だった。ここにはおよそ場違いな、フリルやドレープが多用されたド派手な原色のコスチュームやドレスを着ていた。

「ガイル、魔法少女よ!」

 スージーは大声で叫んでいた。そんなことはすでに戦闘をはじめている本人が一番よくわかっているというのに……。だが叫ばずにはいられなかった。
 すぐさまテレパスラインを起動させて、思念で本部へ報告をいれる。
『こちら陸軍第二大隊 スージー・クアトロ中佐。当方ニューヨーク、ソーホー地区にて魔法少女と交戦……』
 そこまで言ったところで、おもわず声がとまった。エレベータ・シャフトの下方にむけて放った銃弾の雨が、何人もの魔法少女をとらえたのが見えた。魔法少女がばらばらとシャフトの奥底の闇にむけて落ちていく。

 倒せる!。

 スージーのこころが踊った。
 先ほどまでの尻込みする気分が一瞬にして晴れ渡り、気持ちがはやった。
「あらゆる角度からの攻撃を!。魔法少女には倒せる死角が存在することを忘れるな」
 その時兵士の一人が手榴弾を上から投げおとした。手榴弾は魔法少女の群れをすり抜け、下方で爆発した。こころで命じた範囲内と方向だけで爆発する『思念誘導型指向性爆弾』。下から吹き上がった炎と爆風に、何人もの魔法少女が巻き込まれて燃えあがる。

 ガイルのからだが爆風に煽られる。思わずガイルが顔をそむけ、その視点が真上をむいた。

 そこに魔法少女の群れがいた——。

 エレベーター・シャフトの上方から、視界一杯にひろがっておびただしい数の魔法少女が急降下してきていた。上方を浮揚している隊員たちに、ガイルが大声で叫んだ。
 悲鳴にもにた怒声。
 ガイルの焦りと恐怖がスージーのこころに浸潤しんじゅんしてくる。

 そのとき、接続したままになったテレパス・ラインから声が聞こえてきた。
『第二大隊、クアトロ中佐……。現在、第一大隊はワシントンDCにて魔法少女と交戦中。第三大隊はサンフランシスコで音信不通……』
 
 頭のなかで呪詛のことばのように呟かれる本部からの報告に、スージーは茫然自失としていた。
 視界にはガイルの手元が映っている。ガイルは手慣れた手つきでマルチプル銃を操作し、ランチャーミサイルを上方にむけて撃ち込んだ。が、間に合わなかった。上方の兵士たちは魔法少女たちに飛びかかられていた。その上方で爆発が起きる。直撃をくらった数体の魔法少女が、ばらばらと肉片となって落ちてくる。
 組みかかってきた魔法少女に抵抗する兵士たちのからだに、血や肉片が降り注いでくる。大きな肉片の直撃をくらった兵士が『揚力装置フライ・バーニア』の制御をうしない、エレベータ・シャフトをぐるぐる回転しながら落下していくのが見えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界日本軍と手を組んでアメリカ相手に奇跡の勝利❕

naosi
歴史・時代
大日本帝国海軍のほぼすべての戦力を出撃させ、挑んだレイテ沖海戦、それは日本最後の空母機動部隊を囮にアメリカ軍の輸送部隊を攻撃するというものだった。この海戦で主力艦艇のほぼすべてを失った。これにより、日本軍首脳部は本土決戦へと移っていく。日本艦隊を敗北させたアメリカ軍は本土攻撃の中継地点の為に硫黄島を攻略を開始した。しかし、アメリカ海兵隊が上陸を始めた時、支援と輸送船を護衛していたアメリカ第五艦隊が攻撃を受けった。それをしたのは、アメリカ軍が沈めたはずの艦艇ばかりの日本の連合艦隊だった。   この作品は個人的に日本がアメリカ軍に負けなかったらどうなっていたか、はたまた、別の世界から来た日本が敗北寸前の日本を救うと言う架空の戦記です。

日本VS異世界国家! ー政府が、自衛隊が、奮闘する。

スライム小説家
SF
令和5年3月6日、日本国は唐突に異世界へ転移してしまった。 地球の常識がなにもかも通用しない魔法と戦争だらけの異世界で日本国は生き延びていけるのか!? 異世界国家サバイバル、ここに爆誕!

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

銀河太平記

武者走走九郎or大橋むつお
SF
 いまから二百年の未来。  前世紀から移住の始まった火星は地球のしがらみから離れようとしていた。火星の中緯度カルディア平原の大半を領域とする扶桑公国は国民の大半が日本からの移民で構成されていて、臣籍降下した扶桑宮が征夷大将軍として幕府を開いていた。  その扶桑幕府も代を重ねて五代目になろうとしている。  折しも地球では二千年紀に入って三度目のグローバリズムが破綻して、東アジア発の動乱期に入ろうとしている。  火星と地球を舞台として、銀河規模の争乱の時代が始まろうとしている。

アルビオン王国宙軍士官物語(クリフエッジシリーズ合本版)

愛山雄町
SF
 ハヤカワ文庫さんのSF好きにお勧め! ■■■  人類が宇宙に進出して約五千年後、地球より数千光年離れた銀河系ペルセウス腕を舞台に、後に“クリフエッジ(崖っぷち)”と呼ばれることになるアルビオン王国軍士官クリフォード・カスバート・コリングウッドの物語。 ■■■  宇宙暦4500年代、銀河系ペルセウス腕には四つの政治勢力、「アルビオン王国」、「ゾンファ共和国」、「スヴァローグ帝国」、「自由星系国家連合」が割拠していた。  アルビオン王国は領土的野心の強いゾンファ共和国とスヴァローグ帝国と戦い続けている。  4512年、アルビオン王国に一人の英雄が登場した。  その名はクリフォード・カスバート・コリングウッド。  彼は柔軟な思考と確固たる信念の持ち主で、敵国の野望を打ち砕いていく。 ■■■  小説家になろうで「クリフエッジシリーズ」として投稿している作品を合本版として、こちらでも投稿することにしました。 ■■■ 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+でも投稿しております。

後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~

夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。 多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』 一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。 主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!! 小説家になろうからの転載です。

【改訂版】ダンジョンと株式会社 ~目指せビリオネイヤー(1千億円長者)私たちはこの会社で世界を取る~

早坂明
SF
 全世界に『門』が出現した。  『門』は3次元的にはありえない存在であり、そこには地下、ダンジョンへと続く通路があった。  水沢健司は、友人の伊吹吾郎、橋口清美とともに自宅に現れたダンジョンに潜り、その秘密の一端を見つけることができた。  『門』が出現した翌日、3人で集まりダンジョンの秘密をどう扱うかを相談していた。 「それで、お前さんらはダンジョンの秘密のことを、どうするつもりじゃ?」 「やっぱり、人に知られないよう隠すしかないのかしら?」  伊吹の質問に、清美も首をかしげながらつぶやく。  その二人に対して、水沢ははっきりと反論する。 「いえ、私は逆に積極的に開示すべきだと思います」 「でも、開示するといってもどうやってするつもりなの? 下手に発表すると大騒ぎになると思うけど……」  清美の質問にうなずきながら、水沢が答える。 「会社を作りましょう。ダンジョンを利用したサービスを提供するための会社です」 「なるほど、会社が出来てからなら、騒ぎになるのはむしろ望むところという訳か。なにしろ、無料で会社の宣伝をしてもらえる訳じゃからな」  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

処理中です...