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第三章 第二節 魔法少女大戦

第403話 金田日、国際連邦軍の司令室に立つ

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 金田日一《きんだにち・はじめ》の長年の夢は思わぬ形で叶うことになった。

 彼は今、国際連邦軍日本支部の中枢である司令室にいた。
 いつかこの場所に来たい、とずっと夢見ていたが、その光景が目の前に広がっている現実に、どうしても興奮は隠しきれない。
 今回ばかりは『素体』で遠隔から参加とはいかず、一週間前にボストンの研究所からこの地に赴任してきた。だから、実際にこの床に足をつけ、用意された専用の椅子に腰をしずめ、司令室の匂いをかぐと、ほんとうにここにいるのだという思いが胸に迫ってくる。 
 自分の背後にはカツライ司令、そしてその一番うしろにウルスラ総司令——。
 それだけで今回の作戦がただの演習ではなく、世界規模の作戦の本番であることを否が応にも思い知らされる。しかも自分がそのメインのアドバイザーとして招聘されていることを考えると、その重責に足がすくむ。

 この作戦の端緒となった国の名前をとって『ブリティッシュ作戦』と名付けられたこの世界規模の作戦の実行責任の中心にいるのは、まちがいなく自分なのだ。

 本来ここに座るはずであったデミリアン責任者のエドは外され、サブルームからのアドバイザー扱いとなっていた。小耳に挟んだ話では、上層部ともめたと言われているが、そのおかげもあって自分にこの僥倖ぎょうこうが転がり込んできたのだろう。
 ヤシナ・ミライ副司令官が近づいてきて、耳打ちするように言ってきた。
「金田日教授、今から2分後に、北半級の電源供給が0・5秒だけ切断されます。そちらの心配はしないで下さい。各国にその事態にそなえるよう要請しております。電源再復帰時の不測な事態のAIやロボットの不稼働、暴走、データ喪失など、想定されるあらゆる不具合をAIによる入念なシミュレーションで対応していますので、なにとぞご安心ください」
「では、わたしはなにを?」
「教授には、この『ブリティッシュ作戦』で発見される生体チップから、魔法少女の巣窟そうくつ、いえ潜伏地点の範囲を特定していただきたいのです。わたしたちはその範囲の規模や地域性を考慮して、戦闘準備中の各国の軍隊および国連軍の各支部に指示をします」
「ミライさん。範囲の特定はわたしの開発したプログラムを走らせれば、AIが自動で特定してくれますが……」
「それでも最終判断は人間がすると決められています。教授、あなたがデータに合理的疑いがないかを判断して、最終的に決断してください」
 ミライが言っている内容があまりにも責任重大なことだったので、金田日は足元が震える思いにかられた。
「あ、いや……、しかし、わたしは軍人ではないのですよ。そんな決断など……」
「ご心配なく。形式上のものです。民間人のあなたに責任をとらせるつもりはありません。識者からのアドバイスの元で決行したという大義が必要なだけです」
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