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第三章 第二節 魔法少女大戦

第402話 人類史上誰もなしえなかった英断を

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 ウルスラはそう思った。ミサトの腕をぐっとつかむ。だがミサトはその手を振り払って続けた。とたんに『まかせて』といやに冷静な思念を頭にねじこんでくる。
「ですから事務総長。人類史上誰もなしえなかった、亜獣にこちら側から仕掛けるという英断をぜひあなたにお願いしたいのです」
「人類史上?」
 総長がその甘言に喰いついたのがウルスラにはわかった。
「ええ。おそらく国連の歴史に、いえ人類史の歴史に名を残す大きな決断です。そのときもし、各国の国防軍と国連軍とのあいだで協同戦線が張れれば、さらに人類にとってのおおきな一歩、そして各国の首脳に対しても、おおきなアドバンテージになるかと思います」

 そこまでで充分だった——。
 ウルスラの頭の中にそこにいる文官や武官たちから、意見を求める声と誹謗中傷する声が一斉によせられた。できるだけおおくの人と意見交換できるようにと、安易にテレパス・ラインを共有設定にしていたせいで、頭痛を引き起こすほどのアクセスが殺到して、まったく収集がつかなかった。ウルスラは全員に『事務総長の決断におまかせします』とだけ返事して、このグループでの意見をシャットアウトした。
 一方的な対話の拒否にたいして数人が、無言で不満の目をむけてきたが、ウルスラは無視した。

 どちらにしても自分には決定権はないし、取り込んだところで、趨勢すうせいが変わるわけでもない。だが一気に傾いた流れに、だれもが大慌てしているのは確かのようだった。 
 すこしだけだが爽快な気分を感じた。
 どちらの決定に落ち着くかは予断を許さなかったが、お高くとまった連中に一泡ふかせたのだから……。

 ウルスラは腕を胸の前で組んだまま、議場の正面を見ながらミサトをねぎらった。
「ミサト、よくやった。見事なお手並みだった」
 ミサトはこともなげに、あっけらかんと言った。
「あの男は昔から歴史に名を残したがっていたのよ。でももうすぐ総長の任期が切れるでしょう。でも任期中に、たいしたことやれてなかったからねぇ。名誉が欲しくて焦っているのは、手にとるようにわかってたわぁ」
「む、昔から……?」

「えぇ。あなたと出会うだいぶ前の話よ。でも、あの時からあの男は大したことはやれなかったわ……」

「ほーんと、ベッドの上でもね」
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