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第三章 第二節 魔法少女大戦
第397話 さいごの数人はこの手で直接殺した……
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心の中に蓄積されていくなにか——。
どんなに意識しないようにしても、先輩パイロットたちは最後はそれに押し潰された——。
ヤマトは訓練でそう習った。
それがなんなのかわからない。だが、それは臆面もなく心のそこここに横たわり、徐々に腐臭を放ちながら醗酵していく、という。だがそのよどみは心の内部から抜け出ていかない。パイロットたちは、いつかそれが自らを滅ぼすかもしれない、という漠としたわだかまりに取り憑かれはじめ、精神の均衡をうしなう——。
アイがまた顔を伏せた。自分の手をじっと見つめている。
「それに……」
アイはぼそりと呟いた。
「さいごの数人は……、この手で……、直接殺した……」
ヤマトはその時の様子を思い出した。
それはヤマトのデッドマンカウンターが4800人を越えた頃だった。その頃には船のいたるところで爆発がおき、船は沈みかけていた。あと3分の1ほどですべてが没するというところだ。ところが、その爆発のせいであいた大きな亀裂や穴から、かろうじて生きていた人々が這い出てきたのだ。浮いてきた人々は漂流物につかまりなんとか沈まないようにしたり、数百メートル先に見える岸に向かって泳ぎはじめたりしはじめた。
ヤマトはすぐさま、それらの人々の排除にとりかかった。
セラ・ジュピターは海に浮いている人を手ですくい上げるやいなや、見えてる船体の腹に叩きつけた。バーンという音とともに、船体に血飛沫が飛び散った。ヤマトは人が浮かんでくる度に、それを繰り返す。
アイのセラ・ヴィーナスもヤマトに続いた。浮いている人をすくいあげると、同じように船体に叩きつけた。なかには浮いてきた時点で絶命している者もいたが、それをいちいち確認はしていられなかった。ヤマトは一切、逡巡することもなく、片っぱしから人間を船体に叩きつけて潰していった。
だがアイは数人を処理してくれたものの、ふいに手をとめて動かなくなった。
ヤマトはそれを咎めることも、鼓舞することもしなかった。自分ひとりだけで、ただ淡々と作業をくりかえした。
青く澄み渡った空に、心が洗われるような潮風が流れる気持ちのよい港の風景。だが、その港の沖合から、ドスンドスン、という人間が叩き潰されている音がこだまし続ける。
アイのセラ・ヴィーナスはうなだれたまま、ヤマトの作業をじっと見ていた。すでに船のまわりの海面は真っ赤に染まっていた。
ヤマトはカウンターに目をやった。4856の数字が刻まれていた。
あとひとり——。
弱ったことに、乗員・乗客の総数、4857人にあとひとり足りなかった。
どんなに意識しないようにしても、先輩パイロットたちは最後はそれに押し潰された——。
ヤマトは訓練でそう習った。
それがなんなのかわからない。だが、それは臆面もなく心のそこここに横たわり、徐々に腐臭を放ちながら醗酵していく、という。だがそのよどみは心の内部から抜け出ていかない。パイロットたちは、いつかそれが自らを滅ぼすかもしれない、という漠としたわだかまりに取り憑かれはじめ、精神の均衡をうしなう——。
アイがまた顔を伏せた。自分の手をじっと見つめている。
「それに……」
アイはぼそりと呟いた。
「さいごの数人は……、この手で……、直接殺した……」
ヤマトはその時の様子を思い出した。
それはヤマトのデッドマンカウンターが4800人を越えた頃だった。その頃には船のいたるところで爆発がおき、船は沈みかけていた。あと3分の1ほどですべてが没するというところだ。ところが、その爆発のせいであいた大きな亀裂や穴から、かろうじて生きていた人々が這い出てきたのだ。浮いてきた人々は漂流物につかまりなんとか沈まないようにしたり、数百メートル先に見える岸に向かって泳ぎはじめたりしはじめた。
ヤマトはすぐさま、それらの人々の排除にとりかかった。
セラ・ジュピターは海に浮いている人を手ですくい上げるやいなや、見えてる船体の腹に叩きつけた。バーンという音とともに、船体に血飛沫が飛び散った。ヤマトは人が浮かんでくる度に、それを繰り返す。
アイのセラ・ヴィーナスもヤマトに続いた。浮いている人をすくいあげると、同じように船体に叩きつけた。なかには浮いてきた時点で絶命している者もいたが、それをいちいち確認はしていられなかった。ヤマトは一切、逡巡することもなく、片っぱしから人間を船体に叩きつけて潰していった。
だがアイは数人を処理してくれたものの、ふいに手をとめて動かなくなった。
ヤマトはそれを咎めることも、鼓舞することもしなかった。自分ひとりだけで、ただ淡々と作業をくりかえした。
青く澄み渡った空に、心が洗われるような潮風が流れる気持ちのよい港の風景。だが、その港の沖合から、ドスンドスン、という人間が叩き潰されている音がこだまし続ける。
アイのセラ・ヴィーナスはうなだれたまま、ヤマトの作業をじっと見ていた。すでに船のまわりの海面は真っ赤に染まっていた。
ヤマトはカウンターに目をやった。4856の数字が刻まれていた。
あとひとり——。
弱ったことに、乗員・乗客の総数、4857人にあとひとり足りなかった。
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