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第三章 第二節 魔法少女大戦
第387話 ヤマト12歳 初陣1
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ヤマトタケルは12才の誕生日をむかえた三日後に自身初の亜獣戦に参加することになった——。
父は12歳になるまでは実戦を許してくれず、くる日もくる日もシミュレーション戦漬けの毎日ばかりだったので、ヤマトはその日がくるのを文字通り、指折り数えて待っていた。その頃までにはヤマトはすでに歴代の亜獣をそれぞれ五回以上は倒していた。
父とエドに言わせれば(たまにカミナ・アヤトも相乗りしてくることがあったが)、すべてのデータがそろっていて、それについての攻略法が研究し尽くされているから、簡単に攻略できるだけで、まったく五里霧中の手探り状態で戦う実戦とは、レベルが一桁も二桁もちがうのだ、ということだった。
さらにエドにうんざりするほど聞かされたのは、つい十年前までとは今の戦力やデータの差があるということだった。これには武器や装備を担当するアルも一家言あるらしく、よくエドと一緒にその歴史を説いてきた。
今から70余年前の初期には、敵の亜獣の弱点はおろか特徴や武器も弱点も容易に解明できなかったので、パイロットたちのおおくは初戦で命を落としたということだった。デミリアンをコントロールする機器や装備も未熟だったことも、そのおおきな要因にもなったらしい。
共命率こそがデミリアンのコントロールにもっとも重要であることがわかったのは40年ほど前で、デミリアンに武器を持たせる方法が生み出されたはわずか15年ほど前だった。特種な『素子』が開発されるまでは、ぞっとすることにデミリアンは素手で亜獣と戦っていたと聞く。
ヤマトが搭乗する『セラ・ジュピター』から、高速移動用レーンの『電磁誘導パルスレーン』の制限が消えた。次第に機体が降下しはじめる。
ヤマトはその空域の下にある都市の映像に目をやると、そこが港であることに気づいた。
「マルセイユだ。今は海洋資源はとれんが、リゾート地として人気が高まってきている」
ヤマトの父、ヤマト・ナオエが言った。
「え、リゾート地ならニースじゃないんですか?」
アイが少々不躾な質問をヤマトの父にぶつけた。アイが亜獣戦に参加して2年。これまでに4体の亜獣と対峙して、ヤマトの父とのあいだを縮めたらしい。
「ははっ、アイちゃん残念……」
アイの疑問に答えたのは、カミナ・アヤトだった。
「ニースはずいぶん前に亜獣にやられちゃってね。今じゃあ見る影もないそうだよ。っつたって昔どんなのだったかは、オレも映像資料でしか知らないんだけどね」
父は12歳になるまでは実戦を許してくれず、くる日もくる日もシミュレーション戦漬けの毎日ばかりだったので、ヤマトはその日がくるのを文字通り、指折り数えて待っていた。その頃までにはヤマトはすでに歴代の亜獣をそれぞれ五回以上は倒していた。
父とエドに言わせれば(たまにカミナ・アヤトも相乗りしてくることがあったが)、すべてのデータがそろっていて、それについての攻略法が研究し尽くされているから、簡単に攻略できるだけで、まったく五里霧中の手探り状態で戦う実戦とは、レベルが一桁も二桁もちがうのだ、ということだった。
さらにエドにうんざりするほど聞かされたのは、つい十年前までとは今の戦力やデータの差があるということだった。これには武器や装備を担当するアルも一家言あるらしく、よくエドと一緒にその歴史を説いてきた。
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共命率こそがデミリアンのコントロールにもっとも重要であることがわかったのは40年ほど前で、デミリアンに武器を持たせる方法が生み出されたはわずか15年ほど前だった。特種な『素子』が開発されるまでは、ぞっとすることにデミリアンは素手で亜獣と戦っていたと聞く。
ヤマトが搭乗する『セラ・ジュピター』から、高速移動用レーンの『電磁誘導パルスレーン』の制限が消えた。次第に機体が降下しはじめる。
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