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第三章 第二節 魔法少女大戦
第369話 ぜひ要請したいことがあるんです
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ミサトは自分のことばを草薙が遮ってくるとは思わなかった。
感情にまかせて、瑣末なことで咎めたことをミサトはたちまち後悔した。ミサトはひとの言葉尻をとらえたり、あら探しをして、自分のペースに引きずり込むスタイルを得意としていた。
だが、それが通用しない種類の人間がいる——。
そう、草薙素子のようなタイプだ。
「な、なによ。見解って……」
「専門家の方々の意見を伺ってから、と思っておりましたが、わたしが考察してたどりついた仮説を申しあげます」
そう形式張った言い方をするなり、草薙が空中の映像を切り替えた。
「わたしは、この亜獣は契約を結んで、人間を『魔法少女』にする代わりに、デミリアンとの戦いを手伝ってもらう、という能力を持っている、と考えました。どんな契約内容を提示すれば、ひとにその契約を結ばせられるのかはわかりません。ですが、あの倉庫に詰まっていた『死体』は、その契約のなにかなのではないかと……。たとえば、気に入らないひとを殺す代わりに、『魔法少女』となって欲しいという契約とか……」
「——ってことは、あの死体は、その魔法少女たちの契約成立の証ってことぉ?」
アスカが素っ頓狂な声をあげたが、草薙は冷静にそれに反論した。
「可能性ということを言っただけよ、アスカ」
「そうよ。アスカ、草薙大佐はそういうこともなくはない、という可能性のひとつを言いたいだけ……」
ミサトもアスカを落ち着かせることばをかけたが、それは巧みに草薙の意見を牽制してみせるためだった。あまりに極端な意見を簡単にまかり通しては、指揮官としての自分の資質を問われかねない。
もしそれが草薙の言う通りなら、自分はそんな敵と戦うための解決方法など持ち合わせていないし、どんなにすぐれた作戦が提出されたとしても、それを指揮する自信もない。
だが、草薙はバイアスのかかったミサトのことばを気にすることなく、自分の提案を訴えた。ただ純粋に論理的に考えうる次の可能性を——。
「ですから、カツライ司令官にぜひ要請したいことがあるんです。一瞬だけでよいので、どうにかして世界中の電源を切断して欲しいのです」
ミサトは一瞬、なにかを聞き違えたのかと思った。突拍子もないどころではない。
「ちょ、ちょっとぉ、ど、どういうこと……」
「カツライ司令、あの倉庫とおなじように死体を隠している場所があるはずです。それを見つけましょう。魔法少女攻略法のヒントにたどり着けるかもしれません」
「なんでほかにあるってわかるのよ?」
「あの倉庫で見つかった死体は400体ほどです。つまりあと一万体以上はどこかに詰め込まれているかと……」
感情にまかせて、瑣末なことで咎めたことをミサトはたちまち後悔した。ミサトはひとの言葉尻をとらえたり、あら探しをして、自分のペースに引きずり込むスタイルを得意としていた。
だが、それが通用しない種類の人間がいる——。
そう、草薙素子のようなタイプだ。
「な、なによ。見解って……」
「専門家の方々の意見を伺ってから、と思っておりましたが、わたしが考察してたどりついた仮説を申しあげます」
そう形式張った言い方をするなり、草薙が空中の映像を切り替えた。
「わたしは、この亜獣は契約を結んで、人間を『魔法少女』にする代わりに、デミリアンとの戦いを手伝ってもらう、という能力を持っている、と考えました。どんな契約内容を提示すれば、ひとにその契約を結ばせられるのかはわかりません。ですが、あの倉庫に詰まっていた『死体』は、その契約のなにかなのではないかと……。たとえば、気に入らないひとを殺す代わりに、『魔法少女』となって欲しいという契約とか……」
「——ってことは、あの死体は、その魔法少女たちの契約成立の証ってことぉ?」
アスカが素っ頓狂な声をあげたが、草薙は冷静にそれに反論した。
「可能性ということを言っただけよ、アスカ」
「そうよ。アスカ、草薙大佐はそういうこともなくはない、という可能性のひとつを言いたいだけ……」
ミサトもアスカを落ち着かせることばをかけたが、それは巧みに草薙の意見を牽制してみせるためだった。あまりに極端な意見を簡単にまかり通しては、指揮官としての自分の資質を問われかねない。
もしそれが草薙の言う通りなら、自分はそんな敵と戦うための解決方法など持ち合わせていないし、どんなにすぐれた作戦が提出されたとしても、それを指揮する自信もない。
だが、草薙はバイアスのかかったミサトのことばを気にすることなく、自分の提案を訴えた。ただ純粋に論理的に考えうる次の可能性を——。
「ですから、カツライ司令官にぜひ要請したいことがあるんです。一瞬だけでよいので、どうにかして世界中の電源を切断して欲しいのです」
ミサトは一瞬、なにかを聞き違えたのかと思った。突拍子もないどころではない。
「ちょ、ちょっとぉ、ど、どういうこと……」
「カツライ司令、あの倉庫とおなじように死体を隠している場所があるはずです。それを見つけましょう。魔法少女攻略法のヒントにたどり着けるかもしれません」
「なんでほかにあるってわかるのよ?」
「あの倉庫で見つかった死体は400体ほどです。つまりあと一万体以上はどこかに詰め込まれているかと……」
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