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第三章 第二節 魔法少女大戦
第366話 想像するだけでもゾッとする仮説
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それは想像するだけでもゾッとする仮説だった。
カツライ・ミサトは責任者とパイロットを招集した緊急会議の席で、草薙大佐が開口一番そう言った瞬間、固唾を飲み込みそうになった。ウルスラが出席が不在だったので、この会議は自分が仕切ろうと意気込んでいた気持ちは一気に萎えた。
最初に『フリートウッド事件』の件で、重大なことがわかったと言われたときは、むしろ拍子抜けしたほどだった。管轄外の警備の担当が勝手な思いつきで、国連軍の任務とは関係のないことから妄想を連想したのだと思った。
だが、草薙が次に放ったひとことは、無視を決め込めないほどのインパクトがあった。
ただの『仮説』ですが、という前置きはあったが、ミサトはその見解を『仮説』段階であっても、簡単には受け入れられなかった。
それは春日リンが前に口にしていた、ただの『可能性』を追認するような意見だったからだ。
魔法少女は人間をバラバラに解体する力をもっています——。
「ちょっと待ちなさいよね。もし、それが本当なら、あの等身大亜獣戦用に開発したあのソードやらなんやらがあっても、まったく無意味じゃないのぉ」
ミサトは頭から否定すべき意見と言わんばかりに撥ね付けた。簡単に受け入れてはならない、という本能的な忌避だったのかもしれない。
そう、それはまったく異なるソースから導きだされた、おなじ結論——。
ミサトは心底足が震えた。
自分のなかでは、それはもう『仮説』ではない——。
だれかが自分に続いて、否定してくれればと思ったが、みな草薙の意見を聞きたがっているようだった。
「無意味ではありません。おそらくあのステッキからの攻撃を受けなければ、バラバラにされる心配はありません」
草薙はきっぱりと言い切ってきた。
こういうお堅い軍人は融通がきかないが、発言に妙な説得力をもつことがある。おのれの方向性を骨の髄まで信じきることで、信念という揺るぎないものにすり替えるからだ。
そう、たしか『精神論』というらしい。
数世紀前までは賞賛されてきたという。
こういう古を大事にする輩は、聞き分けがないぶん厄介だ——。
「その仮説とやらを拝聴してみましょう」
ミサトの抗議が空振りしたのをみかねてか、春日リンがあいだにはいってきた。
「草薙大佐がたどりついた仮説について……。とくにエドと金田日先生。亜獣に関することだから、おふたりの見解がとても重要。お願いするわ」
ミサトはリンが口を挟んできた意味を理解した。彼女は草薙よりもはやくその『仮説』にたどり着いていたのだから。
ただ、それがどういう事象なのかまで考えが至らなかった。彼女自身も半信半疑だった『仮説』が真実に近いものかどうか、別の専門家の意見も仰ぎたいというところだろう。
だが、できるなら、『仮説』のままで終わってもらいたい——。
カツライ・ミサトは責任者とパイロットを招集した緊急会議の席で、草薙大佐が開口一番そう言った瞬間、固唾を飲み込みそうになった。ウルスラが出席が不在だったので、この会議は自分が仕切ろうと意気込んでいた気持ちは一気に萎えた。
最初に『フリートウッド事件』の件で、重大なことがわかったと言われたときは、むしろ拍子抜けしたほどだった。管轄外の警備の担当が勝手な思いつきで、国連軍の任務とは関係のないことから妄想を連想したのだと思った。
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ただの『仮説』ですが、という前置きはあったが、ミサトはその見解を『仮説』段階であっても、簡単には受け入れられなかった。
それは春日リンが前に口にしていた、ただの『可能性』を追認するような意見だったからだ。
魔法少女は人間をバラバラに解体する力をもっています——。
「ちょっと待ちなさいよね。もし、それが本当なら、あの等身大亜獣戦用に開発したあのソードやらなんやらがあっても、まったく無意味じゃないのぉ」
ミサトは頭から否定すべき意見と言わんばかりに撥ね付けた。簡単に受け入れてはならない、という本能的な忌避だったのかもしれない。
そう、それはまったく異なるソースから導きだされた、おなじ結論——。
ミサトは心底足が震えた。
自分のなかでは、それはもう『仮説』ではない——。
だれかが自分に続いて、否定してくれればと思ったが、みな草薙の意見を聞きたがっているようだった。
「無意味ではありません。おそらくあのステッキからの攻撃を受けなければ、バラバラにされる心配はありません」
草薙はきっぱりと言い切ってきた。
こういうお堅い軍人は融通がきかないが、発言に妙な説得力をもつことがある。おのれの方向性を骨の髄まで信じきることで、信念という揺るぎないものにすり替えるからだ。
そう、たしか『精神論』というらしい。
数世紀前までは賞賛されてきたという。
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「その仮説とやらを拝聴してみましょう」
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「草薙大佐がたどりついた仮説について……。とくにエドと金田日先生。亜獣に関することだから、おふたりの見解がとても重要。お願いするわ」
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ただ、それがどういう事象なのかまで考えが至らなかった。彼女自身も半信半疑だった『仮説』が真実に近いものかどうか、別の専門家の意見も仰ぎたいというところだろう。
だが、できるなら、『仮説』のままで終わってもらいたい——。
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