355 / 1,035
第三章 第二節 魔法少女大戦
第354話 アスカは気がはやる気持ちをとめられない
しおりを挟む
アスカは気がはやる気持ちをとめられなかった。
春日リンに緊急呼び出しをされたのは、就寝時間寸前の遅い時間だったので嫌味のひとつでも言おうかと思っていたが、リンの嬉しそうな様子にそんな気持ちは吹き飛んだ。
「カオリ、今すぐデミリアン格納庫に来て!」
そのひと言でなにがおきたか察した。興奮のあまりアスカではなく、カオリの名を口にしたのだから。
着替えている時間がおしかったので、アスカはパジャマの肩についている『サーフェス・コントローラー』をこすって、すこしでも外出着に見えるファブリックとスキンを急いで呼び出した。自分の部屋から飛び出して、早歩きしながらいくつか切り替えたが、階段の上まできたところで、リネンのからっとした風合いのファブリックに、太めのロンドンストライプ柄をみつけたのでそれに決めた。すこし長めのシルエットのパジャマだったので、このスキンならシャツガウンに見えなくない。
アスカが階段の下のラウンジまでいくと、ヤマトとユウキがまだなにか話をしていた。つい先ほどまでパイロット全員でのイオージャ攻略についての会議が、解散になったはずだったが、このふたりはそのあとも討論を続けていたらしい。なにやらふたりとも難しい顔をしていた。
アスカはとりあえずリンの元へ急ぐことを優先したかったので、ヤマトもユウキも無視してそのまま通り抜けようとしたが、それをヤマトが見逃すはずなかった。
「アスカ、こんな時間にどこへ?」
アスカは自分を気づかってくれるヤマトの気持ちは嬉しかったが、今、ここ、この瞬間にいたっては、余計なお世話だという気持ちが先にたった。だが、それを気取られるわけにもいかなかったので、他愛のないひと言だけを投げかけた。
「たいしたことないわ、タケル。メイに……、リンに呼び出されただけ」
「こんな時間にですか?」
さも瑣末な用件のように軽く言ったはずだったが、ユウキがそれに食いついてきた。
「えぇ、こんな時間によ。だからなに?」
「いや、ひとりでパイロット・ルームを出るのは規則違反だし、なにより危ないのではないですか」
「大丈夫よ。入り口にいる警備隊のひとりふたり、みつくろってついてきてもらうから」
「リンさんはなんて?」
ヤマトがずばりと核心に切り込んできた。
「なにも……。ただデミリアン格納庫にきて、とだけ」
それだけでヤマトはそれがなにを意味するかを察したらしかった。
「アスカ、ぼくもついていくよ」
ヤマトがソファから腰をあげながら言った。するとユウキもそれに追随してきた。
「それなら、わたしもご同行しようじゃないか」
「いやよ、ユウキはこなくていいわ」
アスカはすぐさま断った。あまりの即断にユウキが面喰らった顔をした。
「あ、いや、アスカくん。わたしは必要ないというのかい」
春日リンに緊急呼び出しをされたのは、就寝時間寸前の遅い時間だったので嫌味のひとつでも言おうかと思っていたが、リンの嬉しそうな様子にそんな気持ちは吹き飛んだ。
「カオリ、今すぐデミリアン格納庫に来て!」
そのひと言でなにがおきたか察した。興奮のあまりアスカではなく、カオリの名を口にしたのだから。
着替えている時間がおしかったので、アスカはパジャマの肩についている『サーフェス・コントローラー』をこすって、すこしでも外出着に見えるファブリックとスキンを急いで呼び出した。自分の部屋から飛び出して、早歩きしながらいくつか切り替えたが、階段の上まできたところで、リネンのからっとした風合いのファブリックに、太めのロンドンストライプ柄をみつけたのでそれに決めた。すこし長めのシルエットのパジャマだったので、このスキンならシャツガウンに見えなくない。
アスカが階段の下のラウンジまでいくと、ヤマトとユウキがまだなにか話をしていた。つい先ほどまでパイロット全員でのイオージャ攻略についての会議が、解散になったはずだったが、このふたりはそのあとも討論を続けていたらしい。なにやらふたりとも難しい顔をしていた。
アスカはとりあえずリンの元へ急ぐことを優先したかったので、ヤマトもユウキも無視してそのまま通り抜けようとしたが、それをヤマトが見逃すはずなかった。
「アスカ、こんな時間にどこへ?」
アスカは自分を気づかってくれるヤマトの気持ちは嬉しかったが、今、ここ、この瞬間にいたっては、余計なお世話だという気持ちが先にたった。だが、それを気取られるわけにもいかなかったので、他愛のないひと言だけを投げかけた。
「たいしたことないわ、タケル。メイに……、リンに呼び出されただけ」
「こんな時間にですか?」
さも瑣末な用件のように軽く言ったはずだったが、ユウキがそれに食いついてきた。
「えぇ、こんな時間によ。だからなに?」
「いや、ひとりでパイロット・ルームを出るのは規則違反だし、なにより危ないのではないですか」
「大丈夫よ。入り口にいる警備隊のひとりふたり、みつくろってついてきてもらうから」
「リンさんはなんて?」
ヤマトがずばりと核心に切り込んできた。
「なにも……。ただデミリアン格納庫にきて、とだけ」
それだけでヤマトはそれがなにを意味するかを察したらしかった。
「アスカ、ぼくもついていくよ」
ヤマトがソファから腰をあげながら言った。するとユウキもそれに追随してきた。
「それなら、わたしもご同行しようじゃないか」
「いやよ、ユウキはこなくていいわ」
アスカはすぐさま断った。あまりの即断にユウキが面喰らった顔をした。
「あ、いや、アスカくん。わたしは必要ないというのかい」
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
私たちの試作機は最弱です
ミュート
SF
幼い頃から米軍で人型機動兵器【アーマード・ユニット】のパイロットとして活躍していた
主人公・城坂織姫は、とある作戦の最中にフレンドリーファイアで味方を殺めてしまう。
その恐怖が身を蝕み、引き金を引けなくなってしまった織姫は、
自身の姉・城坂聖奈が理事長を務める日本のAD総合学園へと編入する。
AD総合学園のパイロット科に所属する生徒会長・秋沢楠。
整備士の卵であるパートナー・明宮哨。
学園の治安を守る部隊の隊長を務める神崎紗彩子。
皆との触れ合いで心の傷を癒していた織姫。
後に彼は、これからの【戦争】という物を作り変え、
彼が【幸せに戦う事の出来る兵器】――最弱の試作機と出会う事となる。
※この作品は現在「ノベルアップ+」様、「小説家になろう!」様にも
同様の内容で掲載しており、現在は完結しております。
こちらのアルファポリス様掲載分は、一日五話更新しておりますので
続きが気になる場合はそちらでお読み頂けます。
※感想などももしお時間があれば、よろしくお願いします。
一つ一つ噛み締めて読ませて頂いております。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
華の剣士
小夜時雨
ファンタジー
遥か昔、燐の国の王は神の加護を得て、獣を意のままに操る血族となった。その燐で生まれたハヨンは、幼き頃にある少年に助けられる。その少年の手がかりは、剣の柄に描かれていた紋章から、王族であるということのみ。昔の恩返しのために、ハヨンは史上初の女剣士を目指す。
しかし城内では派閥により大混乱で…。
アルビオン王国宙軍士官物語(クリフエッジシリーズ合本版)
愛山雄町
SF
ハヤカワ文庫さんのSF好きにお勧め!
■■■
人類が宇宙に進出して約五千年後、地球より数千光年離れた銀河系ペルセウス腕を舞台に、後に“クリフエッジ(崖っぷち)”と呼ばれることになるアルビオン王国軍士官クリフォード・カスバート・コリングウッドの物語。
■■■
宇宙暦4500年代、銀河系ペルセウス腕には四つの政治勢力、「アルビオン王国」、「ゾンファ共和国」、「スヴァローグ帝国」、「自由星系国家連合」が割拠していた。
アルビオン王国は領土的野心の強いゾンファ共和国とスヴァローグ帝国と戦い続けている。
4512年、アルビオン王国に一人の英雄が登場した。
その名はクリフォード・カスバート・コリングウッド。
彼は柔軟な思考と確固たる信念の持ち主で、敵国の野望を打ち砕いていく。
■■■
小説家になろうで「クリフエッジシリーズ」として投稿している作品を合本版として、こちらでも投稿することにしました。
■■■
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+でも投稿しております。
遥かなるマインド・ウォー
弓チョコ
SF
西暦201X年。
遥かな宇宙から、ふたつの来訪者がやってきた。
ひとつは侵略者。人間のような知的生命体を主食とする怪人。
もうひとつは、侵略者から人間を守ろうと力を授ける守護者。
戦争が始まる。
※この物語はフィクションです。実在する、この世のあらゆる全てと一切の関係がありません。物語の展開やキャラクターの主張なども、何かを現実へ影響させるような意図のあるものではありません。
リ・インカーネーション
ウォーターブルーム
SF
主人公神波 駿は妄想が大好きな理系の予備校生。いつもの様に生物の授業を受けていた彼は、ある日自分が思った妄想が現実に実現してしまう事件に遭遇してしまう。不可解で謎の多い有力な投資先がスポンサーとなり、その後それは1度や2度ではなく何回も頻繁に起こる様になっていく。
夢と現実の狭間すら認識できなくなった時、彼のもとに「ミスカテック大学」という不思議な大学から受験要項と受験のお誘いの手紙が届いた。興味を覚えた彼が入試に挑むために数々の試練や冒険をこなしていく。時にはタイムトラベラーとなり、またある時には並行異世界や異次元空間にまで足を運び、死の世界にまで行く羽目に。
果たしてミスカテック大学とは一体何なのか?そして究極の冒険の果てに彼を待つ者とは?
若者たちの新たな人生と青春、奇抜な思考を描く近未来SF科学ファンタジー小説。
スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜
櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。
パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。
車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。
ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!!
相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム!
けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!!
パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!
SFゲームの世界に転移したけど物資も燃料もありません!艦隊司令の異世界宇宙開拓紀
黴男
SF
数百万のプレイヤー人口を誇るオンラインゲーム『SSC(Star System Conquest)』。
数千数万の艦が存在するこのゲームでは、プレイヤーが所有する構造物「ホールドスター」が活動の主軸となっていた。
『Shin』という名前で活動をしていた黒川新輝(くろかわ しんき)は自らが保有する巨大ホールドスター、『Noa-Tun』の防衛戦の最中に寝落ちしてしまう。
次に目を覚ましたシンの目の前には、知らない天井があった。
夢のような転移を経験したシンだったが、深刻な問題に直面する。
ノーアトゥーンは戦いによってほぼ全壊! 物資も燃料も殆どない!
生き残るためにシンの手にある選択肢とは....?
異世界に転移したシンキと、何故か一緒に付いてきた『Noa-Tun』、そして個性派AIであるオーロラと共に、異世界宇宙の開拓が始まる!
※小説家になろう/カクヨムでも連載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる