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第三章 第二節 魔法少女大戦
第351話 リンはいきなり核心に切り込んできた
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李子は虚をつかれた。リンはいきなり核心に切り込んできた。
まるでバスケット・ボールの選手時代、自分が得意にしていたドリブル・フェイクのようだ。
いまのはさしずめクロスオーバー——。
右に行くと見せて左に切り返されたような、思いがけない問いかけに李子はあやうく狼狽えそうになった。
「なんのこと?」
なんとかはぐらかしたが、リンはそれを許さない。
「このあいだ、ブライトを診察してきたんでしょ。元気そうにしていた?。元気なわけないわね。だっていきなり休職を願いでたほどだったんだから。たかが、リョウマの幻影に四解文書の一節を聞かされたくらいでね」
どう言い逃れをしようかと思案して頭が混乱する。
だが、ありがたいことに、そこへショートが割り込んできた。
「ほんとうですか。ブライト司令が『四解文書』の一節を聞かされたって?。何番目の文書だったんです?」
「そうね。わたしも知らないわ。李子に聞いてみて。優秀な精神科医だから、たぶんブライトから聞き出したはずだから」
まるでショートとしめしあわせたような連携プレー。
まんまと嵌められたと李子は感じた。
「残念だけど、私は知らないわ。ブライトさん自身も自分が知らされた文書が何節目なのかはわからないそう……」
苦し紛れにそう言い訳をすると、リンはじろりと値踏みするような目で、李子を睨め付けた。が、これ以上は揺さぶったところでなにもでてこない、と判断したらしく、声のトーンを変えてきた。
「まったく、なぁに言われたかは知らないけれど、そんなに怖がる内容なのかしらねぇ」
「怖がっていた?」
「えぇ。休職願いを出したと聞いて、すぐにわたしはブライトを尋ねたの。そのときはなにかをひどく恐れていた印象だったけど……」
「そうですか?。わたしはそんな印象を持たなかった。なにかに嘖まされてずっと苦しんでいるとは思ったけど、怖がっているとは……」
そうリンの意見を否定しかけて、ふと去り際にブライトが口にしたことを思い出した。
「あぁ、そう言えば、ひとつだけ怖がって……、いえ、あれは畏怖に近い……、でもなにかを恐れていたわ」
「ほらぁ、やっぱりじゃない」
「ちがうの、リン。ブライトさんが恐れていたのは、この基地内にいる誰か……。タケルくん以外に『四解文書』を知っている人物なの」
「まさか。『四解文書』は歴代の99・9%のリーダー、旗艦マンゲツに搭乗するパイロットだけが知る権利と義務を負わされる情報よ。ほかの人が知っているなんてありえない」
「ええ、それはわかってる。ブライトさんが言っていたのは、自分が知ったものとおなじ節を知っている人のこと。彼はその人物をモンスターと呼んでいた。その節を知っていながら顔色ひとつ変えずにいられるモンスターだ……と」
「なんかこちらまでおかしくなる話ね」
リンが頭を捻りながらそう感想を絞り出すと、ショートはため息まじりに追随した。
まるでバスケット・ボールの選手時代、自分が得意にしていたドリブル・フェイクのようだ。
いまのはさしずめクロスオーバー——。
右に行くと見せて左に切り返されたような、思いがけない問いかけに李子はあやうく狼狽えそうになった。
「なんのこと?」
なんとかはぐらかしたが、リンはそれを許さない。
「このあいだ、ブライトを診察してきたんでしょ。元気そうにしていた?。元気なわけないわね。だっていきなり休職を願いでたほどだったんだから。たかが、リョウマの幻影に四解文書の一節を聞かされたくらいでね」
どう言い逃れをしようかと思案して頭が混乱する。
だが、ありがたいことに、そこへショートが割り込んできた。
「ほんとうですか。ブライト司令が『四解文書』の一節を聞かされたって?。何番目の文書だったんです?」
「そうね。わたしも知らないわ。李子に聞いてみて。優秀な精神科医だから、たぶんブライトから聞き出したはずだから」
まるでショートとしめしあわせたような連携プレー。
まんまと嵌められたと李子は感じた。
「残念だけど、私は知らないわ。ブライトさん自身も自分が知らされた文書が何節目なのかはわからないそう……」
苦し紛れにそう言い訳をすると、リンはじろりと値踏みするような目で、李子を睨め付けた。が、これ以上は揺さぶったところでなにもでてこない、と判断したらしく、声のトーンを変えてきた。
「まったく、なぁに言われたかは知らないけれど、そんなに怖がる内容なのかしらねぇ」
「怖がっていた?」
「えぇ。休職願いを出したと聞いて、すぐにわたしはブライトを尋ねたの。そのときはなにかをひどく恐れていた印象だったけど……」
「そうですか?。わたしはそんな印象を持たなかった。なにかに嘖まされてずっと苦しんでいるとは思ったけど、怖がっているとは……」
そうリンの意見を否定しかけて、ふと去り際にブライトが口にしたことを思い出した。
「あぁ、そう言えば、ひとつだけ怖がって……、いえ、あれは畏怖に近い……、でもなにかを恐れていたわ」
「ほらぁ、やっぱりじゃない」
「ちがうの、リン。ブライトさんが恐れていたのは、この基地内にいる誰か……。タケルくん以外に『四解文書』を知っている人物なの」
「まさか。『四解文書』は歴代の99・9%のリーダー、旗艦マンゲツに搭乗するパイロットだけが知る権利と義務を負わされる情報よ。ほかの人が知っているなんてありえない」
「ええ、それはわかってる。ブライトさんが言っていたのは、自分が知ったものとおなじ節を知っている人のこと。彼はその人物をモンスターと呼んでいた。その節を知っていながら顔色ひとつ変えずにいられるモンスターだ……と」
「なんかこちらまでおかしくなる話ね」
リンが頭を捻りながらそう感想を絞り出すと、ショートはため息まじりに追随した。
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