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第三章 第二節 魔法少女大戦
第333話 違和感があるの
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「28日後だとぉ」
次に亜獣イオージャが出現する予定タームが判明したことで、緊急に招集された会議でそれを告げられたウルスラ総司令は、不満そうにそう言った。
「えぇ、今までの亜獣で最長の間隔です。今までの実績からみると、通常は一週間以内に、ながくても二週間とあけずに次回の襲来があるものです」
エドがウルスラの機嫌を損ねたのではと怯えて、おっかなびっくりで抗弁した。
「いいじゃないですか?。その間に対策もとれるし、作戦も練れる」
ヤマトがまるで他人事のように、あっけらかんと言った。
「そうね。余裕ができてこっちは大歓迎だわ。それくらい時間があれば、今回痛めつけられたセラ・サターンもセラ・ジュピターもなんとか間に合わせられそう」
春日リンがヤマトの意見に追随したが、その目はレイとクララのほうにむけられていた。『痛めつけられた』という言い方に、パイロットの責を問うような、ほのめかしが感じられた。
だが、会議室には次の出撃までの猶予期間の長さに、安堵感のようなものが広がっていた。
レイ・オールマンはその空気感に戸惑っていた。自分のなかではとても時間が足りない緊急事態だという思いがあっただけに、どうしても納得がいかなかった。
「レイ、なにかあるの?」
ミサトがまるで叱責するかのような強い口調で、レイの名前を呼んだ。いつの間にか挙手をしていたらしい。レイは椅子から起ち上がった。
「みんな、これ見て欲しい」
中空でジェスチャーをすると、3D映像が再生されはじめた。
それは魔法少女たちとの戦いの終盤の攻防——。
最初に横一列のアブレスト編隊で急降下してくる五機の戦闘機。だが魔法少女たちが一斉にステッキをふると、数百メートル先の戦闘機が全機とも火をふき爆発する。
その編隊をおとりにして、真上からV字編隊で戦闘機が急降下してくる。魔法少女たちにむけてレーザー砲や銃弾を撃ち込むが、『移行領域』の傘に阻まれ、急旋回して離脱しようとしたところを、魔法攻撃にとらえられる。
戦闘機が急カーブを描いたところで、バラバラに砕け散ってから爆発した。
そこでレイは映像をストップさせた。
「違和感があるの」
「違和感?」
そくざに反応したのは、金田日だった。今回も『素体』のからだに憑依した形で、会議に参加している。戦闘中は部外者ということで、蚊帳の外だったので、積極的に情報を得ようと躍起になっているのが態度に現れたのだろう。
「なにが、どう違和感があるのかわからないな?」
「エド、あなたはどう?。なにかもやもやしない?」
レイはエドにも意見を求めたが、ふいをつかれたのもあって、ただ口をごにょごにょさせるだけでなにも発しなかった。
レイはこのなかの誰かひとりでも、自分とおなじ違和感を共有できていないのかと、全員を見回した。が、誰一人としてレイに賛同するものも、理解をしめすものもいなかった。
ただ、とまどいだけが、みんなの顔に浮かんでいた。
レイはヤマトのほうに目をむけた。
「タケル。あなたはどう?」
次に亜獣イオージャが出現する予定タームが判明したことで、緊急に招集された会議でそれを告げられたウルスラ総司令は、不満そうにそう言った。
「えぇ、今までの亜獣で最長の間隔です。今までの実績からみると、通常は一週間以内に、ながくても二週間とあけずに次回の襲来があるものです」
エドがウルスラの機嫌を損ねたのではと怯えて、おっかなびっくりで抗弁した。
「いいじゃないですか?。その間に対策もとれるし、作戦も練れる」
ヤマトがまるで他人事のように、あっけらかんと言った。
「そうね。余裕ができてこっちは大歓迎だわ。それくらい時間があれば、今回痛めつけられたセラ・サターンもセラ・ジュピターもなんとか間に合わせられそう」
春日リンがヤマトの意見に追随したが、その目はレイとクララのほうにむけられていた。『痛めつけられた』という言い方に、パイロットの責を問うような、ほのめかしが感じられた。
だが、会議室には次の出撃までの猶予期間の長さに、安堵感のようなものが広がっていた。
レイ・オールマンはその空気感に戸惑っていた。自分のなかではとても時間が足りない緊急事態だという思いがあっただけに、どうしても納得がいかなかった。
「レイ、なにかあるの?」
ミサトがまるで叱責するかのような強い口調で、レイの名前を呼んだ。いつの間にか挙手をしていたらしい。レイは椅子から起ち上がった。
「みんな、これ見て欲しい」
中空でジェスチャーをすると、3D映像が再生されはじめた。
それは魔法少女たちとの戦いの終盤の攻防——。
最初に横一列のアブレスト編隊で急降下してくる五機の戦闘機。だが魔法少女たちが一斉にステッキをふると、数百メートル先の戦闘機が全機とも火をふき爆発する。
その編隊をおとりにして、真上からV字編隊で戦闘機が急降下してくる。魔法少女たちにむけてレーザー砲や銃弾を撃ち込むが、『移行領域』の傘に阻まれ、急旋回して離脱しようとしたところを、魔法攻撃にとらえられる。
戦闘機が急カーブを描いたところで、バラバラに砕け散ってから爆発した。
そこでレイは映像をストップさせた。
「違和感があるの」
「違和感?」
そくざに反応したのは、金田日だった。今回も『素体』のからだに憑依した形で、会議に参加している。戦闘中は部外者ということで、蚊帳の外だったので、積極的に情報を得ようと躍起になっているのが態度に現れたのだろう。
「なにが、どう違和感があるのかわからないな?」
「エド、あなたはどう?。なにかもやもやしない?」
レイはエドにも意見を求めたが、ふいをつかれたのもあって、ただ口をごにょごにょさせるだけでなにも発しなかった。
レイはこのなかの誰かひとりでも、自分とおなじ違和感を共有できていないのかと、全員を見回した。が、誰一人としてレイに賛同するものも、理解をしめすものもいなかった。
ただ、とまどいだけが、みんなの顔に浮かんでいた。
レイはヤマトのほうに目をむけた。
「タケル。あなたはどう?」
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