上 下
334 / 1,035
第三章 第二節 魔法少女大戦

第333話 違和感があるの

しおりを挟む
「28日後だとぉ」

 次に亜獣イオージャが出現する予定タームが判明したことで、緊急に招集された会議でそれを告げられたウルスラ総司令は、不満そうにそう言った。
「えぇ、今までの亜獣で最長の間隔です。今までの実績からみると、通常は一週間以内に、ながくても二週間とあけずに次回の襲来があるものです」
 エドがウルスラの機嫌を損ねたのではと怯えて、おっかなびっくりで抗弁した。
「いいじゃないですか?。その間に対策もとれるし、作戦も練れる」
 ヤマトがまるで他人事のように、あっけらかんと言った。
「そうね。余裕ができてこっちは大歓迎だわ。それくらい時間があれば、今回痛めつけられたセラ・サターンもセラ・ジュピターもなんとか間に合わせられそう」
 春日リンがヤマトの意見に追随したが、その目はレイとクララのほうにむけられていた。『痛めつけられた』という言い方に、パイロットの責を問うような、ほのめかしが感じられた。
 だが、会議室には次の出撃までの猶予期間の長さに、安堵感のようなものが広がっていた。

 レイ・オールマンはその空気感に戸惑っていた。自分のなかではとても時間が足りない緊急事態だという思いがあっただけに、どうしても納得がいかなかった。
「レイ、なにかあるの?」
 ミサトがまるで叱責するかのような強い口調で、レイの名前を呼んだ。いつの間にか挙手をしていたらしい。レイは椅子から起ち上がった。
「みんな、これ見て欲しい」
 中空でジェスチャーをすると、3D映像が再生されはじめた。

 それは魔法少女たちとの戦いの終盤の攻防——。

 最初に横一列のアブレスト編隊で急降下してくる五機の戦闘機。だが魔法少女たちが一斉にステッキをふると、数百メートル先の戦闘機が全機とも火をふき爆発する。
 その編隊をおとりにして、真上からV字編隊で戦闘機が急降下してくる。魔法少女たちにむけてレーザー砲や銃弾を撃ち込むが、『移行領域トランジショナル・ゾーン』の傘に阻まれ、急旋回して離脱しようとしたところを、魔法攻撃にとらえられる。
 戦闘機が急カーブを描いたところで、バラバラに砕け散ってから爆発した。

 そこでレイは映像をストップさせた。
「違和感があるの」
「違和感?」
 そくざに反応したのは、金田日だった。今回も『素体』のからだに憑依した形で、会議に参加している。戦闘中は部外者ということで、蚊帳の外だったので、積極的に情報を得ようと躍起になっているのが態度に現れたのだろう。
「なにが、どう違和感があるのかわからないな?」
「エド、あなたはどう?。なにかもやもやしない?」
 レイはエドにも意見を求めたが、ふいをつかれたのもあって、ただ口をごにょごにょさせるだけでなにも発しなかった。
 レイはこのなかの誰かひとりでも、自分とおなじ違和感を共有できていないのかと、全員を見回した。が、誰一人としてレイに賛同するものも、理解をしめすものもいなかった。
 ただ、とまどいだけが、みんなの顔に浮かんでいた。
 レイはヤマトのほうに目をむけた。

「タケル。あなたはどう?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

アルビオン王国宙軍士官物語(クリフエッジシリーズ合本版)

愛山雄町
SF
 ハヤカワ文庫さんのSF好きにお勧め! ■■■  人類が宇宙に進出して約五千年後、地球より数千光年離れた銀河系ペルセウス腕を舞台に、後に“クリフエッジ(崖っぷち)”と呼ばれることになるアルビオン王国軍士官クリフォード・カスバート・コリングウッドの物語。 ■■■  宇宙暦4500年代、銀河系ペルセウス腕には四つの政治勢力、「アルビオン王国」、「ゾンファ共和国」、「スヴァローグ帝国」、「自由星系国家連合」が割拠していた。  アルビオン王国は領土的野心の強いゾンファ共和国とスヴァローグ帝国と戦い続けている。  4512年、アルビオン王国に一人の英雄が登場した。  その名はクリフォード・カスバート・コリングウッド。  彼は柔軟な思考と確固たる信念の持ち主で、敵国の野望を打ち砕いていく。 ■■■  小説家になろうで「クリフエッジシリーズ」として投稿している作品を合本版として、こちらでも投稿することにしました。 ■■■ 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+でも投稿しております。

アシュターからの伝言

あーす。
SF
プレアデス星人アシュターに依頼を受けたアースルーリンドの面々が、地球に降り立つお話。 なんだけど、まだ出せない情報が含まれてるためと、パーラーにこっそり、メモ投稿してたのにパーラーが使えないので、それまで現実レベルで、聞いたり見たりした事のメモを書いています。 テレパシー、ビジョン等、現実に即した事柄を書き留め、どこまで合ってるかの検証となります。 その他、王様の耳はロバの耳。 そこらで言えない事をこっそりと。 あくまで小説枠なのに、検閲が入るとか理解不能。 なので届くべき人に届けばそれでいいお話。 にして置きます。 分かる人には分かる。 響く人には響く。 何かの気づきになれば幸いです。

VRMMOでスナイパーやってます

nanaさん
SF
ーーーーーーーーーーーーーーーー 私の名は キリュー Brave Soul online というVRMMOにてスナイパーをやっている スナイパーという事で勿論ぼっちだ だが私は別にそれを気にしてはいない! 何故なら私は一人で好きな事を好きにやるのが趣味だからだ! その趣味というのがこれ 狙撃である スキルで隠れ敵を察知し技術で当てる 狙うは頭か核のどちらか 私はこのゲームを始めてから数ヶ月でこのプレイスタイルになった 狙撃中はターゲットが来るまで暇なので本とかを読んでは居るが最近は配信とやらも始めた だがやはりこんな狙撃待ちの配信を見る人は居ないだろう そう思っていたが... これは周りのレベルと自分のレベルの差を理解してない主人公と配信に出現する奇妙な視聴者達 掲示板の民 現実での繋がり等がこのゲームの世界に混沌をもたらす話であり 現実世界で過去と向き合い新たな人生(堕落した生活)を過ごしていく物語である 尚 偶に明らかにスナイパーがするような行為でない事を頻繁にしているが彼女は本当にスナイパーなのだろうか...

リンダ

Tro
キャラ文芸
武装?メイドが被保険者である貴方をあらゆる災害から守ります。 海外出張のため飛行機で移動中の主人公は、窓の外に異様な光の玉を目撃します。 そこから放たれた四つの光が、ある地域の四隅に聳え立ち、三つの国を囲みます。 光の柱となったその間隔はおよそ2000Km。 その内側で、主人公が七つの災いに翻弄されていきます。 それでは、心の準備が出来次第、主人公と共に旅立ちましょう。

銀河太平記

武者走走九郎or大橋むつお
SF
 いまから二百年の未来。  前世紀から移住の始まった火星は地球のしがらみから離れようとしていた。火星の中緯度カルディア平原の大半を領域とする扶桑公国は国民の大半が日本からの移民で構成されていて、臣籍降下した扶桑宮が征夷大将軍として幕府を開いていた。  その扶桑幕府も代を重ねて五代目になろうとしている。  折しも地球では二千年紀に入って三度目のグローバリズムが破綻して、東アジア発の動乱期に入ろうとしている。  火星と地球を舞台として、銀河規模の争乱の時代が始まろうとしている。

第一次世界大戦はウィルスが終わらせた・しかし第三次世界大戦はウィルスを終らせる為に始められた・bai/AI

パラレル・タイム
SF
この作品は創造論を元に30年前に『あすかあきお』さんの コミック本とジョンタイターを初めとするタイムトラベラーや シュタインズゲートとGATE(ゲート) 自衛隊 彼の地にて・斯く戦えり アングロ・サクソン計画に影響されています 当時発行されたあすかあきおさんの作品を引っ張り出して再読すると『中国』が経済大国・ 強大な軍事力を持つ超大国化や中東で 核戦争が始まる事は私の作品に大きな影響を与えましたが・一つだけ忘れていたのが 全世界に伝染病が蔓延して多くの方が無くなる部分を忘れていました 本編は反物質宇宙でアベが艦長を務める古代文明の戦闘艦アルディーンが 戦うだけでなく反物質人類の未来を切り開く話を再開しました この話では主人公のアベが22世紀から21世紀にタイムトラベルした時に 分岐したパラレルワールドの話を『小説家になろう』で 『青い空とひまわりの花が咲く大地に生まれて』のタイトルで発表する準備に入っています 2023年2月24日第三話が書き上がり順次発表する予定です 話は2019年にウィルス2019が発生した 今の我々の世界に非常に近い世界です 物語は第四次世界大戦前夜の2038年からスタートします

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

Select Life Online~最後にゲームをはじめた出遅れ組

瑞多美音
SF
 福引の景品が発売分最後のパッケージであると運営が認め話題になっているVRMMOゲームをたまたま手に入れた少女は……  「はあ、農業って結構重労働なんだ……筋力が足りないからなかなか進まないよー」※ STRにポイントを振れば解決することを思いつきません、根性で頑張ります。  「なんか、はじまりの街なのに外のモンスター強すぎだよね?めっちゃ、死に戻るんだけど……わたし弱すぎ?」※ここははじまりの街ではありません。  「裁縫かぁ。布……あ、畑で綿を育てて布を作ろう!」※布を売っていることを知りません。布から用意するものと思い込んでいます。  リアルラックが高いのに自分はついてないと思っている高山由莉奈(たかやまゆりな)。ついていないなーと言いつつ、ゲームのことを知らないままのんびり楽しくマイペースに過ごしていきます。  そのうち、STRにポイントを振れば解決することや布のこと、自身がどの街にいるか知り大変驚きますが、それでもマイペースは変わらず……どこかで話題になるかも?しれないそんな少女の物語です。  出遅れ組と言っていますが主人公はまったく気にしていません。      ○*○*○*○*○*○*○*○*○*○*○  ※VRMMO物ですが、作者はゲーム物執筆初心者です。つたない文章ではありますが広いお心で読んで頂けたら幸いです。  ※1話約2000〜3000字程度です。時々長かったり短い話もあるかもしれません。

処理中です...