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第三章 第二節 魔法少女大戦
第322話 クララ、恐怖心はどう?。残ってない?
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「ああ、そうだとも。レイくんが追いつめられたほどだったのだ。クララくんも気にしないほうがいい」
ユウキがレイのことばを引用して、励ましのことばをかけてくる。だが、それにレイが噛みついた。
「追いつめられた?。わたしが?」
「そうよ、レイ。あんた危なかったじゃないのぉ。ずっと這いつくばって逃げてばかりだったでしょうがぁ」
「あれはあたしが追いつめたはずだけど?」
「はん、そう言い張りたいならかまわないわよ。でもあの厄介な魔法少女がでてきてから、防戦一方になったでしょうがぁ」
「うん、そうね。魔法少女と亜獣を一緒に相手にするのは、なかなか難しいのは確か」
「でしょう。一体だけでも大変なのに、何百体も相手にしたのよ」
そうアスカは言うと、クララのほうに顔をむけて続けた。
「クララ、レイも言ってる。やっぱ、今日の奴は初戦で相手するには、けっこうな手強いヤツだったんだと思うわ」
クララはアスカに必要以上の気を使わせてしまっていると感じた。ライバルから気配りされているのは堪え難かったが、今回はそれを甘んじて受けることにした。
おのれのプライドを盾に抗弁するには、あまりも疲れていた。
「ええ。そうですね。生きてもどれて幸運でしたわ」
それだけ言って、二階の自室にひきあげようとした。
だが、ヤマト・タケルがそれを許さなかった。
「クララ、恐怖心はどう?。残ってない?」
------------------------------------------------------------
クララはみんなが自分を待っていたのは、いやすくなくともヤマトが待っていたのは、この答えを聞くためなのだと瞬時に理解した。
次の戦いに参加させていいのか。今後、パイロットとしてやっていけるのか。そしてなによりも、これからチームとしてやっていけるのか——。
この答え方がそれらを判断する試金石になるにちがいない。
「そうね……」
そう軽やかに言ってからどう答えるのが正解なのか、クララは自分の頭の中の隅から隅までをまさぐった。目まぐるしく解を求めながら、クララはアスカを見た。
このアスカでさえ初陣でリョウマが亜獣にとりこまれたせいで、出動許可がおりなかった。いや、一度はパイロットとして失格の烙印を押されたと聞いた——。
「怖かった、というより、焦ったと言ったほうがいいかしら……」
クララはことばを慎重に紡ぎ出した。
「あの時確実に仕留められる、って確信して飛び出しましたからね。まさか魔法少女たちが思いがけない攻撃をしてきて、目の前からレイさんのセラ・サターンがいきなり消えてしまうなんて思いもしませんでしたから」
「あぁ、あれは見ていたわたしたちも焦った」
ユウキがその時の様子をまざまざと思いだしたような感想を口にした。ユウキなりのアシストだとすぐにわかった。
「ごめんなさいね。ずいぶん、みなさんの肝を冷やしてしまったようですね」
ユウキがレイのことばを引用して、励ましのことばをかけてくる。だが、それにレイが噛みついた。
「追いつめられた?。わたしが?」
「そうよ、レイ。あんた危なかったじゃないのぉ。ずっと這いつくばって逃げてばかりだったでしょうがぁ」
「あれはあたしが追いつめたはずだけど?」
「はん、そう言い張りたいならかまわないわよ。でもあの厄介な魔法少女がでてきてから、防戦一方になったでしょうがぁ」
「うん、そうね。魔法少女と亜獣を一緒に相手にするのは、なかなか難しいのは確か」
「でしょう。一体だけでも大変なのに、何百体も相手にしたのよ」
そうアスカは言うと、クララのほうに顔をむけて続けた。
「クララ、レイも言ってる。やっぱ、今日の奴は初戦で相手するには、けっこうな手強いヤツだったんだと思うわ」
クララはアスカに必要以上の気を使わせてしまっていると感じた。ライバルから気配りされているのは堪え難かったが、今回はそれを甘んじて受けることにした。
おのれのプライドを盾に抗弁するには、あまりも疲れていた。
「ええ。そうですね。生きてもどれて幸運でしたわ」
それだけ言って、二階の自室にひきあげようとした。
だが、ヤマト・タケルがそれを許さなかった。
「クララ、恐怖心はどう?。残ってない?」
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クララはみんなが自分を待っていたのは、いやすくなくともヤマトが待っていたのは、この答えを聞くためなのだと瞬時に理解した。
次の戦いに参加させていいのか。今後、パイロットとしてやっていけるのか。そしてなによりも、これからチームとしてやっていけるのか——。
この答え方がそれらを判断する試金石になるにちがいない。
「そうね……」
そう軽やかに言ってからどう答えるのが正解なのか、クララは自分の頭の中の隅から隅までをまさぐった。目まぐるしく解を求めながら、クララはアスカを見た。
このアスカでさえ初陣でリョウマが亜獣にとりこまれたせいで、出動許可がおりなかった。いや、一度はパイロットとして失格の烙印を押されたと聞いた——。
「怖かった、というより、焦ったと言ったほうがいいかしら……」
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「あぁ、あれは見ていたわたしたちも焦った」
ユウキがその時の様子をまざまざと思いだしたような感想を口にした。ユウキなりのアシストだとすぐにわかった。
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