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第三章 第一節 魔法少女
第281話 地球に悪夢が穿たれる
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詐欺師——。
ヤマトは頭の中で金田日に、あらたにレッテル貼りした。
あまりにも嘘臭い話で簡単には信じられるはずもなかった。が、金田日は得意げに続けた。
「エド君はおそらく先日のイタリアで捕捉された亜獣反応ではじめて、今回の等身大の亜獣の存在を知ったんじゃないかな?」
「ちょっと待ってくれ。金田日、君はなぜイタリアの件を知ってる?」
逆にエドが問い詰めるように金田日の前に進みでた。いいように振る舞わされているこの場の主導権を、なんとかこちらに引き寄せたい、という必死の行動に見えた。
金田日は手を前につきだすと、とまれ、とばかりに牽制した。
「おいおい、エド。すごむなよ。君は今『素体』に憑依してるんだ。アンドロイドに詰め寄られても、ぼくは怖くもなんともないよ」
金田日はわざとらしくエドを押し戻すような仕草をしてみせてから訊いた。
「エド、逆に聞きたい。なぜ君はイタリアの件しか知らないのかな?」
「それはどういうことなんだ!」
「今回とおなじ亜獣反応はすでに数か月前からいくつもあらわれているんだよ」
「ちょっとお、それ、どういうこと!」
ふいにアスカの声が会話のなかに割り込んできた。モニタリングしているだけでは我慢できなかったらしい。
「ちょっと、アスカ、黙ってちょうだい!」
草薙が誰もいない中空に手を掲げて、場を制するようなジェスチャーをしてから、できるだけ、声を抑制して訊いた。
「金田日さん、いえ金田日教授、今のはどういうことでしょう?」
金田日さんがエドにあきれた目をむけたまま、「この方は?」と尋ねた。エドは興奮とも怒りとも恐怖ともつかない表情で、体を震わせていたが、小さな声で促されるまま答えた。
「あぁ……。こちらは……、警備責任者の草薙大佐。そしてこちらは……」
エドがヤマトを紹介しようとしたところで、まるでエドは用済みとばかりに、金田日は大声をあげた。
「ヤマトタケル!。もちろん存じあげてるよ。私がこの世でもっとも会いたいと、請い願っている人物だからね」
「請い願う?」
「私はきみと一緒に仕事をしたいと願う、この世で一番の人物だ。私だったら亜獣をもっとも効率よく倒せる方法を伝授できるという確信がある」
ヤマトの脳裏に新たなレッテルがべたっと貼られた。
野心家——。
「で、数カ月前から確認されてるって、どういうこと?」
草薙が話を本題に戻そうとした。
金田日は軽く首肯すると、死体のすぐ上の空間に3Dの『地球儀』のデータを呼びだした。ヤマトはその無遠慮さに思わず眉をひそめた。だが、金田日はそんな様子も気にかけもせず操作をはじめた。研究成果をひと前で、とりわけヤマト・タケルの前で披瀝できる喜びに、まわりへの配慮と死者への畏敬の念がおろそかになっている。
戦いや目的のために何万人もの犠牲を強いてきたヤマトだったが、金田日が死者の尊厳をないがしろにしていることに、なぜか無性に腹が立った。
われながらまったく自分勝手だ——。
金田日の操作の手が止まると、ヤマトたちの目の高さより、すこし高い位置で地球の3Dグラフィックがくるくると回りはじめた。
「最初に観測されたのは三年前、ギリシアのアテネ——」
金田日はさきほどまでのうさん臭さは消え去り、教授の肩書きにふさわしい、冷静な様子で説明をはじめた。
「その時は、あまりにも一瞬の反応だったので、計器の故障か誤作動と考えられた。だがそのシグナルは、それ以降、なんどもなんども頻発した。技術部の主任はセンサーが敏感すぎると結論づけてね。一定の微弱な信号はフィルタリング処理すべきだと主張してきた」
「あぁ、その通りだ。ぼくはそうするよう命じた」
エドが金田日に挑むような態度で、その主任なる人物を後押しした。
「だが……、私はこれはなにかの警告、もしくはあたらしい形の侵攻の仕方ではないかと危惧してね。逆にその感度をとことんまで高めて、どんな微細な信号もキャッチアップするように命じたんだよ」
金田日はそこで一旦ことばを切った。あきらかにことばを溜めているのがわかる。ヤマト、エド、草薙だけでなく、その背後でモニタリングしている関係者たちにむけてのプレゼンのクライマックス——。
金田日はたくらみに満ちた、すこし意地悪げな視線をエドにむけて、ここぞとばかりに語気を強めて、ことばを吐き出した。
「その結果がこれだよ!」
目の前に投影されている『地球』のデータの、ギリシアの一ヶ所に小さな赤い点がポツンと灯った。その次はスペイン、次はフランス。その赤い点は『地球儀』のゆっくりとした回転に沿ってポツポツと灯ってゆく。やがて、それは地球上のあらゆる部分に、驚くほどの点を点描しはじめる。そして『地球儀』が三回転ほどしたあとには、地球の地表は赤い点で覆い尽くされていた。
まるで地球が『じんましん』でも発症したかのように、赤い斑点が隈無く花開いていた。
それを見ていた誰もが、ことばをうしなっていた。
エドはもちろん、ヤマト自身も——。
それがなにを意味するかわかっている者は、だれだってそうなる。目の前で、地球に悪夢が一点、一点、穿たれているのだから……。
「その数は……、もうすぐ9000。すぐに一万を超える」
金田日のその残酷な報告は、腹立たしいことに、晴れやかな口調でみんなに伝えられた。
ヤマトは頭の中で金田日に、あらたにレッテル貼りした。
あまりにも嘘臭い話で簡単には信じられるはずもなかった。が、金田日は得意げに続けた。
「エド君はおそらく先日のイタリアで捕捉された亜獣反応ではじめて、今回の等身大の亜獣の存在を知ったんじゃないかな?」
「ちょっと待ってくれ。金田日、君はなぜイタリアの件を知ってる?」
逆にエドが問い詰めるように金田日の前に進みでた。いいように振る舞わされているこの場の主導権を、なんとかこちらに引き寄せたい、という必死の行動に見えた。
金田日は手を前につきだすと、とまれ、とばかりに牽制した。
「おいおい、エド。すごむなよ。君は今『素体』に憑依してるんだ。アンドロイドに詰め寄られても、ぼくは怖くもなんともないよ」
金田日はわざとらしくエドを押し戻すような仕草をしてみせてから訊いた。
「エド、逆に聞きたい。なぜ君はイタリアの件しか知らないのかな?」
「それはどういうことなんだ!」
「今回とおなじ亜獣反応はすでに数か月前からいくつもあらわれているんだよ」
「ちょっとお、それ、どういうこと!」
ふいにアスカの声が会話のなかに割り込んできた。モニタリングしているだけでは我慢できなかったらしい。
「ちょっと、アスカ、黙ってちょうだい!」
草薙が誰もいない中空に手を掲げて、場を制するようなジェスチャーをしてから、できるだけ、声を抑制して訊いた。
「金田日さん、いえ金田日教授、今のはどういうことでしょう?」
金田日さんがエドにあきれた目をむけたまま、「この方は?」と尋ねた。エドは興奮とも怒りとも恐怖ともつかない表情で、体を震わせていたが、小さな声で促されるまま答えた。
「あぁ……。こちらは……、警備責任者の草薙大佐。そしてこちらは……」
エドがヤマトを紹介しようとしたところで、まるでエドは用済みとばかりに、金田日は大声をあげた。
「ヤマトタケル!。もちろん存じあげてるよ。私がこの世でもっとも会いたいと、請い願っている人物だからね」
「請い願う?」
「私はきみと一緒に仕事をしたいと願う、この世で一番の人物だ。私だったら亜獣をもっとも効率よく倒せる方法を伝授できるという確信がある」
ヤマトの脳裏に新たなレッテルがべたっと貼られた。
野心家——。
「で、数カ月前から確認されてるって、どういうこと?」
草薙が話を本題に戻そうとした。
金田日は軽く首肯すると、死体のすぐ上の空間に3Dの『地球儀』のデータを呼びだした。ヤマトはその無遠慮さに思わず眉をひそめた。だが、金田日はそんな様子も気にかけもせず操作をはじめた。研究成果をひと前で、とりわけヤマト・タケルの前で披瀝できる喜びに、まわりへの配慮と死者への畏敬の念がおろそかになっている。
戦いや目的のために何万人もの犠牲を強いてきたヤマトだったが、金田日が死者の尊厳をないがしろにしていることに、なぜか無性に腹が立った。
われながらまったく自分勝手だ——。
金田日の操作の手が止まると、ヤマトたちの目の高さより、すこし高い位置で地球の3Dグラフィックがくるくると回りはじめた。
「最初に観測されたのは三年前、ギリシアのアテネ——」
金田日はさきほどまでのうさん臭さは消え去り、教授の肩書きにふさわしい、冷静な様子で説明をはじめた。
「その時は、あまりにも一瞬の反応だったので、計器の故障か誤作動と考えられた。だがそのシグナルは、それ以降、なんどもなんども頻発した。技術部の主任はセンサーが敏感すぎると結論づけてね。一定の微弱な信号はフィルタリング処理すべきだと主張してきた」
「あぁ、その通りだ。ぼくはそうするよう命じた」
エドが金田日に挑むような態度で、その主任なる人物を後押しした。
「だが……、私はこれはなにかの警告、もしくはあたらしい形の侵攻の仕方ではないかと危惧してね。逆にその感度をとことんまで高めて、どんな微細な信号もキャッチアップするように命じたんだよ」
金田日はそこで一旦ことばを切った。あきらかにことばを溜めているのがわかる。ヤマト、エド、草薙だけでなく、その背後でモニタリングしている関係者たちにむけてのプレゼンのクライマックス——。
金田日はたくらみに満ちた、すこし意地悪げな視線をエドにむけて、ここぞとばかりに語気を強めて、ことばを吐き出した。
「その結果がこれだよ!」
目の前に投影されている『地球』のデータの、ギリシアの一ヶ所に小さな赤い点がポツンと灯った。その次はスペイン、次はフランス。その赤い点は『地球儀』のゆっくりとした回転に沿ってポツポツと灯ってゆく。やがて、それは地球上のあらゆる部分に、驚くほどの点を点描しはじめる。そして『地球儀』が三回転ほどしたあとには、地球の地表は赤い点で覆い尽くされていた。
まるで地球が『じんましん』でも発症したかのように、赤い斑点が隈無く花開いていた。
それを見ていた誰もが、ことばをうしなっていた。
エドはもちろん、ヤマト自身も——。
それがなにを意味するかわかっている者は、だれだってそうなる。目の前で、地球に悪夢が一点、一点、穿たれているのだから……。
「その数は……、もうすぐ9000。すぐに一万を超える」
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