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第二章 第二節 電幽霊(サイバー・ゴースト)戦
第252話 ヤマトとクララはぎりぎり人間の形をたもっている肉塊になっていた
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「タケルぅぅぅぅ。大砲を撃ってきたわ!」
アスカの警告の叫びが耳朶を打った。だが、逃れたくてもからだを塔の内壁に杭打ちされている身では、身じろぎひとつできなかった。
砲撃の音ははくぐもった雷鳴のようなものにしか聞こえなかった。が、そのすぐあとにドーンという真横に雷が落ちたような爆発音ととともに、強烈な衝撃が塔を揺らした。
直下型地震にでもみまわれたかのように、強烈で絶対的な破壊が襲ってきた。
頭上から破片がバラバラとおちてくるのが見えた。すぐさまヤマトはクララを庇おうとからだを捻ろうとした。だが、どてっ腹を刺し貫かれている状態では、やれることは限られていた。ましてやクララは自分の背中側にいる。せめて覆いかぶさることでもできればと思ったが、それも果たせない。
ふいにクララのふくよかな胸が背中にあたった。うしろからクララがからだを押しつけてきていた。クララは身を挺してすこしでも、ヤマトのからだを守ろうとしていた。
「クララ、よせ!」
「せめて、タケルさんだけ……」
上から落ちてきた瓦礫の雨がクララのことばを遮った。いくつもの塊がヤマトとクララの体を容赦なく打ちつける。塔は擬態した生物のはずだったが崩れ落ちてきた破片は、固いレンガとそれの塊でしかなかった。
無慈悲に降ってくる落下物が、ふたりのからだを直撃し、ドスンと重苦しい音を立てる。と、続けざまにゴキッという破砕音、ベチャッというなにかが潰れる音、ボキッという骨が折れる音が、まるで打撃音のハーモニーのように塔内に反響する。
頭を守っていた腕は骨が砕け、指も何本か飛び散って頭蓋は割れ、血や脳漿が噴き出しはじめる。からだのほうも同様で、背骨や肋骨は折れ、見えているあらゆる部分の肉を服ごと削り取っていた。肉は裂けて血が噴き出し、骨が見えはじめている。片脚は膝下からぶらんと力なく、今にももげ落ちそうだ。
最後にエアーバイクほどもある大きな破片が、ふたりの左半身にぶつかり、そのまま跳ねてから下に落ちていった。
崩落がおさまった時、二人はぎりぎり人間の形をたもっている肉塊だった。
数回は確実に死んでいるレベルの致命的な損傷で、どこもぐちゃぐちゃに潰れている。打撲、裂傷、内出血、出血、内臓破裂、骨折、粉砕、部位の欠損……。まるで腹を刺されて動きできないところを、猛禽類についばまれたような、見るも無残な骸。
「クララ、大丈夫か」
ヤマトが苦しげな息の下から言った。肺が潰れて声がうまく出せないのがもどかしい。ヤマトには背後にいるクララがどんな状態になっているかわからない。
「大丈夫ですわ。すくなくとも、足や腕がもげおちるほどの損傷は受けてません」
だがその声にはひゅーひゅーと空気の漏れるような音が混じる。ヤマトとおなじように肺か気管にダメージを喰らっていることがすぐにわかった。
ヤマトは上半身を捻ってうしろをむこうとしたが、クララがうしろから強く抱きしめて、押しとどめてきた。
「タケルさん。今、振り向かないでください……。わたし、頭を半分潰されました……」
ヤマトは動かしかけた体躯から力を抜いた。
「今、マナで修復します……。すこしだけ時間をください」
「あ、あぁ……、ごめん」
ヤマトはそのまま黙りこんだ。
背後からクララの使うマナの香りが漂ってきた。『癒しの力』は誰が行使しても、さわやかな薫風めいて感じられるものだが、クララのマナはそれに加えて、甘くて華やかなフローラルな香りがした。
ふと気づくと、もげかかっていた足や、肉が裂けて血やリンパ液が噴き出ていた背中の肉が修復しはじめていた。
「クララ。ぼくの……」
「いいえ、タケルさん。今度は私のマナを使わせて下さい。わたしのほうがタケルさんより、まだマナが残ってますから……」
「そうか。助かる……」
ここはクララの処置に甘えることにした。ヤマトは真後ろのクララに寄り掛かってしまわないように気をつけながら、背中をすこし反らせて上を見あげた。
数百メートル上、塔の天井部分に穴があいているのがわかった。目を凝らすと、その先端部分はぐにゃぐにゃと揺れめいてみえる。
この生物、苦しんでいる?。
今の砲撃でどこか中枢部分をやられたのだろうか。まるで塩をかけられたなめくじのように、塔がのたうち回っていた。落ちてきたこの生物の断片は硬く、残酷なまでのダメージを食らわせてきたが、やはりこの塔は生物なのだ——。
「タケル、大丈夫?」
アスカの声が聞こえた。おそるおそる状況を探るような囁き声。
まったくアスカらしくない——。
「あぁ、なんとかね。脳がはみ出して、いくつかの内臓が破裂して、足がちぎれかけた以外は問題ない。今、クララに修復してもらった。お陰で元通りだ。まぁ、腹が矢に貫かれたままだけどね」
「ごめん。この位置からだとマナをとばして、タケルを修復してあげられない」
「あ、いや、そういう意味で言ったんじゃ……」
ちょっと冗談がすぎたかと釈明しかけたが、その憤りの行き先がクララに向いた。
「クララ。ちょっとぉ。あんたがついてて、なんでタケルが危険な目にあってるわけぇ」
「ごめんなさい、アスカさん。こちらのエリアのスキルでは、そちらのように、マナを使ってバリアを張ったり、銃を撃ったりできない……」
「は、言い訳はたくさん。あんた、あたしと張り合うって宣言したんだからね。タケルのこと命懸けで守んなさいよね」
「ええ、わかってますわ。わたしのマナを全部使いきってでも、タケルさんをお守りしますわ」
「約束よ。じゃないと許さないわよ!」
「じゃあ、アスカさん。はやくタケルさんを救ってください。でないと……」
そこまでクララが言ったところで、アスカが唐突にことばをさえぎった。
「ちょっと待って、クララ。戦艦が上空に静止したわ」
ヤマトが上を見あげた。いまや煙突のようになった塔の先端の穴から、なにか巨大な物体が近づいているのがかいま見えた。
「タケル、まずいわ。兵がそっちに降下しようとしている!」
アスカの警告の叫びが耳朶を打った。だが、逃れたくてもからだを塔の内壁に杭打ちされている身では、身じろぎひとつできなかった。
砲撃の音ははくぐもった雷鳴のようなものにしか聞こえなかった。が、そのすぐあとにドーンという真横に雷が落ちたような爆発音ととともに、強烈な衝撃が塔を揺らした。
直下型地震にでもみまわれたかのように、強烈で絶対的な破壊が襲ってきた。
頭上から破片がバラバラとおちてくるのが見えた。すぐさまヤマトはクララを庇おうとからだを捻ろうとした。だが、どてっ腹を刺し貫かれている状態では、やれることは限られていた。ましてやクララは自分の背中側にいる。せめて覆いかぶさることでもできればと思ったが、それも果たせない。
ふいにクララのふくよかな胸が背中にあたった。うしろからクララがからだを押しつけてきていた。クララは身を挺してすこしでも、ヤマトのからだを守ろうとしていた。
「クララ、よせ!」
「せめて、タケルさんだけ……」
上から落ちてきた瓦礫の雨がクララのことばを遮った。いくつもの塊がヤマトとクララの体を容赦なく打ちつける。塔は擬態した生物のはずだったが崩れ落ちてきた破片は、固いレンガとそれの塊でしかなかった。
無慈悲に降ってくる落下物が、ふたりのからだを直撃し、ドスンと重苦しい音を立てる。と、続けざまにゴキッという破砕音、ベチャッというなにかが潰れる音、ボキッという骨が折れる音が、まるで打撃音のハーモニーのように塔内に反響する。
頭を守っていた腕は骨が砕け、指も何本か飛び散って頭蓋は割れ、血や脳漿が噴き出しはじめる。からだのほうも同様で、背骨や肋骨は折れ、見えているあらゆる部分の肉を服ごと削り取っていた。肉は裂けて血が噴き出し、骨が見えはじめている。片脚は膝下からぶらんと力なく、今にももげ落ちそうだ。
最後にエアーバイクほどもある大きな破片が、ふたりの左半身にぶつかり、そのまま跳ねてから下に落ちていった。
崩落がおさまった時、二人はぎりぎり人間の形をたもっている肉塊だった。
数回は確実に死んでいるレベルの致命的な損傷で、どこもぐちゃぐちゃに潰れている。打撲、裂傷、内出血、出血、内臓破裂、骨折、粉砕、部位の欠損……。まるで腹を刺されて動きできないところを、猛禽類についばまれたような、見るも無残な骸。
「クララ、大丈夫か」
ヤマトが苦しげな息の下から言った。肺が潰れて声がうまく出せないのがもどかしい。ヤマトには背後にいるクララがどんな状態になっているかわからない。
「大丈夫ですわ。すくなくとも、足や腕がもげおちるほどの損傷は受けてません」
だがその声にはひゅーひゅーと空気の漏れるような音が混じる。ヤマトとおなじように肺か気管にダメージを喰らっていることがすぐにわかった。
ヤマトは上半身を捻ってうしろをむこうとしたが、クララがうしろから強く抱きしめて、押しとどめてきた。
「タケルさん。今、振り向かないでください……。わたし、頭を半分潰されました……」
ヤマトは動かしかけた体躯から力を抜いた。
「今、マナで修復します……。すこしだけ時間をください」
「あ、あぁ……、ごめん」
ヤマトはそのまま黙りこんだ。
背後からクララの使うマナの香りが漂ってきた。『癒しの力』は誰が行使しても、さわやかな薫風めいて感じられるものだが、クララのマナはそれに加えて、甘くて華やかなフローラルな香りがした。
ふと気づくと、もげかかっていた足や、肉が裂けて血やリンパ液が噴き出ていた背中の肉が修復しはじめていた。
「クララ。ぼくの……」
「いいえ、タケルさん。今度は私のマナを使わせて下さい。わたしのほうがタケルさんより、まだマナが残ってますから……」
「そうか。助かる……」
ここはクララの処置に甘えることにした。ヤマトは真後ろのクララに寄り掛かってしまわないように気をつけながら、背中をすこし反らせて上を見あげた。
数百メートル上、塔の天井部分に穴があいているのがわかった。目を凝らすと、その先端部分はぐにゃぐにゃと揺れめいてみえる。
この生物、苦しんでいる?。
今の砲撃でどこか中枢部分をやられたのだろうか。まるで塩をかけられたなめくじのように、塔がのたうち回っていた。落ちてきたこの生物の断片は硬く、残酷なまでのダメージを食らわせてきたが、やはりこの塔は生物なのだ——。
「タケル、大丈夫?」
アスカの声が聞こえた。おそるおそる状況を探るような囁き声。
まったくアスカらしくない——。
「あぁ、なんとかね。脳がはみ出して、いくつかの内臓が破裂して、足がちぎれかけた以外は問題ない。今、クララに修復してもらった。お陰で元通りだ。まぁ、腹が矢に貫かれたままだけどね」
「ごめん。この位置からだとマナをとばして、タケルを修復してあげられない」
「あ、いや、そういう意味で言ったんじゃ……」
ちょっと冗談がすぎたかと釈明しかけたが、その憤りの行き先がクララに向いた。
「クララ。ちょっとぉ。あんたがついてて、なんでタケルが危険な目にあってるわけぇ」
「ごめんなさい、アスカさん。こちらのエリアのスキルでは、そちらのように、マナを使ってバリアを張ったり、銃を撃ったりできない……」
「は、言い訳はたくさん。あんた、あたしと張り合うって宣言したんだからね。タケルのこと命懸けで守んなさいよね」
「ええ、わかってますわ。わたしのマナを全部使いきってでも、タケルさんをお守りしますわ」
「約束よ。じゃないと許さないわよ!」
「じゃあ、アスカさん。はやくタケルさんを救ってください。でないと……」
そこまでクララが言ったところで、アスカが唐突にことばをさえぎった。
「ちょっと待って、クララ。戦艦が上空に静止したわ」
ヤマトが上を見あげた。いまや煙突のようになった塔の先端の穴から、なにか巨大な物体が近づいているのがかいま見えた。
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