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第二章 第二節 電幽霊(サイバー・ゴースト)戦
第249話 さぁ、レッツダンスなのデス
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突然、出現した『 』にユウキはすぐに対応した。もういちいち驚いてはいない。先ほどからレイがいつもとちがう顔を見せはじめていたので、ある程度の覚悟もあった。
「『 』くん。どうやって?」
「どうも、このゲームはこちら側の力が充分発揮できるみたいデス。この船に穴を空けたせいで、こちら側の電幽霊が、そっち側のステージに流れ込んだのかもしれないです」
ユウキは『 』の考察を聞いて、妙に合点がいった。本人的にはそれでもおそらく仮説なのだろうが、かなり正鵠を射ているような気がした。
「ならば『 』くん、そちらのパワーでこの蛙どもをさっさと片づけてもらえまいか」
「えーー、嫌なのデス。もうちょっと楽しみたいデス……」
「こんな風に!」
そう言ったとたん、ポンという破裂音とともに煙があがった。蛙のからだが、煙に巻き上げられるように立ちあがってくる。
だが立ちあがった蛙たちは姿がすっかり変身していた。
おぞましかった姿がカリカチュアライズされ、コミカルな漫画のようなキャラクターに変身していた。蛙たちが踊りを再開する。二体は自分たちの姿の変化に気づいた様子もなく、息のあったダンスを次々と繰り出してきて、攻撃の手を緩めようとはしない。
ユウキの足に絡みついた蔓が、膝のすぐ下まで這い上がってきて、さらに強い力で足の動きを封じてきた。
敵に加勢してどうする!。
ユウキは心のなかで悪態をつくと、足を引き抜こうと、両手をそえて力を込めた。
「さぁ、ユウキも変身するデス」
『 』の浮き浮きした口調が聞こえたかと思うと、ユウキの足がスポンと簡単に抜けた。助かったと思ったが、よく見ると、膝から下はそのまま残っていた。ただ単に膝下の足の部分がとれただけだった。ユウキは地面に残ったままの足を、あわてて拾いあげようと腰をかがめたが、前のめりになった上半身が腰の位置でくるりと一回転した。さらに、それに連動するように続けざまに、首から上もくるりと360度回転する。
どうなってる?。
ユウキは驚いて自分の手のひらを見つめた。『 』がなにをやったのかがすぐにわかった。
ユウキの手は木製のからくり人形のものになっていた。
敵がアニメーションのキャラなら、こちらは人形アニメのパペットなのだ。ユウキには自分の顔が見えなかったが、おそらく口元は切り込みが上下するだけの簡素な作りになっているに違いない。
『やってくれたな、『 』くん』
ユウキは艦橋の正面窓のむこうから、こちらを覗き込んでいる『 』に目をむけた。『 』は満面の笑みを浮かべていた。ビー玉に変わってしまった目で効果があるか自信はなかったが、ユウキは精いっぱい叱りつけるような視線をむけてみせた。
ユウキはまたも自分が『 』に玩ばれているとは思ったが、ドラゴンの口の中に突っ込まれたり、からだを輪切りにされたりと、すでにやりたい放題されてきたので、腹立たしく思う気持ちも起きなかった。
「ユウキ、一緒に踊るデス」
『 』がそう言うと、ひらひらと兵士ふたりのからだが天井に舞いあがり、ふわふわと浮いて、ユウキの両側にぴたりと着地した。
横並びになった三人は腕組みをして、二体の蛙を正面から睨みつける。ユウキがパチンと指を鳴らす。
音楽がアップテンポの曲に変わる。
※作者注 イメージソングは下記です(ロックダンスの定番曲)
——マイケル・ジャクソン&ダイアナロス『EasyonDowntheRoad』——
https://www.youtube.com/watch?v=wI2ki7N-sVU
「さぁ、レッツダンスなのデス」
そのことばに促されて、ユウキが踊り始めた。膝から下がないからだは空中に浮いたままの状態だったが、むしろさきほどより自在に動けた。
それに合わせてひらひらとした動きのタマネギと牛の兵士がそれにシンクロする。
足元では膝から下だけが、上半身の動きに追従して、絡みついた蔦の下で精いっぱいステップを踏む。
ユウキがトゥエルを巻いた。
すると手首がくるくるとプロペラのように高速回転し見えなくなった。そのままキック・ウォークで体重移動をする。
だが、からだが傾くと腰からくるりと半回転し、上半身と下半身が反対向きになってしまう。ユウキはかまわず、うしろ前のままステップを踏んでいく。
天井に点滅エリアがあらわれる。
ユウキは、キュッと動きを「ロック」すると、からだの前で拍子(クラップ)、すかさず天井のターゲットを指さす(ポイント)。
すると腕がゴムのようにビョーンと伸びて、そのまま天井のターゲットを直接指でタッチする。伸びた腕が反動で勢いよく戻ってきたら、さらに次のターゲットへポイント。次、次とポイントを決めるたび、部屋のなかを縦横無尽に伸びた手がいったりきたりする。
「ユウキ、最高にクールなのデス」
『 』のはしゃぐ声が聞こえてくる。
操る二体の兵士もユウキの動きに合わせて『ポイント』のポーズを決める。三人が同時に三ヶ所のターゲットを撃ち抜くと、爆発音とともに天井に火花が散る。
ユウキの足元から、攻撃のシグナルが蛙たちに撃ち込まれ、波状攻撃となってダメージを与え続ける。三人の見事なコンビネーションは、蛙に反撃のチャンスを与えない。
点滅するターゲットをノーミスクリア。MASTERPIECE HANDSHAKE(マスターピース・ハンドシェイク)を三人で交互に交わし、三人揃って胸元で腕をカチッとロッキングしたところで勝負は決した。
ユウキの足元からおびただしい量の光が蛙のほうにむかって波状となって走っていく。
二匹の蛙はなんとかロボット・ダンスで対抗しようとしたが、押し寄せる光に足元をすくわれるように、バランスをくずした。そしてまるでフラダンスでも踊っているかのように身体が揺らいだかと思うと、パーンと派手な音をたててあたりに飛び散った。
「イッツ、クールなのデス」
うれしそうに『 』が声を弾ませた。
が、ドーーンという重々しい音がして、地面が90度倒れた。今度は天井が床になった。
そこに化物のようなおおきさの蛙が待っていた。
「『 』くん。どうやって?」
「どうも、このゲームはこちら側の力が充分発揮できるみたいデス。この船に穴を空けたせいで、こちら側の電幽霊が、そっち側のステージに流れ込んだのかもしれないです」
ユウキは『 』の考察を聞いて、妙に合点がいった。本人的にはそれでもおそらく仮説なのだろうが、かなり正鵠を射ているような気がした。
「ならば『 』くん、そちらのパワーでこの蛙どもをさっさと片づけてもらえまいか」
「えーー、嫌なのデス。もうちょっと楽しみたいデス……」
「こんな風に!」
そう言ったとたん、ポンという破裂音とともに煙があがった。蛙のからだが、煙に巻き上げられるように立ちあがってくる。
だが立ちあがった蛙たちは姿がすっかり変身していた。
おぞましかった姿がカリカチュアライズされ、コミカルな漫画のようなキャラクターに変身していた。蛙たちが踊りを再開する。二体は自分たちの姿の変化に気づいた様子もなく、息のあったダンスを次々と繰り出してきて、攻撃の手を緩めようとはしない。
ユウキの足に絡みついた蔓が、膝のすぐ下まで這い上がってきて、さらに強い力で足の動きを封じてきた。
敵に加勢してどうする!。
ユウキは心のなかで悪態をつくと、足を引き抜こうと、両手をそえて力を込めた。
「さぁ、ユウキも変身するデス」
『 』の浮き浮きした口調が聞こえたかと思うと、ユウキの足がスポンと簡単に抜けた。助かったと思ったが、よく見ると、膝から下はそのまま残っていた。ただ単に膝下の足の部分がとれただけだった。ユウキは地面に残ったままの足を、あわてて拾いあげようと腰をかがめたが、前のめりになった上半身が腰の位置でくるりと一回転した。さらに、それに連動するように続けざまに、首から上もくるりと360度回転する。
どうなってる?。
ユウキは驚いて自分の手のひらを見つめた。『 』がなにをやったのかがすぐにわかった。
ユウキの手は木製のからくり人形のものになっていた。
敵がアニメーションのキャラなら、こちらは人形アニメのパペットなのだ。ユウキには自分の顔が見えなかったが、おそらく口元は切り込みが上下するだけの簡素な作りになっているに違いない。
『やってくれたな、『 』くん』
ユウキは艦橋の正面窓のむこうから、こちらを覗き込んでいる『 』に目をむけた。『 』は満面の笑みを浮かべていた。ビー玉に変わってしまった目で効果があるか自信はなかったが、ユウキは精いっぱい叱りつけるような視線をむけてみせた。
ユウキはまたも自分が『 』に玩ばれているとは思ったが、ドラゴンの口の中に突っ込まれたり、からだを輪切りにされたりと、すでにやりたい放題されてきたので、腹立たしく思う気持ちも起きなかった。
「ユウキ、一緒に踊るデス」
『 』がそう言うと、ひらひらと兵士ふたりのからだが天井に舞いあがり、ふわふわと浮いて、ユウキの両側にぴたりと着地した。
横並びになった三人は腕組みをして、二体の蛙を正面から睨みつける。ユウキがパチンと指を鳴らす。
音楽がアップテンポの曲に変わる。
※作者注 イメージソングは下記です(ロックダンスの定番曲)
——マイケル・ジャクソン&ダイアナロス『EasyonDowntheRoad』——
https://www.youtube.com/watch?v=wI2ki7N-sVU
「さぁ、レッツダンスなのデス」
そのことばに促されて、ユウキが踊り始めた。膝から下がないからだは空中に浮いたままの状態だったが、むしろさきほどより自在に動けた。
それに合わせてひらひらとした動きのタマネギと牛の兵士がそれにシンクロする。
足元では膝から下だけが、上半身の動きに追従して、絡みついた蔦の下で精いっぱいステップを踏む。
ユウキがトゥエルを巻いた。
すると手首がくるくるとプロペラのように高速回転し見えなくなった。そのままキック・ウォークで体重移動をする。
だが、からだが傾くと腰からくるりと半回転し、上半身と下半身が反対向きになってしまう。ユウキはかまわず、うしろ前のままステップを踏んでいく。
天井に点滅エリアがあらわれる。
ユウキは、キュッと動きを「ロック」すると、からだの前で拍子(クラップ)、すかさず天井のターゲットを指さす(ポイント)。
すると腕がゴムのようにビョーンと伸びて、そのまま天井のターゲットを直接指でタッチする。伸びた腕が反動で勢いよく戻ってきたら、さらに次のターゲットへポイント。次、次とポイントを決めるたび、部屋のなかを縦横無尽に伸びた手がいったりきたりする。
「ユウキ、最高にクールなのデス」
『 』のはしゃぐ声が聞こえてくる。
操る二体の兵士もユウキの動きに合わせて『ポイント』のポーズを決める。三人が同時に三ヶ所のターゲットを撃ち抜くと、爆発音とともに天井に火花が散る。
ユウキの足元から、攻撃のシグナルが蛙たちに撃ち込まれ、波状攻撃となってダメージを与え続ける。三人の見事なコンビネーションは、蛙に反撃のチャンスを与えない。
点滅するターゲットをノーミスクリア。MASTERPIECE HANDSHAKE(マスターピース・ハンドシェイク)を三人で交互に交わし、三人揃って胸元で腕をカチッとロッキングしたところで勝負は決した。
ユウキの足元からおびただしい量の光が蛙のほうにむかって波状となって走っていく。
二匹の蛙はなんとかロボット・ダンスで対抗しようとしたが、押し寄せる光に足元をすくわれるように、バランスをくずした。そしてまるでフラダンスでも踊っているかのように身体が揺らいだかと思うと、パーンと派手な音をたててあたりに飛び散った。
「イッツ、クールなのデス」
うれしそうに『 』が声を弾ませた。
が、ドーーンという重々しい音がして、地面が90度倒れた。今度は天井が床になった。
そこに化物のようなおおきさの蛙が待っていた。
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