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第二章 第二節 電幽霊(サイバー・ゴースト)戦
第206話 あの領域には四百年前からアクセスできない
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ヤマト・タケルに詰め寄られて、ユウキは動揺していた。平静こそ装っていたが、心のなかは気が気ではなかった。
初っぱなから彼の信頼を損ねてしまったのだろうか——?。
いや、この結果を伝えた時点で自分がヤマトタケルから見限られる可能性は、すでにこころのなかで何度も反芻し、シミュレーションしたはずだ。ユウキが今、心が落ち着かないのは、自分の感情を律することに長けたヤマト・タケルという男が、一瞬とはいえ感情の起伏をみせたことだ。
それほどまでに基地局喪失空間には問題があるのかもしれない。
「タケル君、大変申し訳なく思っているが、わたしは『アビス・サーバー』はアクセスし慣れてる。なんとか引き揚げは可能と考えているのだが……」
「慣れてる?」
「あぁ。子供の頃に、非合法なバックドアを使って、よくレガシー・ゲームに興じた。あまり褒められた話ではないがね」
「へー、クロ……、ユウキ。ちょっとは見直したわ。四角四面の優等生だとばっかり思ってたけど、けっこうヤンチャなところもあるんじゃない」
アスカが妙な興味の示し方をしてきたのが面映ゆかったが、好意的に受けとめてもらったのは有り難かった。そういう告白を良く思わない人のほうが圧倒的に多いのを身をもって知っている。
「苦しい言い訳にしかすぎないが、当時は精神力を鍛えるための修業として取り入れていたつもりだった」
「効果はあったの?」
レイが端的に結果だけを訊いてきた。
「あぁ。わたしは『あった』と確信している」
「そう……」
「だが、ユウキ。きみは基地局喪失空間には潜ったことがないはずだ」
アスカたちの耳目をひいて、すこし高揚感がめばえていたユウキに、ヤマトが冷水をぶっかけるように核心をついてきた。
「あ、あぁ。そうだね。そんな下層部分にアクセスしたことはない」
「タケルさん。ちょっと待ってください。あの領域にはアクセスできないはずです。あそこは四百年前に封印されているはずですわ」
クララがヤマトにむかって異議を唱えた。はからずもクララに助けられた形になって、ユウキはクララのほうを見た。クララは自分に助け船をだしたというより、ヤマト・タケルとの接点をすこしでも増やそうと躍起になっている感じがあった。
「あぁ、封印されてる、表向きはね。だが軍専用のバックドアをぼくは知っている」
おそらくそうだろうと感じてはいたが、ヤマトに正面切ってそう宣言されて、ユウキは思わずゴクリと唾を飲み込んだ。
「本当なのか……。バイオOSで上書きした、ニューロOSのそのさらに下層……」
「あぁ。ぼくはよく知っている。とても危険なエリア」
「通称『グレーブヤード・サイト』……」
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それほどまでに基地局喪失空間には問題があるのかもしれない。
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「慣れてる?」
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「効果はあったの?」
レイが端的に結果だけを訊いてきた。
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「そう……」
「だが、ユウキ。きみは基地局喪失空間には潜ったことがないはずだ」
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「あ、あぁ。そうだね。そんな下層部分にアクセスしたことはない」
「タケルさん。ちょっと待ってください。あの領域にはアクセスできないはずです。あそこは四百年前に封印されているはずですわ」
クララがヤマトにむかって異議を唱えた。はからずもクララに助けられた形になって、ユウキはクララのほうを見た。クララは自分に助け船をだしたというより、ヤマト・タケルとの接点をすこしでも増やそうと躍起になっている感じがあった。
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おそらくそうだろうと感じてはいたが、ヤマトに正面切ってそう宣言されて、ユウキは思わずゴクリと唾を飲み込んだ。
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