175 / 1,035
第二章 第一節 四解文書争奪
第174話 セラ・ジュピターには絶対にあのいけすかない女が乗ってる
しおりを挟む
「マーズ、ジュピターぁぁぁぁぁ!!」
その二体の機影にはアスカもよく見覚えがあった。
いつの間にか、ことばの端々に憎々しさが行き渡るような語気で叫んでいた。
「レイ、クロロ軍曹とクララよ」
「えぇ、アスカ、わかってる。だから簡単にはいかない」
そのやりとりにヤマトが気づかないはずもなかった。
「アスカ、知ってるのか?」
「えぇ。いやというほどね。レイも知ってるわ」
「ええ、知ってる。私たちより成績が劣る連中」
「成績だけじゃない、片方は血筋も劣ってる。純潔率が96・9%しかない劣等生……。だからクロロってあだ名で呼ばれてた……」
「でも手練れよ!」
「知りあいか?。くそ、どうすればいい」
ヤマトが俊巡する様子にアスカは苛立った。
ここにいたってやることには一点の曇りがないはずなのに、『知りあい』と聞いただけで迷いが生じている。
まったく男というものは……。どうしてこんなにも腹のくくり方が甘い。
「タケル、どうすればいいかって……?」
「こうすればいいのよ!!」
アスカはそう叫ぶと、セラ・マーズにむかって機銃をぶちまきはじめた。成層圏まぎわでの機銃での攻撃は、弾が上方にひっぱられ正確な位置へいかなかったが、二体のデミリアンを両側に大きく分断させるのに成功した。
「アスカ、やめろ!!」
ヤマトは突然の攻撃を咎めるような声をあげたが、アスカはそれに反発した。
「タケル、四の五の言わない。友軍だろうと仲間だろうと排徐するしかないでしょうが」
「ちがう!。君の相手はジュピターだ。ボクがマーズを相手する。レイ、その間に君は開いている後部ハッチから船内へもぐりこめ!」
すぐに「了解」というレイの返事が聞こえてきた。
アスカは返事をする代わりに、ぎゅっとスロットルを押しこんだ。背中のウイングのノズルから『超流動斥力波』が吹きだし一気に加速する。
クララ・ゼーゼマン……。
そう、セラ・ジュピターには、絶対にあのいけすかない女が乗ってる。
こちらも相手のしがいがある。だが、どうする?。ヤマトは口にしなかったが、デミリアンをロストすることは望んでないはずだ。
「タケル。落とすわよ。いいでしょ」
「あぁ、パイロットごと落としてくれ」
そのことばに、アスカはゾクリとした。パイロットを殺せ、という指示に聞こえた。
「背中に取り付けた『バーニアスラスタ』を狙え撃てば落とせる」
「タケル。それはパイロットが死んでもいいってこと?」
アスカはタケルの命令の意図することを、再度確認した。
「あぁ。その通りだ。あの二機のパイロットがきみたちの知り合いなら、こちらの機体に乗っているのが、君たちだとバレるかもしれない」
「その可能性はできれば排除したい」
アスカはぎゅっと心臓が縮むのを感じた。
タケルは迷っていたわけではなかったのだ。
さすがあたしの契約者。一片の迷いもない。
そうでなければ。そんな男でなければ、このアスカ様に釣り合いやしない。
アスカはいつのまにか、自分の口元が緩んでいるのに気づいた。
タケルから重要な任務を授かったから?。あのいけすけない女と対戦できるから?。
どっちでもいい。こころが弾んでいるのは確かだ。
アスカはうれしそうに言った。
「了解。生きては返さない」
その二体の機影にはアスカもよく見覚えがあった。
いつの間にか、ことばの端々に憎々しさが行き渡るような語気で叫んでいた。
「レイ、クロロ軍曹とクララよ」
「えぇ、アスカ、わかってる。だから簡単にはいかない」
そのやりとりにヤマトが気づかないはずもなかった。
「アスカ、知ってるのか?」
「えぇ。いやというほどね。レイも知ってるわ」
「ええ、知ってる。私たちより成績が劣る連中」
「成績だけじゃない、片方は血筋も劣ってる。純潔率が96・9%しかない劣等生……。だからクロロってあだ名で呼ばれてた……」
「でも手練れよ!」
「知りあいか?。くそ、どうすればいい」
ヤマトが俊巡する様子にアスカは苛立った。
ここにいたってやることには一点の曇りがないはずなのに、『知りあい』と聞いただけで迷いが生じている。
まったく男というものは……。どうしてこんなにも腹のくくり方が甘い。
「タケル、どうすればいいかって……?」
「こうすればいいのよ!!」
アスカはそう叫ぶと、セラ・マーズにむかって機銃をぶちまきはじめた。成層圏まぎわでの機銃での攻撃は、弾が上方にひっぱられ正確な位置へいかなかったが、二体のデミリアンを両側に大きく分断させるのに成功した。
「アスカ、やめろ!!」
ヤマトは突然の攻撃を咎めるような声をあげたが、アスカはそれに反発した。
「タケル、四の五の言わない。友軍だろうと仲間だろうと排徐するしかないでしょうが」
「ちがう!。君の相手はジュピターだ。ボクがマーズを相手する。レイ、その間に君は開いている後部ハッチから船内へもぐりこめ!」
すぐに「了解」というレイの返事が聞こえてきた。
アスカは返事をする代わりに、ぎゅっとスロットルを押しこんだ。背中のウイングのノズルから『超流動斥力波』が吹きだし一気に加速する。
クララ・ゼーゼマン……。
そう、セラ・ジュピターには、絶対にあのいけすかない女が乗ってる。
こちらも相手のしがいがある。だが、どうする?。ヤマトは口にしなかったが、デミリアンをロストすることは望んでないはずだ。
「タケル。落とすわよ。いいでしょ」
「あぁ、パイロットごと落としてくれ」
そのことばに、アスカはゾクリとした。パイロットを殺せ、という指示に聞こえた。
「背中に取り付けた『バーニアスラスタ』を狙え撃てば落とせる」
「タケル。それはパイロットが死んでもいいってこと?」
アスカはタケルの命令の意図することを、再度確認した。
「あぁ。その通りだ。あの二機のパイロットがきみたちの知り合いなら、こちらの機体に乗っているのが、君たちだとバレるかもしれない」
「その可能性はできれば排除したい」
アスカはぎゅっと心臓が縮むのを感じた。
タケルは迷っていたわけではなかったのだ。
さすがあたしの契約者。一片の迷いもない。
そうでなければ。そんな男でなければ、このアスカ様に釣り合いやしない。
アスカはいつのまにか、自分の口元が緩んでいるのに気づいた。
タケルから重要な任務を授かったから?。あのいけすけない女と対戦できるから?。
どっちでもいい。こころが弾んでいるのは確かだ。
アスカはうれしそうに言った。
「了解。生きては返さない」
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
第一次世界大戦はウィルスが終わらせた・しかし第三次世界大戦はウィルスを終らせる為に始められた・bai/AI
パラレル・タイム
SF
この作品は創造論を元に30年前に『あすかあきお』さんの
コミック本とジョンタイターを初めとするタイムトラベラーや
シュタインズゲートとGATE(ゲート) 自衛隊 彼の地にて・斯く戦えり
アングロ・サクソン計画に影響されています
当時発行されたあすかあきおさんの作品を引っ張り出して再読すると『中国』が経済大国・
強大な軍事力を持つ超大国化や中東で
核戦争が始まる事は私の作品に大きな影響を与えましたが・一つだけ忘れていたのが
全世界に伝染病が蔓延して多くの方が無くなる部分を忘れていました
本編は反物質宇宙でアベが艦長を務める古代文明の戦闘艦アルディーンが
戦うだけでなく反物質人類の未来を切り開く話を再開しました
この話では主人公のアベが22世紀から21世紀にタイムトラベルした時に
分岐したパラレルワールドの話を『小説家になろう』で
『青い空とひまわりの花が咲く大地に生まれて』のタイトルで発表する準備に入っています
2023年2月24日第三話が書き上がり順次発表する予定です
話は2019年にウィルス2019が発生した
今の我々の世界に非常に近い世界です
物語は第四次世界大戦前夜の2038年からスタートします
SF作品頻出英会話重要表現※音声リンクあり
ひぽぽたます
SF
SF作品に頻出する英会話の重要表現(私が理解しづらかった構文や表現)を掲載します。
音声はYoutubeで聞けます。下方にリンクを貼りました。※英会話重要表現リスニング練習
VRMMOでスナイパーやってます
nanaさん
SF
ーーーーーーーーーーーーーーーー
私の名は キリュー
Brave Soul online というVRMMOにてスナイパーをやっている
スナイパーという事で勿論ぼっちだ
だが私は別にそれを気にしてはいない!
何故なら私は一人で好きな事を好きにやるのが趣味だからだ!
その趣味というのがこれ 狙撃である
スキルで隠れ敵を察知し技術で当てる
狙うは頭か核のどちらか
私はこのゲームを始めてから数ヶ月でこのプレイスタイルになった
狙撃中はターゲットが来るまで暇なので本とかを読んでは居るが最近は配信とやらも始めた
だがやはりこんな狙撃待ちの配信を見る人は居ないだろう
そう思っていたが...
これは周りのレベルと自分のレベルの差を理解してない主人公と配信に出現する奇妙な視聴者達 掲示板の民 現実での繋がり等がこのゲームの世界に混沌をもたらす話であり 現実世界で過去と向き合い新たな人生(堕落した生活)を過ごしていく物語である
尚 偶に明らかにスナイパーがするような行為でない事を頻繁にしているが彼女は本当にスナイパーなのだろうか...
【なろう400万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ
海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。
衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。
絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。
ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。
大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。
はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?
小説家になろうSF(パニック)部門にて400万pv達成、日間/週間1位、月間2位、四半期/年間3位の実績あり。
カクヨムのSF部門においても高評価いただき80万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。
後方支援なら任せてください〜幼馴染にS級クランを追放された【薬師】の私は、拾ってくれたクラマスを影から支えて成り上がらせることにしました〜
黄舞
SF
「お前もういらないから」
大人気VRMMORPGゲーム【マルメリア・オンライン】に誘った本人である幼馴染から受けた言葉に、私は気を失いそうになった。
彼、S級クランのクランマスターであるユースケは、それだけ伝えるといきなりクラマス権限であるキック、つまりクラン追放をした。
「なんで!? 私、ユースケのために一生懸命言われた通りに薬作ったよ? なんでいきなりキックされるの!?」
「薬なんて買えばいいだろ。次の攻城戦こそランキング一位狙ってるから。薬作るしか能のないお前、はっきり言って邪魔なんだよね」
個別チャットで送ったメッセージに返ってきた言葉に、私の中の何かが壊れた。
「そう……なら、私が今までどれだけこのクランに役に立っていたか思い知らせてあげる……後から泣きついたって知らないんだから!!」
現実でも優秀でイケメンでモテる幼馴染に、少しでも気に入られようと尽くしたことで得たこのスキルや装備。
私ほど薬作製に秀でたプレイヤーは居ないと自負がある。
その力、思う存分見せつけてあげるわ!!
VRMMORPGとは仮想現実、大規模、多人数参加型、オンライン、ロールプレイングゲームのことです。
つまり現実世界があって、その人たちが仮想現実空間でオンラインでゲームをしているお話です。
嬉しいことにあまりこういったものに馴染みがない人も楽しんで貰っているようなので記載しておきます。
私たちの試作機は最弱です
ミュート
SF
幼い頃から米軍で人型機動兵器【アーマード・ユニット】のパイロットとして活躍していた
主人公・城坂織姫は、とある作戦の最中にフレンドリーファイアで味方を殺めてしまう。
その恐怖が身を蝕み、引き金を引けなくなってしまった織姫は、
自身の姉・城坂聖奈が理事長を務める日本のAD総合学園へと編入する。
AD総合学園のパイロット科に所属する生徒会長・秋沢楠。
整備士の卵であるパートナー・明宮哨。
学園の治安を守る部隊の隊長を務める神崎紗彩子。
皆との触れ合いで心の傷を癒していた織姫。
後に彼は、これからの【戦争】という物を作り変え、
彼が【幸せに戦う事の出来る兵器】――最弱の試作機と出会う事となる。
※この作品は現在「ノベルアップ+」様、「小説家になろう!」様にも
同様の内容で掲載しており、現在は完結しております。
こちらのアルファポリス様掲載分は、一日五話更新しておりますので
続きが気になる場合はそちらでお読み頂けます。
※感想などももしお時間があれば、よろしくお願いします。
一つ一つ噛み締めて読ませて頂いております。
Select Life Online~最後にゲームをはじめた出遅れ組
瑞多美音
SF
福引の景品が発売分最後のパッケージであると運営が認め話題になっているVRMMOゲームをたまたま手に入れた少女は……
「はあ、農業って結構重労働なんだ……筋力が足りないからなかなか進まないよー」※ STRにポイントを振れば解決することを思いつきません、根性で頑張ります。
「なんか、はじまりの街なのに外のモンスター強すぎだよね?めっちゃ、死に戻るんだけど……わたし弱すぎ?」※ここははじまりの街ではありません。
「裁縫かぁ。布……あ、畑で綿を育てて布を作ろう!」※布を売っていることを知りません。布から用意するものと思い込んでいます。
リアルラックが高いのに自分はついてないと思っている高山由莉奈(たかやまゆりな)。ついていないなーと言いつつ、ゲームのことを知らないままのんびり楽しくマイペースに過ごしていきます。
そのうち、STRにポイントを振れば解決することや布のこと、自身がどの街にいるか知り大変驚きますが、それでもマイペースは変わらず……どこかで話題になるかも?しれないそんな少女の物語です。
出遅れ組と言っていますが主人公はまったく気にしていません。
○*○*○*○*○*○*○*○*○*○*○
※VRMMO物ですが、作者はゲーム物執筆初心者です。つたない文章ではありますが広いお心で読んで頂けたら幸いです。
※1話約2000〜3000字程度です。時々長かったり短い話もあるかもしれません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる