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第一章 最終節 決意
第160話 合同葬儀がしめやかにおこなわれた
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マンゲツとセラ・サターンの回収はその日だけでは収まらず、翌日の未明までかかった。出撃からまるまる一日かかったことになる。特に市街地のど真中で、倒れたセラ・サターンの移動にクルーたちも手を焼いたとのことだった。
それとは逆に、プルートゥの死体の保全と、コックピット・データレコーダーの回収および警護は手際が良かった。ブライト自らが指揮し、エドを中心に精鋭のスタッフを投入し、最優先で行われた結果だった。
今回の戦いで最も価値のある成果物なのだから、人に任せられないのももっともだとヤマトも理解した。
驚いたことにブライトはそれが一段落すると、リョウマの父、龍氏に、今回の転末を報告にむかったという。よりを戻したわけではないだろうが、春日リンを同伴した。
当初、ふてくされた態度をとっていた龍氏だったが、アスカがリョウマのとどめを刺したことを知ると、狼狽し、ブライトの腕にしがみついた。
最後にブライトがリョウマから託されたことづけを伝えると、父親はその場で泣き崩れたらしい。
そのことばがなにだったか、ヤマトは知らない 。
戻ってきたレイはミライに念写をお願いしたらしい。ミライは事務手続きをとって念写ロボにきてもらった。
レイの脳内にあるイメージを読みこんで、外部抽出するというのは、簡単ではあったが、やたら法律で縛られていたので、手続きは面倒だっ たのは確かだ。
レイは念写ロボットが、レイの脳内から汲みあげたイメージから一枚を選びだし、紙にプリントしてもらった。この時代に紙に印刷とははなはだ非常識だったが、おかげでレイの無味乾燥な部屋に写真 立てがーっ加わることになった。
レイはそれを嬉しそうにヤマトとアスカにみせびらかした。
「なんでわざわざ写真なんて、レトロなものを飾るのかしら?」
アスカが腕を組んだまま、レイのうれしそうな表情にケチでもつけてきた。
それは若い頃のレイの母親がやさしく笑っている写真だった。
「これで毎日、母さんを睨みつけてられる」
レイはうれしさを隠しきれずに、口元をほころばせた。
「これを見ながら、毎日、母さんを睨みつけてやるの」
------------------------------------------------------------
三日後、今回の戦いで命を落とした者の合同葬儀がしめやかにおこなわれた。
ヤマトたちの警備にあたっていた兵士たち、右手里美を追跡していた憲兵隊、そして形式上であったが、日本国防軍の兵士たちも合同で慰霊されることとなった。
まず、司令官のブライトが式辞を述べ、フィールズ中将が追悼のことばを送り、粛々と式は進んでいった。
草薙素子は最前列に座っていた。姿勢を正し、微動だにせず式の進行を見送っていた。敵の奸計に嵌まり、多くの犠牲者を出してしまったことを、警備責任者として猛省し続けているのだろうか。まるでその罪と向き合うように、厳しい目で正面を見据えていた。
その横に座わっているバットーは、草薙とは真逆の様子だった。頭を抱えていたかと思うと、今度は上をむいて天井を仰ぎみたり、両手で顔を覆ったりしている。現場の指揮官の責務を負いながら、目の前で何人もの兵士を死なせてしまったのだ。その呵責は想像するに余りある。
さらにその二人とも違っていたのは、憲兵隊のトグロ中佐だった。うしろから背中を一目しただけで、彼の嘆き悲しむ様子が手に取るようにわかった。彼は頭を前に垂らして、肩をふるわせ、式典中、ずっと涙を流しつづけていた。トグロ弟のほうはその隣で、気丈に前をむいていたが、兄があまりにも愁嘆にくれているせいで、自分の感情をあらわにできずにいるだけでしかないようだった。その表情は今にも泣き出しそうなほどゆがんでいた。
レイが献花のために起立したのが見えた。レイはふだん通りの表情だった。この場では妙に場に馴染んで、神妙な面持ちで哀悼をしめしているように見える。
レイは正面に飾られた何十人もの遺影を端から端まで見渡すと、一礼して献花をした。
だが、そこに「龍 冴馬」の遺影はない。
それとは逆に、プルートゥの死体の保全と、コックピット・データレコーダーの回収および警護は手際が良かった。ブライト自らが指揮し、エドを中心に精鋭のスタッフを投入し、最優先で行われた結果だった。
今回の戦いで最も価値のある成果物なのだから、人に任せられないのももっともだとヤマトも理解した。
驚いたことにブライトはそれが一段落すると、リョウマの父、龍氏に、今回の転末を報告にむかったという。よりを戻したわけではないだろうが、春日リンを同伴した。
当初、ふてくされた態度をとっていた龍氏だったが、アスカがリョウマのとどめを刺したことを知ると、狼狽し、ブライトの腕にしがみついた。
最後にブライトがリョウマから託されたことづけを伝えると、父親はその場で泣き崩れたらしい。
そのことばがなにだったか、ヤマトは知らない 。
戻ってきたレイはミライに念写をお願いしたらしい。ミライは事務手続きをとって念写ロボにきてもらった。
レイの脳内にあるイメージを読みこんで、外部抽出するというのは、簡単ではあったが、やたら法律で縛られていたので、手続きは面倒だっ たのは確かだ。
レイは念写ロボットが、レイの脳内から汲みあげたイメージから一枚を選びだし、紙にプリントしてもらった。この時代に紙に印刷とははなはだ非常識だったが、おかげでレイの無味乾燥な部屋に写真 立てがーっ加わることになった。
レイはそれを嬉しそうにヤマトとアスカにみせびらかした。
「なんでわざわざ写真なんて、レトロなものを飾るのかしら?」
アスカが腕を組んだまま、レイのうれしそうな表情にケチでもつけてきた。
それは若い頃のレイの母親がやさしく笑っている写真だった。
「これで毎日、母さんを睨みつけてられる」
レイはうれしさを隠しきれずに、口元をほころばせた。
「これを見ながら、毎日、母さんを睨みつけてやるの」
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三日後、今回の戦いで命を落とした者の合同葬儀がしめやかにおこなわれた。
ヤマトたちの警備にあたっていた兵士たち、右手里美を追跡していた憲兵隊、そして形式上であったが、日本国防軍の兵士たちも合同で慰霊されることとなった。
まず、司令官のブライトが式辞を述べ、フィールズ中将が追悼のことばを送り、粛々と式は進んでいった。
草薙素子は最前列に座っていた。姿勢を正し、微動だにせず式の進行を見送っていた。敵の奸計に嵌まり、多くの犠牲者を出してしまったことを、警備責任者として猛省し続けているのだろうか。まるでその罪と向き合うように、厳しい目で正面を見据えていた。
その横に座わっているバットーは、草薙とは真逆の様子だった。頭を抱えていたかと思うと、今度は上をむいて天井を仰ぎみたり、両手で顔を覆ったりしている。現場の指揮官の責務を負いながら、目の前で何人もの兵士を死なせてしまったのだ。その呵責は想像するに余りある。
さらにその二人とも違っていたのは、憲兵隊のトグロ中佐だった。うしろから背中を一目しただけで、彼の嘆き悲しむ様子が手に取るようにわかった。彼は頭を前に垂らして、肩をふるわせ、式典中、ずっと涙を流しつづけていた。トグロ弟のほうはその隣で、気丈に前をむいていたが、兄があまりにも愁嘆にくれているせいで、自分の感情をあらわにできずにいるだけでしかないようだった。その表情は今にも泣き出しそうなほどゆがんでいた。
レイが献花のために起立したのが見えた。レイはふだん通りの表情だった。この場では妙に場に馴染んで、神妙な面持ちで哀悼をしめしているように見える。
レイは正面に飾られた何十人もの遺影を端から端まで見渡すと、一礼して献花をした。
だが、そこに「龍 冴馬」の遺影はない。
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