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第一章 第四節 誓い

第98話 アスカはもうダメだ。間にあわん

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「アスカ!。アスカ、しっかりしろ」
 ヤマトは叫び声をあげ続けるアスカの肩を掴んで、アスカの名前を何度も呼びながら大きく前後に揺さぶった。
 とてつもない衝撃をうけてショック状態の人間に、さらに刺激を与えることは、さらに事態を悪化させる可能性があった。だが、正気を取り戻させるのにほかに方法が浮かばない。だが、アスカは引き攣れた悲鳴をとめようとはしなかった。目はうつろになり、からだはガタガタと小刻みに痙攣していた。
 アスカのかん高い悲鳴が教会内に反響し続ける。
 ヤマトはアスカに呼びかける声をさらに大きくした。
「戻ってこい、アスカ。あれは、あいつは、君の兄さんのリョウマじゃない」
 そう言いながらアスカの顔にとびちった血の飛沫を指でぬぐった。
「アスカ、目を覚ませ。今から出撃するんだ。そうだろ!」
 それをうしろでみていたブライトは、目の前にモニタ画面を呼びだすと、司令室で待機しているミライにむかって言った。
「現時点をもって、リュウ・アスカをパイロットから解任。本日の作戦はヤマト・タケル、レイ・オールマン、両名だけでおこなう」
「ミライ、作戦プランDに変更だ。国防軍のシン・フィールズ中将に連絡を」
「ちょっと待って下さい」
 ヤマトが背後から大きな声で異議を唱えた。
「アスカはもうダメだ。間にあわん」
「ぼくが間に合わせてみせる」
「無理よ。あきらめなさい」
 ブライトに追随するようにリンも言った。
「すまねーな、タケル。もう時間がねぇ。今回はおまえとレイだけで行くしかない」
 アルまでもがつっけんどんな反応だった。
「あきらめるわけにはいかない」
 ヤマトは力強く宣言した。
 ヤマトは両方の手のひらで、やさしくアスカの頬を包み込むと、ゆっくりと顔を近づけ、彼女の目をのぞきこんだ。その目の奥にまだ希望の光があるのを、すくいとろうとでもするようなしぐさだった。
 ヤマトはアスカの顔から手を放すと、アスカの左手首をつかんだ。そして、その手を思いっきりヤマト自身の右頬にむけて、打ちつけた。
 パーンと乾いた音が教会に響く。教会にいるブライトやリンたちが思わず目をむけるほど大きな音だった。
 だが、その一発でアスカの叫び声が消えた。
 きょとんとしたような目つきでヤマトを見つめている。
「ごめんね。痛かっただろ、アスカ」
 アスカが頭を横にふった。
「ううん……。だって、叩いたの、あたし……」
「でも、アスカ、君の手……、真っ赤だ」
 そう指摘されて、アスカはヤマトを叩いた自分の手に目をむけた。てのひらがすこし赤くなっていた。じんじんと手が痺れているのに気づいた。
「あ、本当だ……。痛い……」
「だから……、ごめんね」
「あんた……ボカぁ。痛いの、あんたでしょ。頬っぺた、真っ赤にして……」
 ヤマトは少し弱ったように笑った。
 ヤマトはやさしく肩をつかんで
「おかえり、アスカ。戻ってこれた」
 アスカはちょっと不満気に顔をそむけた。
「おかえりって……、なによ」
「君はさっき、兄さんが射殺されたと思って、取り乱して……心神を喪失しかけた」

「だから、おかえり、だよ」
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