異世界に行ったら国が衰退していたので、不動産屋をしていた経歴を生かしてエルフの王女と国を再建する

おっぱな

文字の大きさ
上 下
91 / 212
【第二章 他国との交流編】

お母さん! 地上最強の生命体が誕生しました!

しおりを挟む
「ところで、ヴァ二アルはどうしてこんな辺境の地まで来たの? 言葉遣いや振る舞いを見るからに平民とは思えないのだけれど」

 俺はぶたれた左頬に手を添えて、シルフとヴァ二アルの会話を聞いていた。
 ヴァ二アルは初めて会った時にヴァ二アル家がどうのこうのと言っていた。
 貴族でもなく、ましてや、この世界の住民になった俺からしてみればチンプンカンプンだったがよくよく考えたら貴族が一人で行動するなんておかしなこと。

 シルフは様々な視覚的な情報からそれを感じたのだろう。

 俺には高圧的な態度だったヴァ二アルもシルフの真摯な対応に心を開いたのか、ポツリと事情を話し始めた。

「僕の生まれ育った国はこの国から遠い場所にあります。この山に囲まれた国とは違い、国の東側には海が広がって、年中、陽が照っている場所で人々も陽気で笑顔が絶えない国でした」

 ほう。
 この世界にもそんな理想郷のような場所があるのか。

 何となくだが、異世界というと国VS国、種族VS種族で終わりの見えない戦争が続いていると思っていた。
 現にゴーレム幼女が強力な魔法を使えたり、魔法少女達も存在していて、戦争をするには材料が豊富だからだ。

「へえ。驚いた。国の外は危ない場所だと聞かされていたし、現に私も幼い頃に国の外に出て危険な身にあったからそういう場所があったなんて知らなかったわ」

 驚いたという割にはシルフは眉一つ動かさず、覇気の無い言葉を吐くのみで、まだ、完全にシルフの病気が治っていない事が明らかだった。

「ええ。僕もシルフ姉さんと同じというか、世間知らずだったんですよ。自分の国があんまりにも平和だから国の外も平和だと勘違いしていたんです。それで、僕はある目的のために旅をすることに決めたんです」

 ある目的?
 こいつ、もったい付けるなんて上等なテクニックを使いやがって!
 こっちは頬が痛いから早く冷やしに行きたいんだから早く言いやがれってんだよ!

 イライラした様子が伝わったのか、シルフは俺と目線を合わせ、無言で俺の怒りを諌める。

「で、その目的って何なの?」

「それは____」

「____はなじまあああ!!!」

 事情を説明しようとしていたヴァ二アルの声はかき消され。
 ゴーレム幼女のドスが効いた声と共にシルフの部屋の扉は破壊され、扉の先から般若のような面をした最悪の魔女が現れる。
 白いワンピースのような可愛らしい服は扉を壊した時に土煙を浴びたのか、所々に埃が付き、月のようにきらめきを放つ金色の髪にも扉の残骸が付いていた。

「ひいいい!!! ごめんなさい!!!」

 あまりの恐怖に咄嗟に謝罪の言葉を述べる。
 ただ、冷静に考えるとゴーレム幼女が何に怒っているのか分からない。

「お前、あれだけ作業をサボるなって言ったのにいい度胸してるみそ!」

「いやだって、兵士達に呼ばれて... ...」

「言い訳は聞き飽きたみそ!!! こっちが汗水垂らして頑張っているのにお前ときたら... ...」

 そういうとゴーレム幼女は右手に謎の光の球体を作り出す。
 謎の光は野球ボールほどの大きさだろうか、その光の玉が大きさの割には膨大な量のエネルギーを蓄えているというのはアニメ好きの俺からしてみれば容易に想像出来た。

「いや! おまっ! 冗談でしょ!? 流石にヤバいって! シルフもいるんだ_____ぞっ!」

 頭に血が上ったゴーレム幼女はシルフが居る事にも気付かなかったのか、俺の言葉を耳にし、初めて我に返った。
 しかし、時すでに遅し、ある程度の大きさまで成長した高エネルギー弾はゴーレム幼女の手を離れ、時速10kmほどのスピードで向かってくる。
 
 普段であれば避けられる速度だったが、ゴーレム幼女の鬼の形相にビビッていた俺はその場に動けずにいた。

 _____あかん。これ、死ぬ... ...。

 迫る光の玉を目の前につくづく俺は死亡フラグを立てる天才だと実感させられた。
 しかし、それを実感するのは今日これまで。
 どうせ、数秒後には塵となっている。

 何度か死を経験しているので恐怖はなく、ただただ、あっけに取られていると視界の外から「_____危ない!!!」という声が聞こえ、俺はその声の持ち主であろう人物と共に床に倒れ込んだ。

「... ...いてて。大丈夫か? 助かったよ」

 自身の胸の中にはヴァ二アルがいる。
 どうやら、こいつが命を投げ出す覚悟で救ってくれたらしい。
 見たところ、俺にもヴァ二アルにも外傷らしい外傷は見当たらず、胸をなでおろす。

「ふう... ...。よかっ... ...。ん?」

 何か胸部に生暖かく、懐かしい感触の物が触れていることに気付く。
 そう。
 勘の良い男なら誰しも気付くあれが当たっているのだ。

「いてて。花島は大丈夫かい? 危なかったね」

 そう言いながら、ヴァ二アルが立ち上がると今までついていなかったたわわな部位がはだけた服から露わになり、俺は鼻血を出しながら。

「いえ。色々な意味でありがとうございます」

 と感謝の辞を述べる。

「ん? 色々?」

 馬乗りのような体勢になっているヴァ二アルは俺を見るために自然と見下す形となる。
 そして、今までとは違い、俺を見るときに何やら大きな障害物があることを疑問に感じた。

「あれ? なんか、胸に変なものが付いてる... ...」

 変なものじゃない。
 決してそれは変じゃないよ。
 むしろ、君は尻尾に引き続き、男子が欲しい部位の二番目を手に入れた最強の生命体になったんだよ。

 そして、薄々、それが何か分かったのか。
 ヴァ二アルは胸に付いたものを静かに触れ。

「や・柔らかい... ...。えっ!? 柔らかいよ!!!」

 と普通の感想を大きな声で言いましたとさ。
 おしまい。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされ、生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれてしまった、ベテランオッサン冒険者のお話。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...