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エルフの王女と国を再建する
お母さん! ゴーレム幼女の夢!
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マンションの方を指さし、シルフはその指先を目で追う。
「あれだ!」
「は? 何が?」
「まあ、見てれば分かるって」
□ □ □
ゴーレム幼女とシルフを瓦礫の前に呼び出し、瓦礫の中にあるレンガを手に取り、ボロボロと崩れる様子を見せ。
「もろいわね」
「もろいみそ」
二人の幼子は見たままの光景を口を揃え。
「で、何を思いついたのよ?」
「ふっふっ。聞いて驚くなよ! この町にビルを作ろうと思う!」
二人は腕を組んで考るそぶりを見せ「ビル? ビール?」などとブツブツと言っている。
どうやら、『ビル』という言葉が理解出来ないようだ。
「まあ、ビルっていうのは簡単に言うと高い建物だ。ゴーレムマンションは城の形をしていて横に長いだろ? ビルってやつは縦に長いんだ」
俺の説明が上手かったのか、ゴーレム幼女は両手を挙げて理解度を体で表現。
「おー! 高い建物かみそ! それはお城よりも高いのかみそ!?」
「ああ! 高いぞ! 城よりも高い!」
俺とゴーレム幼女の二人は「高い! 高い!」と両手をいっぱいに広げて高さを表現していた。
ゴーレム幼女はピョンピョンと地面を無邪気に蹴り上げ、飛び跳ねている。
_____そういえば、こいつの父親と母親はこの街では腕の良い職人だったんだよな... ...。
と以前、ゴーレム幼女から聞いた話を思い出した。
そして、父親の夢だったのが『城よりも大きいものを作る』事だとも聞いた。
幼少期に見た父の背中は随分と逞しいものに感じる事がある。
それは、ゴーレム幼女の記憶にも残る光景なのだろう... ...。
亡き父の夢を実現するという事はゴーレム幼女の夢だったのかもしれない... ...。
あ、これ、俺の勝手な妄想ね。
「____いや、私は反対よ!」
シルフのその冷たい言葉が熱しかかっていた二人のテンションを一気に下げた。
「ど・どうしてみそ?」
ゴーレム幼女は、俺よりも早くシルフに真意を尋ねる。
「だって、そんな高い建物が建ったら私の城から見える景色が悪くなるじゃない! 他に代案はないの!?」
「考えればあるかもしれないが、今のところ、浮かんだ案としてはこれくらいかな? まあ、そんなに景色にこだわるなら、横に伸ばすってのでも良いと思うけれど... ...」
「では、縦に伸ばさず、横に伸ばしましょう!」
「俺はそれでも良いと思うが... ...」
一度、「夢が叶うかもしれない」と期待をしていたゴーレム幼女は今の言葉を聞いて、悲しい顔を見せるかと思いきや、案外そうでもなかった。
「そ・そうみそね! 横に伸ばす方が良いかもしれないみそ!」
「ゴーレムもそう思うわよね!? やっぱり、景色が良い方が良いわよね!?」
「う・うん... ...」
ゴーレム幼女の面持ちから、その複雑な思いを感じ取る事が出来たのは彼女の過去を知っていたからだ。
過去を知らぬシルフはその表情に何ら違和感を感じなかったであろう。
感じたとしても気に留めるような事でもない。
ゴーレム幼女は元はこの街の住人だ。
仲良くなった今でもやはり、本人の中で王女の存在は大きいものだし、敬意の念を示す人物なのだろう。
そんな相手に意見を言えるはずもなかった。
それが、亡き父の望みだったとしても... ...。
「____いや、やっぱり、縦に伸ばそう!」
俺は、その場が一度は納得しかけていた雰囲気を壊すように言葉を吐いた。
やっぱり、ゴーレム幼女の夢を叶えてあげたい!
「はあ? なんでよ。一度は花島も納得したじゃない?」
「それは... ...」
その理由について述べようとした時、ゴーレム幼女の目は俺に「言わないで」と訴えかけていた。
シルフが避難してきた住人に対しての幸福感を俺に語っていた際、俺はシルフに「幸福感なんて人それぞれだ」と告げた。
現在、俺がやろうとしている事は本当はゴーレム幼女の為にならないかもしれない。
しかし、「ゴーレム幼女の事を思って... ...」という大義名分を引っ提げ、俺は格好つけたいだけの偽善者なのかもしれない。
これでこの場が良い方向に向けば、俺は「ゴーレム幼女の本当の気持ちを伝えてあげる事が出来た代弁者」としてシルフやゴーレム幼女の好感度を上げる事が出来、自分も「良い事をした」と一瞬の満足感を得られるだろう。
ただ、それが悪い方向に進む場合もある。
人種・世界・宗教によっても価値観なんて人それぞれだ。
みんな違ってみんな良いと金子みすずは言ったが、この世界でそれが通用するとも限らない。
この事を言って何かを失うかもしれない。
それは俺ではなく他人の何か。
自分が何かを失う事には慣れているので、俺は何とも思わない。
プライドなんてもんはとうに失ったし、友人・恋人にももう必要価値を見出せない、物理的なものにも失望しているし、精神的にすがる物もなく、これはこれで幸せだ。
しかし、それが、他人となると話が変わってくる。
心から人の事を顧みずに価値観や幸福感を押し付ける事が出来るものになりたいと今は思う。そうすれば、こんな葛藤で悩むこともなかった。
様々な仕事をこなす中で変に社会性が磨かれてしまった事を悔いる。
所詮、俺はやはり、優しい王様なのだ。
その後、俺は「いや、すまん。何でもない」と言って、その場をやり過ごした。
「あれだ!」
「は? 何が?」
「まあ、見てれば分かるって」
□ □ □
ゴーレム幼女とシルフを瓦礫の前に呼び出し、瓦礫の中にあるレンガを手に取り、ボロボロと崩れる様子を見せ。
「もろいわね」
「もろいみそ」
二人の幼子は見たままの光景を口を揃え。
「で、何を思いついたのよ?」
「ふっふっ。聞いて驚くなよ! この町にビルを作ろうと思う!」
二人は腕を組んで考るそぶりを見せ「ビル? ビール?」などとブツブツと言っている。
どうやら、『ビル』という言葉が理解出来ないようだ。
「まあ、ビルっていうのは簡単に言うと高い建物だ。ゴーレムマンションは城の形をしていて横に長いだろ? ビルってやつは縦に長いんだ」
俺の説明が上手かったのか、ゴーレム幼女は両手を挙げて理解度を体で表現。
「おー! 高い建物かみそ! それはお城よりも高いのかみそ!?」
「ああ! 高いぞ! 城よりも高い!」
俺とゴーレム幼女の二人は「高い! 高い!」と両手をいっぱいに広げて高さを表現していた。
ゴーレム幼女はピョンピョンと地面を無邪気に蹴り上げ、飛び跳ねている。
_____そういえば、こいつの父親と母親はこの街では腕の良い職人だったんだよな... ...。
と以前、ゴーレム幼女から聞いた話を思い出した。
そして、父親の夢だったのが『城よりも大きいものを作る』事だとも聞いた。
幼少期に見た父の背中は随分と逞しいものに感じる事がある。
それは、ゴーレム幼女の記憶にも残る光景なのだろう... ...。
亡き父の夢を実現するという事はゴーレム幼女の夢だったのかもしれない... ...。
あ、これ、俺の勝手な妄想ね。
「____いや、私は反対よ!」
シルフのその冷たい言葉が熱しかかっていた二人のテンションを一気に下げた。
「ど・どうしてみそ?」
ゴーレム幼女は、俺よりも早くシルフに真意を尋ねる。
「だって、そんな高い建物が建ったら私の城から見える景色が悪くなるじゃない! 他に代案はないの!?」
「考えればあるかもしれないが、今のところ、浮かんだ案としてはこれくらいかな? まあ、そんなに景色にこだわるなら、横に伸ばすってのでも良いと思うけれど... ...」
「では、縦に伸ばさず、横に伸ばしましょう!」
「俺はそれでも良いと思うが... ...」
一度、「夢が叶うかもしれない」と期待をしていたゴーレム幼女は今の言葉を聞いて、悲しい顔を見せるかと思いきや、案外そうでもなかった。
「そ・そうみそね! 横に伸ばす方が良いかもしれないみそ!」
「ゴーレムもそう思うわよね!? やっぱり、景色が良い方が良いわよね!?」
「う・うん... ...」
ゴーレム幼女の面持ちから、その複雑な思いを感じ取る事が出来たのは彼女の過去を知っていたからだ。
過去を知らぬシルフはその表情に何ら違和感を感じなかったであろう。
感じたとしても気に留めるような事でもない。
ゴーレム幼女は元はこの街の住人だ。
仲良くなった今でもやはり、本人の中で王女の存在は大きいものだし、敬意の念を示す人物なのだろう。
そんな相手に意見を言えるはずもなかった。
それが、亡き父の望みだったとしても... ...。
「____いや、やっぱり、縦に伸ばそう!」
俺は、その場が一度は納得しかけていた雰囲気を壊すように言葉を吐いた。
やっぱり、ゴーレム幼女の夢を叶えてあげたい!
「はあ? なんでよ。一度は花島も納得したじゃない?」
「それは... ...」
その理由について述べようとした時、ゴーレム幼女の目は俺に「言わないで」と訴えかけていた。
シルフが避難してきた住人に対しての幸福感を俺に語っていた際、俺はシルフに「幸福感なんて人それぞれだ」と告げた。
現在、俺がやろうとしている事は本当はゴーレム幼女の為にならないかもしれない。
しかし、「ゴーレム幼女の事を思って... ...」という大義名分を引っ提げ、俺は格好つけたいだけの偽善者なのかもしれない。
これでこの場が良い方向に向けば、俺は「ゴーレム幼女の本当の気持ちを伝えてあげる事が出来た代弁者」としてシルフやゴーレム幼女の好感度を上げる事が出来、自分も「良い事をした」と一瞬の満足感を得られるだろう。
ただ、それが悪い方向に進む場合もある。
人種・世界・宗教によっても価値観なんて人それぞれだ。
みんな違ってみんな良いと金子みすずは言ったが、この世界でそれが通用するとも限らない。
この事を言って何かを失うかもしれない。
それは俺ではなく他人の何か。
自分が何かを失う事には慣れているので、俺は何とも思わない。
プライドなんてもんはとうに失ったし、友人・恋人にももう必要価値を見出せない、物理的なものにも失望しているし、精神的にすがる物もなく、これはこれで幸せだ。
しかし、それが、他人となると話が変わってくる。
心から人の事を顧みずに価値観や幸福感を押し付ける事が出来るものになりたいと今は思う。そうすれば、こんな葛藤で悩むこともなかった。
様々な仕事をこなす中で変に社会性が磨かれてしまった事を悔いる。
所詮、俺はやはり、優しい王様なのだ。
その後、俺は「いや、すまん。何でもない」と言って、その場をやり過ごした。
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