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【第四章 救世主編】
お母さん! 吸血のツルと岩石の巨人
しおりを挟む「お、おい、ぜ、全然出て来ないぞ」
「うん。多分、私達が動くまで動かないつもりだろうね」
先程から木のツルはだんまりを続け、俺たちの出方を伺っているようだ。
俺たちの目的はオッサンの撃破とシルフの救出。
長期戦になればこちら側が不利となる。
ここは嫌でも足を進めなければならない。
「よし。進むぞ。バラバラにならずに固まっていこう。俺が正面を見るから、ホワイトは左右。ホワイトの兄は後ろを見てくれ」
コクリと頷く、巨人の二人。
中ずりになっている残された黒ずくめの連中は「助けてくれ!」と俺たちに訴えかけるが、生憎、俺は正義の味方でも何でもない。
黒ずくめの連中を助けてやる気もなかった。
「この白状者!!! 人の命を何だと思ってやがる!」
「あ!? 人を襲っておいて調子のいい事言ってんじゃねえ!」
黒ずくめの一人の脇を通ると自分の事を棚に上げる発言をされ、イラッとし、横をみる。
すると、四人が中ずりになっていたはずなのに木のツルが宙に持ち上げているのは三人のみ。
その事に違和感を感じ、眼を眇《すが》めると、俺に文句を言い放った男の全身が木のツルによって覆われ、オレンジを絞った時のように男の血液が骨砕き音と共に地面に落ちた。
「______ひっ!」
「嫌だ!!! 助け______」
仲間が無残な姿になり、恐怖心を抑えきれなくなった他の黒ずくめの連中が声を上げたのを合図に穴から木のツルが勢いよく飛び出し、俺達にも襲い掛かる。
「花島! 危ない!」
間一髪のところで、ホワイトが頭上に落ちてきた木のツルを両腕で押さえる。
相当な力を持っているのか、あのホワイトが苦痛で顔を歪める。
「ホワイト!」
先程、木のツルを見た時は直径が30㎝ほどの割と細かった。
しかし、ホワイトを押しつぶそうとしている木のツルは直径1mはゆうに超える。
「は、花島! この木のツル! せ、成長しているぞ!」
「何!? 成長だ!?」
本来、木のツルが成長するには相当の時間と栄養が必要。
ホワイトシーフ王国は土壌が荒れているので植物の成長は芳しくない。
では、木のツルは何を栄養としているのか。
俺は血だまりとなっているはずの男が押しつぶされた場所に恐る恐る視線を合わせる。
すると、先程まで血が一面に広がっていたにも関わらず、そこには一滴の血痕も残っていなかった。
「......あのツル、血を吸っているぞ」
「血、血だって!? 血を吸うしょ、植物なんて聞いたことないぞ」
「そんなん言ったって現にあいつは血を吸って成長してる! とりあえず、この場から離れないと!」
「あ、ああ、で、でも、ホワイトが......」
ホワイトの兄は心配そうな目で妹を見る。
「わ、私は大丈夫だから先に行って」
「だ、ダメだ! ホワイトをお、置いていけない!」
「そうだ! このままじゃ、お前の血も吸われちまう!」
先程まで悲鳴を上げていた黒ずくめの二人の声もいつの間にか聞こえなくなっていた。
獲物が減れば、他の獲物を狙うのは捕食者として当然のこと。
そして、次、標的となるのは間違いなく俺達。
「いいから! 早く! シルフを救わないと! 王宮にはパスやサンだっているんだよ!」
額に汗を浮かべ、苦痛に顔を歪ませながらもホワイトは自分の事よりも他人を気遣う。
ホワイトは先を急げと俺達を急かすがホワイトも大切な仲間の一人である。
置いて行く事なんか出来ない。
「は、花島、何か策はないのか!?」
「策......」
今、木のツルは一本だけホワイトにのしかかっているだけで、他のツルは黒ずくめの連中から搾り取った血液に夢中。
木のツルが食事中に策を考えなければならない。
ホワイトはご覧の通り身動きが取れないし。
ホワイトの兄貴は図体がデカイくせに戦闘向きの能力を持っていないし、考えられるのは俺がゴーレム幼女の能力を使い応戦するという事だけ。
しかし、俺が出せるのは直径1mほどの岩石の蛇が数匹で数でも大きさでも木のツルに太刀打ちできないのは明白。
「何か大きくて、強いもの......」
とりあえず、地面に両手を当て、ゴーレム幼女の能力で蛇以外のものを出してみる。
やってみると、確かに蛇以外のものも出すことが出来た。
石柱、石の剣、何かドロドロして粘着質のコンクリート、土偶のようなもの。
「どれも小さっ......」
俺の能力が未熟なのか、ゴーレム幼女のように大きなものを作る事が出来ない。
もう少し練習したり、コツを掴めば上達するかもしれないが、このままでは上達する前に木のツルにミイラにされてしまう。
何か、簡易的に強大なモノを生成出来ないか......。
「は、花島! 早くしろよ!」
「うるさっ! お前こそ何も出来ないのに文句ばかり言うなよ! 本当! ニート気質だな!」
「お、俺だって出来る事があればや、やってる!」
「そうだな! 俺もお前が何か出来るならとっくに指示して......ん? 何か出来ること?」
ホワイトの兄の発言を耳にし、幼い頃に見た映画に出て来る大魔神を思い出し、「どうせ、この場を切り抜けられなければ死ぬんだ。ここはイチかバチかだな」と。
俺は岩石をコンクリート状にして生成し、ホワイトの兄の身体をコーティングした。
「うん。多分、私達が動くまで動かないつもりだろうね」
先程から木のツルはだんまりを続け、俺たちの出方を伺っているようだ。
俺たちの目的はオッサンの撃破とシルフの救出。
長期戦になればこちら側が不利となる。
ここは嫌でも足を進めなければならない。
「よし。進むぞ。バラバラにならずに固まっていこう。俺が正面を見るから、ホワイトは左右。ホワイトの兄は後ろを見てくれ」
コクリと頷く、巨人の二人。
中ずりになっている残された黒ずくめの連中は「助けてくれ!」と俺たちに訴えかけるが、生憎、俺は正義の味方でも何でもない。
黒ずくめの連中を助けてやる気もなかった。
「この白状者!!! 人の命を何だと思ってやがる!」
「あ!? 人を襲っておいて調子のいい事言ってんじゃねえ!」
黒ずくめの一人の脇を通ると自分の事を棚に上げる発言をされ、イラッとし、横をみる。
すると、四人が中ずりになっていたはずなのに木のツルが宙に持ち上げているのは三人のみ。
その事に違和感を感じ、眼を眇《すが》めると、俺に文句を言い放った男の全身が木のツルによって覆われ、オレンジを絞った時のように男の血液が骨砕き音と共に地面に落ちた。
「______ひっ!」
「嫌だ!!! 助け______」
仲間が無残な姿になり、恐怖心を抑えきれなくなった他の黒ずくめの連中が声を上げたのを合図に穴から木のツルが勢いよく飛び出し、俺達にも襲い掛かる。
「花島! 危ない!」
間一髪のところで、ホワイトが頭上に落ちてきた木のツルを両腕で押さえる。
相当な力を持っているのか、あのホワイトが苦痛で顔を歪める。
「ホワイト!」
先程、木のツルを見た時は直径が30㎝ほどの割と細かった。
しかし、ホワイトを押しつぶそうとしている木のツルは直径1mはゆうに超える。
「は、花島! この木のツル! せ、成長しているぞ!」
「何!? 成長だ!?」
本来、木のツルが成長するには相当の時間と栄養が必要。
ホワイトシーフ王国は土壌が荒れているので植物の成長は芳しくない。
では、木のツルは何を栄養としているのか。
俺は血だまりとなっているはずの男が押しつぶされた場所に恐る恐る視線を合わせる。
すると、先程まで血が一面に広がっていたにも関わらず、そこには一滴の血痕も残っていなかった。
「......あのツル、血を吸っているぞ」
「血、血だって!? 血を吸うしょ、植物なんて聞いたことないぞ」
「そんなん言ったって現にあいつは血を吸って成長してる! とりあえず、この場から離れないと!」
「あ、ああ、で、でも、ホワイトが......」
ホワイトの兄は心配そうな目で妹を見る。
「わ、私は大丈夫だから先に行って」
「だ、ダメだ! ホワイトをお、置いていけない!」
「そうだ! このままじゃ、お前の血も吸われちまう!」
先程まで悲鳴を上げていた黒ずくめの二人の声もいつの間にか聞こえなくなっていた。
獲物が減れば、他の獲物を狙うのは捕食者として当然のこと。
そして、次、標的となるのは間違いなく俺達。
「いいから! 早く! シルフを救わないと! 王宮にはパスやサンだっているんだよ!」
額に汗を浮かべ、苦痛に顔を歪ませながらもホワイトは自分の事よりも他人を気遣う。
ホワイトは先を急げと俺達を急かすがホワイトも大切な仲間の一人である。
置いて行く事なんか出来ない。
「は、花島、何か策はないのか!?」
「策......」
今、木のツルは一本だけホワイトにのしかかっているだけで、他のツルは黒ずくめの連中から搾り取った血液に夢中。
木のツルが食事中に策を考えなければならない。
ホワイトはご覧の通り身動きが取れないし。
ホワイトの兄貴は図体がデカイくせに戦闘向きの能力を持っていないし、考えられるのは俺がゴーレム幼女の能力を使い応戦するという事だけ。
しかし、俺が出せるのは直径1mほどの岩石の蛇が数匹で数でも大きさでも木のツルに太刀打ちできないのは明白。
「何か大きくて、強いもの......」
とりあえず、地面に両手を当て、ゴーレム幼女の能力で蛇以外のものを出してみる。
やってみると、確かに蛇以外のものも出すことが出来た。
石柱、石の剣、何かドロドロして粘着質のコンクリート、土偶のようなもの。
「どれも小さっ......」
俺の能力が未熟なのか、ゴーレム幼女のように大きなものを作る事が出来ない。
もう少し練習したり、コツを掴めば上達するかもしれないが、このままでは上達する前に木のツルにミイラにされてしまう。
何か、簡易的に強大なモノを生成出来ないか......。
「は、花島! 早くしろよ!」
「うるさっ! お前こそ何も出来ないのに文句ばかり言うなよ! 本当! ニート気質だな!」
「お、俺だって出来る事があればや、やってる!」
「そうだな! 俺もお前が何か出来るならとっくに指示して......ん? 何か出来ること?」
ホワイトの兄の発言を耳にし、幼い頃に見た映画に出て来る大魔神を思い出し、「どうせ、この場を切り抜けられなければ死ぬんだ。ここはイチかバチかだな」と。
俺は岩石をコンクリート状にして生成し、ホワイトの兄の身体をコーティングした。
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