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【第四章 救世主編】
お母さん! 後日譚③~赤ん坊の名前が決まりました~
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「よーし! みんな準備はいいかな?」
張り切るハンヌを見ていると歌のお兄さんに従う子供の気持ちになり、ちょっと楽しい。
「zzz......」
これから名前を決めるというのに当の本人である赤ん坊はメイドの腕の中でぐっすり眠っており、ゴーレム幼女の生まれ変わりというのに何故か納得してしまった。
「花島は何て書いたの?」
キラキラと目を輝かせながら、ホワイトは俺が赤ん坊にどんな名前を付けたのか尋ねてきた。
「ん? 俺はレインって名前にしたよ」
「レイン? 面白い名前だね」
面白い名前なのか?
「これがゴーレム幼女の本当の名前だ。あいつがいた時にちゃんと名前を呼んであげられなかったからな」
ゴーレム幼女は自分の名前が嫌いだと言った。
ただ、親から付けて貰った名前を嫌いと言っちゃいかん。
自分の名前を好きになれるようにさせてやりたい。
そんな思いがあって俺はあの赤ん坊にゴーレム幼女と同じ名前を付けさせたかった。
「ホワイトは何て名付けたんだ?」
俺が当然のように質問すると、ホワイトは「まだ内緒」と言って屈託ない笑顔を浮かべた。
「さあ! では、所定の位置に!」
屋上の際に一列に並び、各々作成した紙ヒコーキを構える。
雲一つない空には風もなく、太陽だけが燦燦と砂の大地を照らしていた。
「よし! では、みんなでせーのっ! で飛ばすぞ!」
ハンヌが音頭を取り、声を合わせて「せーの!」と言って紙ヒコーキを一斉に飛ばす。
「おー! 飛んだ飛んだ!」
「意外にしっかり飛ぶのね」
「がんばれー! ゴーちゃん号!」
7人の思いがこもった紙ヒコーキは隊列を組むように大空へ羽ばたく。
それを見ながら俺はポツリと言葉を吐いた。
「エンデバー号......」
シルヴィアが精神思念体からそんな言葉聞いたと言っていた。
昔見た小説に出て来たものだとその時は思ったが、それは違う。
銀色の船体にエンデバー号と書かれていた景色を俺はどこかで確かに見ている。
しかし、どこでそれを見たのか思い出せない。
ただ、エンデバー号は乗り物______船の名前だったはずだ。
「あ! 花島の紙ヒコーキが!」
考え事をしている中、ヴァ二アルの大きな声で現実に引き戻される。
紙ヒコーキに意識を集中すると、今まで順調に浮遊していた紙ヒコーキはユラユラ揺られ、葉が枝から落ちるように地面落ちていった。
「残念だったわね」
薄ら笑いを口元に浮かべながらシルフは俺を見やる。
「まあ、俺、不器用だしな」
紙ヒコーキが落下した事象は俺の技術不足という点も大きいだろう。
シルフにもそう伝えた。
ただ、落ちる紙ヒコーキを見ながら、ゴーレム幼女の意思で紙ヒコーキは落ちていったのかもという考えも湧き、「あいつ、どんだけレインって名前が嫌いなんだよ」と独り言を発してしまった。
「あ~! ゴーちゃん号が!」
「璃々千代!」
「ちょっと! 何やってんのよ!」
ヴァ二アルの飛ばした紙ヒコーキが態勢を崩すと、右隣で飛行していた天音の紙ヒコーキにぶつかり、連鎖的に鈴音の紙ヒコーキにも当たって三機同時に下に落ちた。
「さあ、本番はここからね」
「フフフ。女の子だからって手加減はしないよ」
シルフとハンヌの後ろには何やらメラメラと炎のエフェクトが見える。
紙ヒコーキなんかで熱くなるなよ。
と言いたかったのだが、二人ともガチな様子だったので言葉を引っ込めた。
ここで余計なことを言ったら、シルフに殺されかねないからな。
「ゴーレムちゃんにお別れくらい言いたかったな」
ホワイトはゴーレム幼女の事を思い出したのか、飛んでいく紙ヒコーキを遠目に見ながら呟く。
ホワイトはゴーレム幼女と一番仲が良かった。
ハチャメチャな性格のゴーレム幼女とおっとりした性格のホワイトは磁石の±や図形の凹凸のように引かれるものがあったのだろうか。
生まれた場所や種族は違えど、ホワイトやゴーレム幼女は良き友人だったに違いない。
「あいつもきっと同じ事思っているさ」
「そうかな?」
「ホワイトはそう思っているんだろ? だったら、ゴーレム幼女も同じ気持ちだよ」
「うん......。そうだよね」
ホワイトの心の整理はしばらくの間つかないかもしれない。
心の隙間を埋める事は他人ではなく、自分でするしかない。
何か俺に手伝える事はないのか?
少し考えたが、俺はホワイトに優しい言葉を送る事しか出来なかった。
「______あ! 僕の紙ヒコーキが!」
「アハハ! これで、私のゆうしょ______えっ!? ちょっと!」
微風を受けたハンヌの紙ヒコーキは急激に高度を下げ、突き刺さるように垂直に地面に落下。
それを横目に勝利を確信したシルフは高笑いをしたが、ハンヌの紙ヒコーキが落下すると同時に飛んでいた鳥にエサだと思われたのか、機体を突かれ、ハンヌの後に続いた。
「あ、勝っちゃった」
ホワイトの紙ヒコーキは他の紙ヒコーキにも風にも鳥にも撃ち落とされずに空に浮かぶ雲のように優雅に空中を漂う。
「赤ちゃん。何て名前になるんだ?」
町を抜け、小さくなる紙ヒコーキを見ながらホワイトに尋ねる。
「......サン。太陽みたいに多くの人を照らす子になって欲しい」
「サンか。良い名前だな。俺の考えた名前よりもずっと良い」
ゴーレム幼女はレインという名前を嫌った。
サン______太陽は雨と真逆のもの。
ホワイトの選んだ名前を聞いて、どこかでゴーレム幼女が俺たちの行いを見ていたのかも。
と少し感傷に浸ってしまった。
それにしても、太陽や雨などこちらの世界でも日本語や英語のようなものが普通に使われ、意味も同じなんだな。
こちらの世界に来た時に言葉が通じた事に驚いたが、色々な事が続いて、そこまで気にしなかった。
っうか、この世界、魔法やエルフとかの種族がいる意外はほぼ地球なんだよな。
「そういえば、花島の名前ってなに?」
「あ? 言ってなかったっけ? 努だよ」
「へー。どうやって書くの?」
どうやって......。
書いたところでホワイトに漢字読めるのか?
まあ、ここまで地球に似た世界だ。
こちらから色々と情報を出せば、もっと、この世界について知る事が出来、それが地球に戻る方法に繋がるかもしれない。
「これをこうやって......」
腰を落とし、俺は指で地面に『花島努』と漢字を書いてみた。
恐らく、「この文字読めない」と言われるに決まっている。
俺にはこいつらの発している言葉は理解出来るが、文字はサッパリ分からんし、シルフやゴーレム幼女に漢字を見せたが「文字が読めない」と言われたし。
「うーん。分からないな」
ほらな。
やっぱり。
まあ、予想通りの答えさ。
文字が読めればこの世界について書かれた本などで調べることができる。
時間がかかるかもしれないが、地道に文字を覚えていくしかなさそうだ。
立上り、足で文字を消そうとするとホワイトが急に俺の足を掴んで、文字を消すのを止める。
「なんだよ急に! 転んじゃうだろ!」
「これ、読めないけど、どこかで見た事ある文字だ......」
「見た事ある!? どこで見たんだ!? 教えてくれ!」
「ちょっと! 落ち着いて!」
騒ぎを聞きつけ、周りの連中も俺とホワイトの元まで近づいてきた。
「どうしたんだい?」
「ホワイトが漢字をどこかで見たことがあるって言うから」
「漢字?」
「ああ。俺が居た世界で使われていた文字だ」
「ふーん」
ヴァ二アルは俺の足元に書かれた『花島努』という漢字を見て、一瞬で言葉を返してきた。
「あ、これ、ムノン語だね」
ムノン語?
なにそれ?
美味しいの?
張り切るハンヌを見ていると歌のお兄さんに従う子供の気持ちになり、ちょっと楽しい。
「zzz......」
これから名前を決めるというのに当の本人である赤ん坊はメイドの腕の中でぐっすり眠っており、ゴーレム幼女の生まれ変わりというのに何故か納得してしまった。
「花島は何て書いたの?」
キラキラと目を輝かせながら、ホワイトは俺が赤ん坊にどんな名前を付けたのか尋ねてきた。
「ん? 俺はレインって名前にしたよ」
「レイン? 面白い名前だね」
面白い名前なのか?
「これがゴーレム幼女の本当の名前だ。あいつがいた時にちゃんと名前を呼んであげられなかったからな」
ゴーレム幼女は自分の名前が嫌いだと言った。
ただ、親から付けて貰った名前を嫌いと言っちゃいかん。
自分の名前を好きになれるようにさせてやりたい。
そんな思いがあって俺はあの赤ん坊にゴーレム幼女と同じ名前を付けさせたかった。
「ホワイトは何て名付けたんだ?」
俺が当然のように質問すると、ホワイトは「まだ内緒」と言って屈託ない笑顔を浮かべた。
「さあ! では、所定の位置に!」
屋上の際に一列に並び、各々作成した紙ヒコーキを構える。
雲一つない空には風もなく、太陽だけが燦燦と砂の大地を照らしていた。
「よし! では、みんなでせーのっ! で飛ばすぞ!」
ハンヌが音頭を取り、声を合わせて「せーの!」と言って紙ヒコーキを一斉に飛ばす。
「おー! 飛んだ飛んだ!」
「意外にしっかり飛ぶのね」
「がんばれー! ゴーちゃん号!」
7人の思いがこもった紙ヒコーキは隊列を組むように大空へ羽ばたく。
それを見ながら俺はポツリと言葉を吐いた。
「エンデバー号......」
シルヴィアが精神思念体からそんな言葉聞いたと言っていた。
昔見た小説に出て来たものだとその時は思ったが、それは違う。
銀色の船体にエンデバー号と書かれていた景色を俺はどこかで確かに見ている。
しかし、どこでそれを見たのか思い出せない。
ただ、エンデバー号は乗り物______船の名前だったはずだ。
「あ! 花島の紙ヒコーキが!」
考え事をしている中、ヴァ二アルの大きな声で現実に引き戻される。
紙ヒコーキに意識を集中すると、今まで順調に浮遊していた紙ヒコーキはユラユラ揺られ、葉が枝から落ちるように地面落ちていった。
「残念だったわね」
薄ら笑いを口元に浮かべながらシルフは俺を見やる。
「まあ、俺、不器用だしな」
紙ヒコーキが落下した事象は俺の技術不足という点も大きいだろう。
シルフにもそう伝えた。
ただ、落ちる紙ヒコーキを見ながら、ゴーレム幼女の意思で紙ヒコーキは落ちていったのかもという考えも湧き、「あいつ、どんだけレインって名前が嫌いなんだよ」と独り言を発してしまった。
「あ~! ゴーちゃん号が!」
「璃々千代!」
「ちょっと! 何やってんのよ!」
ヴァ二アルの飛ばした紙ヒコーキが態勢を崩すと、右隣で飛行していた天音の紙ヒコーキにぶつかり、連鎖的に鈴音の紙ヒコーキにも当たって三機同時に下に落ちた。
「さあ、本番はここからね」
「フフフ。女の子だからって手加減はしないよ」
シルフとハンヌの後ろには何やらメラメラと炎のエフェクトが見える。
紙ヒコーキなんかで熱くなるなよ。
と言いたかったのだが、二人ともガチな様子だったので言葉を引っ込めた。
ここで余計なことを言ったら、シルフに殺されかねないからな。
「ゴーレムちゃんにお別れくらい言いたかったな」
ホワイトはゴーレム幼女の事を思い出したのか、飛んでいく紙ヒコーキを遠目に見ながら呟く。
ホワイトはゴーレム幼女と一番仲が良かった。
ハチャメチャな性格のゴーレム幼女とおっとりした性格のホワイトは磁石の±や図形の凹凸のように引かれるものがあったのだろうか。
生まれた場所や種族は違えど、ホワイトやゴーレム幼女は良き友人だったに違いない。
「あいつもきっと同じ事思っているさ」
「そうかな?」
「ホワイトはそう思っているんだろ? だったら、ゴーレム幼女も同じ気持ちだよ」
「うん......。そうだよね」
ホワイトの心の整理はしばらくの間つかないかもしれない。
心の隙間を埋める事は他人ではなく、自分でするしかない。
何か俺に手伝える事はないのか?
少し考えたが、俺はホワイトに優しい言葉を送る事しか出来なかった。
「______あ! 僕の紙ヒコーキが!」
「アハハ! これで、私のゆうしょ______えっ!? ちょっと!」
微風を受けたハンヌの紙ヒコーキは急激に高度を下げ、突き刺さるように垂直に地面に落下。
それを横目に勝利を確信したシルフは高笑いをしたが、ハンヌの紙ヒコーキが落下すると同時に飛んでいた鳥にエサだと思われたのか、機体を突かれ、ハンヌの後に続いた。
「あ、勝っちゃった」
ホワイトの紙ヒコーキは他の紙ヒコーキにも風にも鳥にも撃ち落とされずに空に浮かぶ雲のように優雅に空中を漂う。
「赤ちゃん。何て名前になるんだ?」
町を抜け、小さくなる紙ヒコーキを見ながらホワイトに尋ねる。
「......サン。太陽みたいに多くの人を照らす子になって欲しい」
「サンか。良い名前だな。俺の考えた名前よりもずっと良い」
ゴーレム幼女はレインという名前を嫌った。
サン______太陽は雨と真逆のもの。
ホワイトの選んだ名前を聞いて、どこかでゴーレム幼女が俺たちの行いを見ていたのかも。
と少し感傷に浸ってしまった。
それにしても、太陽や雨などこちらの世界でも日本語や英語のようなものが普通に使われ、意味も同じなんだな。
こちらの世界に来た時に言葉が通じた事に驚いたが、色々な事が続いて、そこまで気にしなかった。
っうか、この世界、魔法やエルフとかの種族がいる意外はほぼ地球なんだよな。
「そういえば、花島の名前ってなに?」
「あ? 言ってなかったっけ? 努だよ」
「へー。どうやって書くの?」
どうやって......。
書いたところでホワイトに漢字読めるのか?
まあ、ここまで地球に似た世界だ。
こちらから色々と情報を出せば、もっと、この世界について知る事が出来、それが地球に戻る方法に繋がるかもしれない。
「これをこうやって......」
腰を落とし、俺は指で地面に『花島努』と漢字を書いてみた。
恐らく、「この文字読めない」と言われるに決まっている。
俺にはこいつらの発している言葉は理解出来るが、文字はサッパリ分からんし、シルフやゴーレム幼女に漢字を見せたが「文字が読めない」と言われたし。
「うーん。分からないな」
ほらな。
やっぱり。
まあ、予想通りの答えさ。
文字が読めればこの世界について書かれた本などで調べることができる。
時間がかかるかもしれないが、地道に文字を覚えていくしかなさそうだ。
立上り、足で文字を消そうとするとホワイトが急に俺の足を掴んで、文字を消すのを止める。
「なんだよ急に! 転んじゃうだろ!」
「これ、読めないけど、どこかで見た事ある文字だ......」
「見た事ある!? どこで見たんだ!? 教えてくれ!」
「ちょっと! 落ち着いて!」
騒ぎを聞きつけ、周りの連中も俺とホワイトの元まで近づいてきた。
「どうしたんだい?」
「ホワイトが漢字をどこかで見たことがあるって言うから」
「漢字?」
「ああ。俺が居た世界で使われていた文字だ」
「ふーん」
ヴァ二アルは俺の足元に書かれた『花島努』という漢字を見て、一瞬で言葉を返してきた。
「あ、これ、ムノン語だね」
ムノン語?
なにそれ?
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